教育書紹介 飛び跳ねる思考

教育書紹介
つばさ
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自閉症の人の考えを知るための良い本があります。

 小学校には、様々なタイプの子どもがいます。

 その子どもの中には、特別な医学的な教育的な支援を必要とする子どもがいます。

 今回は、「飛び跳ねる思考」という本について紹介します。

飛び跳ねる思考

🟠飛び跳ねる思考

 今回、「障害」と「障がい」という2つの表記を併用します。本書からの引用の場合は、「障害」を用い、それ以外では、「障がい」を用いることにします。

<東田直樹さんについて>

 今回紹介する「飛び跳ねる思考」という本は、東田直樹さんによって執筆され、2014年にイースト・プレスから出版されました。

 東田直樹さんは、1992年生まれです。千葉県に住んでおられます。2011年3月にアットマーク国際高等学校(通信制)を卒業されました。2023年(令和5年)1月現在で30歳です。

 東田さん自身が、重度の自閉症という障がいをお持ちです。普段は、人と会話をすることができません。しかし、文字盤を指差しながら言葉を発していく「文字盤ポインティング」やパソコンを利用して、援助なしでのコミュニケーションが可能です。

 東田さんが、13歳のときに書いた「自閉症の僕が飛び跳ねる理由」(エスコアール出版部・2007年刊)が、2013年の夏にイギリスのベストセラー作家であるディビッド・ミッチェルさんとケイコ・ヨシダさんによって英文に翻訳されたことで、その後、30か国以上で翻訳され、出版されています。

 東田さんが、自分の考えを文字という形で人に伝えることによって、それまで重度の自閉症の人の考えなど分からないと思われていたのに、自閉症の子どもや自閉症の人の考えがわかるようになりました。

 東田さんは、これらの著書以外にも、詩集や童話や絵本をたくさん執筆されています。

 東田さんは、自身のホームページをお持ちで、ホームページでは、定期的にエッセイや絵画作品なども掲載されています。

東田直樹さんのオフィシャルサイトに進む内部リンク

 今回、紹介する「飛び跳ねる思考」という本は、東田さんが22歳の時に書かれた本です。

 正確には、この本は、教育書でなく、エッセイ集ですが、学校現場にいる教員や同じ自閉症という障がいをもつ子どもの親や保護者などにとって、自閉症をもつ子どもの気持ちを少しでも理解する上でたいへん有意義な本であることは間違いありません。

<自閉症という障がいについて>

 自閉症という障がいは、個性のようなもので、自閉症の子どもの症状は、一人一人違います

 東田さん自身、この本の中で、「自閉症といっても、ひとりひとり違います。全ての自閉症者が僕と同じではありません。」と書いています。

 自閉症について、文部科学省のホームページに次のように書いています。

 ①他者との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする発達の障がいです。その特徴は、3歳くらいまでに現れることが多いですが、成人期に症状が顕在化することもあります。中枢神経系に何らかの機能不全があると推定されています。

文部科学省ホームページ

 別の書き方で書くと、「①対人関係の困難さと、②コミュニケーションの困難さがあり、③限定したものや事柄に強いこだわりや興味のかたよりがあること」です。

<「飛び跳ねる思考」という本>

 今回紹介する「跳びはねる思考」という本は、2014年9月に発行されました。

 普段の東田さんの口から出る言葉は、奇声や雄叫び、意味のないひとりごとだそうです。普段よくしている「こだわり行動」や跳びはねる姿からは、彼がこんな文章を書くことができるとは、誰も思えないみたいです。

 この本は、次のような5つの章からできています。

第1章 僕と自閉症       第2章 感覚と世界

第3章 他者とともに      第4章 考える歓び

第5章 今を生きる

飛び跳ねる思考

 そして、それぞれの章には、7つから8つのエッセイが書かれています。

 この5つの章以外に、「はじめに」と佐々木俊尚さんの文章が添えられています。

 ここでは、内容をもっとよくわかってもらうために、「はじめに」の全文を引用して、紹介します。

 僕にとって文章を書くことは、息をするのと同じくらい自然なことです。そう感じるのは、重度の自閉症という障害のために、人とコミュニケーションがとれないせいかもしれません。

 自閉症とは、さまざまな研究から、現在では先天的な脳機能障害だと、考えられています。

 障害があるから不幸ではないのです。けれども、自閉症だから、普通の人にはない感性が僕に備わっているのも事実でしょう。ただし、一口に自閉症といっても、ひとりひとり違います全ての自閉症者が僕と同じではありません

 僕がエッセイの中で伝えたかったのは、その人しかわからない世界があるということです。

 物事は、少し見方を変えれば、全く違ったとらえ方ができるのではないでしょうか。

 僕がどんなに高く跳びはねても、それは一瞬のことで、すぐに地面に着地してしまいます。なぜなら、体というおもりがついているからです。

しかし、思考は、どこまでも自由なのです。

 何の制約を受けることなく、空の彼方に舞い上がったり、深い海にもぐったりすることができます。

 僕と一緒に思いを巡らせてみませんか。きっと、あなたも新しい「自由」を手に入れることができるでしょう。 

飛び跳ねる思考

 この文章を読むと、東田さんが人と会話できないことがとても信じられないように思えます。

 しかし、実際には、会話という手段では、東田さんとコミュニケーションを取ることができないのです。

 私たちは、ある人の表面的な言動だけで、その人のことをよくわかったように思ってしまいがちですが、人というのは本当にいろいろな個性があるのだということについて深く考えさせられました

 東田さんは、重い自閉症という障がいをもっておられますが、その思考は、本当に自由で豊かなのだと思います。

 東田さんの考えに触れることで、人のもつ能力や可能性について、いろいろと考えさせられます。ぜひ、お読みいただくことを強くお勧めします。

 なお、この本が購入できるページには、次のところから行けます。

飛び跳ねる思考の購入できるページに進む外部リンク

⭐️ ⭐️

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教育書紹介:発達障害の子どもたちに進む内部リンク

教育書紹介:小2息子、不登校。~親子で泣いた絶望の夜に進む内部リンク

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