指導案の原案作りも研究主任の役割のひとつです。
学校では、授業を行う以外に様々な仕事があります。
そのような仕事を校務分掌といい、教職員が分担をして行います。
ある程度教員を経験すると、研究主任という役割に任命されることがあります。
今回は、「研究主任の役割③:指導案の原案作り」について書きます。
研究主任の役割③:指導案の原案作り
🟠研究主任の役割③:指導案の原案作り
<研究主任の大まかな仕事>
多くの学校では、研究部や研究主任の役割は、次のようなものです。
・研究主任が中心になって研究教科や研究テーマなどを設定して校内研究組織を作る。
・教員の授業力向上のために、年に数回研究授業を行う。
・授業や単元の進め方について具体的を方法を提案する。
・年間の研修のスケジュールを作ったり、研究授業の日程が重ならないように日程調整を教務主任を一緒に調整する。
・新任の教員がいる場合は、その教員向けの研修計画を作成する。
・研究授業を行うときに、外部講師との調整を行う。
・研究授業の前の指導案検討会の司会をしたり、研究授業後の研究授業討論会の司会をしたりする。
・研究授業の際の、授業記録、板書記録、ビデオ撮影、写真撮影などの役割分担の案を作成する。
・研究冊子を作る場合は、どのような内容にするのか案を作成する。
<指導案の原案作り>
多くの学校では、年間に数回の研究授業を行うことが一般的です。
その際、基本的な指導案の原案を作成して、提案するのも研究主任の大きな役割のひとつです。
簡単な方法は、昨年度の指導案の書き方をそのまま引き継ぐことです。
新任の教員や転任の教員以外は、昨年度の指導案の書き方をそのまま使えますので、慣れているということもあると思います。
ただ、最近は、教職員の働き方改革が求められていますので、研究主任の立場から、指導案を簡略化するという提案をすることもできると思います。
ただ、学校長や教頭などの管理職の中には、従来型の長い指導案を書くことによさを感じていることも考えられますから、いきなり全体に向けて提案するのではなく、前もって管理職などに相談をして、打ち合わせをしておく方がいいと思います。
多くの学校で引き継がれている指導案の書き方には、長い間引き継がれているという意味で、それなりのよさもあると思います。
今回は、基本的な指導案の原案を示してみます。
<指導案の原案の例1>
○○科学習指導案
0:授業の実施に関係すること
1:単元名(教材名)
2:単元の目標
3:単元の評価規準
4:児童観
5:教材観
6:指導観
7:研究テーマとの関連
8:年間指導計画における位置付け、単元の関連
9:単元の指導計画と評価計画
10:本時
<0:授業の実施に関係すること>
授業の実施に関係することには、次のようなことがあります。
・日時……研究授業を実施する日時を書きます。
・時間……何時間めを書くと同時に、実際の時刻を書きます。
・対象学級……受け持っている学年・組などを書きます。子どもの人数を書くこともあります。
・指導場所……学級が多いですが、体育や理科などの場合、運動場や特別教室のことがあります。
・指導者名……指導をする教員の名前を書きます。
<1:単元名(教材名)>
国語などの授業においては、主たる教材名である「スイミー」や「おてがみ」と書くこともありますが、その主たる教材を使って行う主な学習内容である「お話を読んでしょうかいしよう」
や「すきなところを見つけよう」というように単元名を書くこともあります。
どちらを書くようにするのかは、研究主任が決めていいことだと思います。
学校によっては、単元名と教材名を併記することもあります。
<2:単元の目標>
単元の目標の書き方もさまざまです。
多くの場合は、「学習指導要領」にある「各学年の目標及び内容」などに書かれている言葉を引用したり参考したりする形で書きます。
現行の学習指導要領では、各教科等の目標は「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの柱で書かれています。この3つの柱を書くかどうかを決める必要もあります。
その教材で身につけさせたい目標を、指導者が自分の言葉を使って書くこともあります。
どのような書き方で書くようにするのかを提案するのも研究主任の役割です。
どちらでなければいけないということはありません。
<3:単元の評価規準>
指導案に単元の評価基準を載せるかどうかは、学校によって違います。
以前は、あまり載せることはありませんでしたが、最近は少しずつ載せる学校が増えてきているのかもしれません。
しかし、これを載せることによって、元々書くことが多い指導案に書く事柄が増えているデメリットがあるともいえます。たかだか、1時間の授業をするのに、莫大な時間をかけてまで書く必要があるのかどうかということは、研究主任はきちんと理解しておく必要があります。
授業者が膨大な時間をかけて書くほどの効果があるのかは、見極める必要があります。
単元(題材)の学習を通して身に付けるべき資質や能力が「目標」に照らしてどのような状況にあるかを的確に把握するために、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点から、単元の評価規準を設定します。
その際、教育政策研究所が、教科ごとに作成している「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料(小学校編)」などを参考にするとよいでしょう。
「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料に進む(外部リンク)
<4:児童観>
学習指導は、①「子どもの実態」を考え、②「目標を設定」し、③「教材の価値・よさ」を考え、④「指導の方法」を工夫していくことが必要だと思います。
