体育的行事の指導について知りたいです。
ここでは次の2つのことについて書きます。
学校行事における体育的行事とは?
運動会について
学校行事における体育的行事とは?
🟠学校行事の目標
小学校学習指導要領には、「学校行事の目標」について次のように書いています。
全校又は学年の児童で協力し,よりよい学校生活を築くための体験的な活動を通して,集団への所属感や連帯感を深め,公共の精神を養いながら,第1の目標に掲げる資質・能力を育成することを目指す。
小学校学習指導要領 特別活動
ここでいう第1の目標とは、「特別活動の目標」のことで、そこには、次のように書かれています。
集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かせ,様々な集団活動に自主的,実践的に取り組み,互いのよさや可能性を発揮しながら集団や自己の生活上の課題を解決することを通して,次のとおり資質・能力を育成することを目指す。
(1) 多様な他者と協働する様々な集団活動の意義や活動を行う上で必要となることについて理解し,行動の仕方を身に付けるようにする。
(2) 集団や自己の生活,人間関係の課題を見いだし,解決するために話し合い,合意形成を図ったり,意思決定したりすることができるようにする。
(3) 自主的,実践的な集団活動を通して身に付けたことを生かして , 集団や社会における生活及び人間関係をよりよく形成するとともに,自己の生き方についての考えを深め,自己実現を図ろうとする態度を養う。
小学校学習指導要領 特別活動
🟠学校行事の中の「体育的行事」
学校行事には、次の5つがあります。
1.儀式的行事
2.文化的行事
3.健康安全・体育的行事
4.遠足・集団宿泊的行事
5.勤労生産・奉仕的行事
このうち、3の「健康安全・体育的行事」が今回の中心的な話題です。
同じく、小学校学習指導要領には、「健康安全・体育的行事のねらいと内容」として、次のように書かれています。
心身の健全な発達や健康の保持増進,事件や事故,災害等から身を守る安全な行動や規律ある集団行動の体得,運動に親しむ態度の育成,責任感や連帯感の涵養,体力の向上などに資するようにすること。
小学校学習指導要領 特別活動
運動会について
🟠運動会実施上の留意点
小学校学習指導要領には、運動会実施上の留意点として、次のように書かれています。
ウ 運動会などについては,実施に至るまでの指導の過程を大切にするとともに,体育科の学習内容と関連を図るなど時間の配当にも留意することが大切である。また,活発な身体活動を伴う行事の実施に当たっては,児童の健康や安全には特に留意し,日常の学校や家庭における健康管理,教師間の協力体制を万全にし,事故防止に努める必要がある。
エ 運動会においては,学校の特色や伝統を生かすことも大切である。ただ し,児童以外の参加種目を設ける場合は,運動会の教育的意義を損なわない範囲にとどめるよう配慮する。また,児童会活動やクラブ活動などの組織を生かした運営を考慮し,児童自身のものとして実施することが大切である。その場合,児童に過度の負担を与えたり,過大な責任を負わせたりすることのないように配慮する。
小学校学習指導要領 特別活動
🟠配慮をおこなった練習をすること
最近は、秋に運動会を行うのではなく、春に実施する小学校も増えています。
理由は、暑さです。
最近は、秋になっても残暑が厳しく、子どもが運動会当日や練習中に熱中症になることも増えています。
そのために、秋よりも暑さや日差しのゆるやかな春に運動会を行う学校が増えています。
秋に行う場合でも、子どもや保護者や家族、地域の人たちが、見やすくなるようにテントを設置したり、ミスト設備を設置したりする学校もあります。
練習においては、コロナウイルス感染症対策と併せて、直射日光当たる場所で長時間練習をしないことや適度に水分補給の時間を確保することなどの対策が大切です。
🟠出場種目
子どもの出場種目は、学校の規模や学年の人数などによって様々です。
小学校では、各学年としての参加種目としては、団体演技、団体競技、個人競技の3つのことが多いのではないでしょうか。
その他、開・閉会式、はじめやおわりの体操、応援合戦、全校競技、PTA競技などがあります。
それでは、それぞれの出場種目について考えていきましょう。
<団体演技>
運動会の練習の一番多くの練習時間を割くのは、団体演技の時間でしょう。
学校の規模によっては、各学年で行うのではなく、低・中・高学年の2学年合同で実施することもあるみたいです。
毎年夏季休業中には、多くの場所でダンス講習会が開かれ、運動会のダンス種目を教員向けに教えるセミナー等が開催されます。
教員時代の同僚の教員の中には、学生時代に、ダンス経験のある教員がいて、流行曲に自分でダンスを振り付けして、子どもに教えて、運動会で披露させている教員もいました。
