物語を書く指導(3) 指導の工夫①

指導方法
つばさ
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物語を書く指導の工夫について知りたいです。

 小学校の国語の学習には、物語を書く学習があります。

 ここでは、「物語を書く指導(3):指導の工夫①」について書きます。

物語を書く指導(3):指導の工夫①

🟠単元「できごとが3回くりかえされるお話を書こう」の指導の工夫①

 この単元の学習では、導入の部分で次のような計画で学習をしました。

① 物語の範読を聞き、登場人物やあらすじをとらえる。

② 場面を分け、場面を20字程度の文にまとめる。

 では、順に指導者の工夫について書きます。

🟠導入時の学習の指導の工夫(1時間め)

<範読を聞かせる>

 この学習では、「名前を見てちょうだい」の指導者の範読を、耳だけで聞かせることから始めました。

 教材によって扱い方は違いますが、低学年の場合、教科書を閉じさせ、範読を聞かせることはよくあります。教科書を見ながら聞くと、目で字を追う方が速い子どもの場合、指導者の読みよりも先へ先へとページを捲っていくことがあります。

 悪いことではありませんが、物語を学級全体で味わうことと、耳でしっかり聞き取る力を養うことのために、教科書を閉じて、範読を聞かせることにすることがあります。

<音読をしながら、登場人物を確かめる>

 その後に、登場人物について確かめる学習をしました。その時には、音読をします。

 音読をする場合、学級全体で声を揃えて音読することもありますし、少しずつを交代で音読することもあります。自分のペースで音読することもあります。

 その時には、いろいろな方法でできるだけたくさん音読することが大切です。

 できれば、学級のすべての子どもが教材をすらすら読むことができるまで、音読する時間をとることができればよいと思います。

 教材が読めていないのに、教師がむずかしい発問をしても答えることなんてできないからです。

<指名の仕方を工夫する>

 登場人物については、えっちゃん、お母さん、きつね、牛、大男はすぐに出てきます。あっこちゃんが出てくるかどうかはクラスの実態によって違うと思います。無理にあっこちゃんを出す必要はありませんが、出てくるクラスはかなり読む力がある子どもがいると言うことです。

 登場人物を確かめる学習をする場合、発問をして、すぐに子どもに挙手をさせ、順に指名して答えさせるという方法もありますが、発問をした後、少し時間をとり、子どもに自分のノートに書かせることもあります。

 なぜ、「発問→挙手→指名」という方法を取らずに、「発問→ノート→指名」という方法をとるのかといえば、学級の子ども全員に、しっかり学習に参加してほしいからです。

「発問→挙手→指名」という方法では、学級にいる一部の利発な子どもは活躍できますが、他の多くの子どもは活躍できません。「発問→ノート→指名」という方法ですと、多くの子どもが正解することができます。

挙手だけに頼らない指名をするに進む内部リンク

<5つの場面に分ける>

 その後、子どもたちに自分のペースで読みながら、5つの場面に分けて読むように指示しました。

 小学校学習指導要領では、第1学年及び第2学年の読むことの指導として次のように書かれています。

 場面の様子や登場人物の行動など,内容の大体を捉えること。

小学校学習指導要領

 2年生の読むことの学習においては、登場人物や時間の流れ、場所の移動がわかり、登場人物の身にどのような出来事が起こったのかということが分かればよいと考えています。

🟠2時間めの学習の指導の工夫

<場面を確かめる>

 私は、よく子どもに「物語を読むときには、だれ、いつ、どこの3つのことをおさえることが大切であること。この3つのことを「場面」ということ。だれ、いつ、どこのどれかが変わることを『場面が変わる』ということ。」を説明するようにしています。

<「名前を見てちょうだい」の教材について>

 この学習で、場面を5つに分けるように指示したのは、この教材が、次のような5つの場面に分かれると考えたからです。

  1. えっちゃんがお母さんから赤いぼうしをもらう。
  2. えっちゃんときつねが、ぼうしのとりあいをする。
  3. えっちゃんときつねと牛が、ぼうしのとりあいをする。
  4. ぼうしを食べた大男を、えっちゃんがやっつける。
  5. えっちゃんはあっこちゃんのうちにあそびに行く。

 この5つの場面のうち、①と⑤は、現実の世界です。②・③・④の場面は、不思議な世界です。一般的に、物語において、現実の世界から不思議な世界に移行する際には、ある種の仕掛けがあります。

浦島太郎」が龍宮城に行ったのは、助けた亀が背中に乗るようにうながしたからだし、「おむすびころりん」のおじいさんが、ねずみの国に行ったのは、食べようとしたおむすびが坂を転がって穴の中へ落ちたからです。この2つの昔話においても、「亀を助けること」や「おむすびが転がること」が不思議な世界に入るきっかけになっています。

 この物語では、その役割を「強い風がふいてきていきなりぼうしをさらってい」くことが果たしています。この「強い風」は、その後も大事なところで何回も繰り返し吹き、帽子を飛ばしながら、えっちゃんを「きつねのいる野原」「牛のいるこがね色のはたけ」「大男のいる七色の林」へといざないます。

 ②と③と④の場面の書きぶりは、よく似た表現の繰り返しあり、「風が吹くことで帽子が飛ばされる」という仕掛けに気付けば、簡単に5つの場面に分かれるということが、わかるだろうと考えました。

<市毛勝雄氏の考え>

 物語を5つ程度の場面に分けることのよさについて、元早稲田大学教授の市毛勝雄氏は、「文学教材の授業改革論(明治図書・1997年)の中で、「物語・小説の授業を改革する言語技術のポイント」の1つとしてあげています。

 市毛氏は次のように述べます。

 物語の登場人物の「気持ち」、すなわち心理を考えさせるよりは、その前の基礎的段階として、まず「あらすじ」を五項目としてまとめる学習が重要であり、またきわめて効果的である。四項目だと項目数が不足でまとめきれない。六項目や七項目にふやすと、枝葉の部分が混入し、話の筋がたどりにくくなる。五項目と制限を設けて、物語の中の事件の取捨選択を考えているうちに、物事の軽重や、人生で何が大切かに気づいていく。

市毛勝雄 文学教材の授業改革論

 東京書籍の教科書では、9月に「ニャーゴ」や1月に「かさこじぞう」を扱いますが、そこでも同じように5つの場面に分ける学習をするとよいと思います。このような言語技術は、一度の学習では習得することはむずかしいことだからです。

 よく似た学習を繰り返すことで、子どもの言語技術は確かなものになっていきます。

 実際の学習でも、「強い風がふくこと」や場面を示す言葉に着目できないで、すぐに5つの場面に分けることができない子どもがいました。

 なお、物語を5つの場面に分けて、30字程度の文章にまとめる指導については、他の教材を扱ったものですが、次のページに詳しく書いています。合わせて、お読みください。

物語文の指導の仕方(5)に進むこのブログにあるページ

物語文の指導の仕方(6)に進むこのブログにあるページ

物語文を書く指導(4) 指導の工夫②に進む内部リンク

 この学習に関係する指導については、次のページを読んでください。

物語を書く指導(1) 指導のポイントに戻る内部リンク

物語を書く指導(2) 単元目標と指導計画に戻る内部リンク

物語を書く指導(4) 指導の工夫②に進む内部リンク

物語を書く指導(5) 指導の工夫③に進む内部リンク

物語を書く指導(6) 指導の工夫④に進む内部リンク

物語を書く指導(7)  みくのふしぎなピアノ(全文)に進む内部リンク

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