小学校学習指導要領の体育科の目標には、ダンスについて、低学年では、「表現リズム遊び」中・高学年では、「表現運動」として指導することになっています。
保護者の中には、子どもの団体演技を楽しみにしている方もいますので、なかなか改善できないでしょうが、小学校学習指導要領に書かれていることを大切にするのであれば、既成のダンス曲を子どもに教員が教えて披露するのではなく、テーマを決めて、そのテーマに基づいて子どもが考え、教え合い、創り上げた「表現リズム遊び」や「表現運動」を披露するのがよいのかもしれません。
実際に、1学期からそのような学習に取り組み、子どもが中心になって創り上げた表現を披露する学校もあります。
実際のダンスの振り付けについては、次のような動画が参考になります。
2022年秋新曲!秋の運動会ダンス動画集《指導資料つき》に進む(外部リンク)
2023年春新曲!春の運動会ダンス動画集《指導資料つき》に進む(外部リンク)
<組体操>
最近、問題になっているのが、組体操です。
学習指導要領の中では、「組体雄」という内容はありません。いつの間にか、多くの学校で、高いピラミッドなどの技を披露することが伝統行事的に決まったこととして続いてきました。
しかし、練習中や本番中に、失敗して骨折するなどの事故が多発してこともあり、自治体によっては、禁止しているところもあります。
学校には、悪しき伝統や習慣などが残っていることも多いのでしょうが、組体操もその悪しき伝統の1つかもしれません。
練習中に事故を起こしてしまい、保護者と教員の間で、責任問題や賠償問題で、いつまでも揉めている事例を見聞きしたことがあります。
なぜ組体操をすることが大事で教育的な意味があるかを、きちんと説明できないのであれば、組体操はなくなってもよいものであると、個人的には思います。
<団体競技>
団体競技には、棒倒し、騎馬戦、台風の目、棒引き、大玉転がし、玉入れ、リレーなど様々な競技があります。
様々な団体競技は、見ていても楽しいですので、実施することは問題ないと思います。
ただ、どの競技でも安全に注意することは大切です。
騎馬戦、棒倒しなどは、特に、怪我をしやすいこともありますので、安全性には十分配慮する必要があります。
練習中も、もし転倒した場合などには、すぐに発見できるような教員の配置をする必要があります。
万が一、見つけられない場合のために、怪我をした時や、周りの子どもが怪我した時には、すぐに報告に来るように子どもに伝えておくことも大切でしょう。
2023年5月7日にNHK総合で放送された「いのちを守る学校に 調査報告“学校事故”」と番組の中で、中学3年生の体育祭のむかで競争の練習をしている時に転倒し事故に遭った月村珠実さんの様子を詳しく報告しています。
今は、車椅子ラグビー選手として活躍されている月村珠実さんは、緊急搬送された病院での診断は、「頸椎脱臼骨折」でした。神経が損傷し、手や足の機能が失われているというものでした。このような悲しい事故が起きないように、教員の役割は重要です。
まさか、体育祭の「むかで競走」でこんな大けがをするなんて…に進む(外部リンク)
学校に潜む危険:安全教育④に進む(内部リンク):体育設備や遊具、水など
<リレー>
特に、リレーについては、十分な練習時間をとる必要があります。
バトンパスの仕方、バトンゾーンの意味、バトンの受け渡しのルール、走行位置によってバトンをもらう子どもの位置が変化すること、バトンをもらう子どもが減った場合は内側に移動することなど、学年の実態に合わせて、リレーの仕方について教え、練習をする必要があると思います。
団体演技に時間が取られすぎて、リレーの基礎的なルールも知らない子どもたちを見ていると、指導者の力量を疑ってしまいます。
<個人競技>
個人競技の中でも、徒競走などの個人走は、一番指導すべき内容かもしれません。
スタートダッシュの仕方、カーブの曲がり方、腕の振り方、足のあげ方、視線の位置など指導すべき内容はたくさんあります。
全員が1位になれるわけではありませんが、基礎的な走行の仕方を伝え、練習する時間をもつことは大切だと思います。
徒競走については、次のようなホームページや動画が参考になると思います。
徒競走のコツとは?足が速くなりたい子供をサポートする方法に進む(外部リンク)
徒競走で速く走るコツに進む(外部リンク)
新任教員翼くんの日々(009)運動会の練習に進む(内部リンク)
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初任者研修資料一覧に進む(本ブログ内)
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