児童観とは、「子どもの実態」のことです。今子どもがどのような力を身につけているのかを書く欄です。子どもの実態を把握するために子どもに簡単なアンケートをとって書く場合もあります。何らかの評価テストをしてその状況をまとめて書くこともあります。
子どもが今までにどのような学習経験をしてきているのかを書くこともあるかもしれません。
指導者から見て感じる学級の多くの子どもの様子を素直に書くだけでもいいように思います。
<5:教材観>
今回扱う教材について書きます。その教材の価値やよさについて書くことです。どのような内容であるのか参観者にわかるように説明をする欄ともいえます。
本来は、今の子どもの実態にふさわしい教材である方がいいのでしょうが、多くの場合は、教科書に載っている教材をそのまま解説することが多いように思います。
国語の場合などでは、その教材にどのような特徴があるのかを書くようにします。
<6:指導観>
今回の授業における、指導の工夫について書く欄です。
子どもにある力を身につけるために、指導者がどのような工夫をしようと考えているのかを書きます。
主体的な学習を促す工夫や、個々に応じた指導についてできるだけ具体的に書くようにします。
<7:研究テーマとの関連>
学校が研究テーマを掲げて研究している場合は、その研究テーマに掲げている事柄について書きます。
例えば、ある学校の研究テーマが「ソフトウェアを取り入れた授業改善」というテーマに決めたとします。
授業に必ず何らかのソフトウェアを使った研究授業をすることだけを共通理解にした研究だとした場合、どのようなソフトウェアを使うのか、どのソフトウェアにはどのような特徴があるのかを簡単に紹介した方が参会者は、授業を見やすいと思います。
研究テーマについて詳細に書くことは確かに大切なことかもしれませんが、先程も書いたようにどのくらい時間をかけて指導案を書く必要があると考え、提案するのも、研究主任の大きな役割です。
<8:年間指導計画における位置付け、単元の関連>
授業は、1年間に34時間から315時間かけて行う各教科の授業の中の1時間です。
年間指導計画における位置付けや単元の関連などについて触れることも必要かもしれません。
今回の1時間の授業や数時間にわたる単元の授業の前に、どのような学習を経験してきているのかを知っておくことや、今回の授業の後で、今後どのような内容を学ぶことになるのかを考えておくことは必要なことかもしれません。
<9:単元の指導計画と評価計画>
単元が何時間扱いで、それぞれの時間に概ねどのような授業を考えているのか書かれていることが一般的です。
最近は、指導と評価の一体化を考えることから、毎時間の授業をどのように評価するのかを書く指導案も増えてきているように思います。
ただ、実際にできもしない評価について詳しく書くのもいかがなものかなと思いますので、個人的にはあまり評価計画について詳しく書く必要はあまりないように思います。
<10:本時>
本時に書かれる事柄には、次のようなものがあります。
・本時の目標……この時間の学習目標を書きます。
・本時の評価規準……主な評価規準を 具体的な評価方法とともに書きます。
・本時の判断基準……本時の目標を達成した子どもの具体的な姿や支援の手立てを想定して書きます。
・本時の学習過程……表にして書くことが多いです。
表の項目としては、時間、学習内容・学習活動、指導上の留意点、評価規準・評価方法などです。
どの項目をとりあげるのか、原案を提案するのも研究主任の役割です。
学習内容や学習活動は、子どもを主語にして書くことが多いです。
指導上の留意点は、指導者を主語にして書くことが多いです。
・板書計画……実際黒板にどのようなことを書こうと考えているのかを前もって書いておきます。
<全体を通して>
今回、指導案の原案を書いてみましたが、指導案は、こうでなければならないということはないように思います。
指導案には、大きく2つの役割があります。
1つは、授業者が授業をしやすい設計図としての役割です。
もう1つは、授業の参観者が、授業者の意図を知るための説明書としての役割です。
今回の指導案の原案作りでは、研究をどのように進めるのかという3つめの役割について触れた部分もあります。
今回の指導案の原案作りでは、1から10まで書いてみましたが、1から10まで必要であると考えているわけではありません。あくまで指導案の一例としてとらえてください。
もしかすると、これからの指導案は、1から9までに書かれていることは全てなくして、10だけを書くようにしてもいいようにも思います。
1から9までに書く内容をていねいに書くことにはとても大きな意味があることは確かです。しかし、働き方改革を本気で考えるのであれば、1から9までを、切り捨ててみるというのもひとつの研究のあり方ではないかなとも思います。
指導案を簡単にすることで、子どもの学力が低下するのかどうかということを検証するような研究があってもいいようにも思います。
自分の学校にふさわしい、多くの教員が研究することに意味を感じるような「指導案の原案作り」をすることが、現在の多くの研究主任に求められていることのようにも思います。
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関係する事柄についてもお読みください。
研究主任の役割①:大まかな仕事に進む(内部リンク)
研究主任の役割②:国語研究の具体例に進む(内部リンク)
授業研究:教育用語⑥に進む(内部リンク)
研究授業 小学校初任者研修019に進む(内部リンク)
校内研修会への参加 小学校初任者研修038に進む(内部リンク)
教務主任の役割①:大まかな仕事に進む(内部リンク)
教務主任の役割②:時間の管理に進む(内部リンク)
教務主任の役割③:お知らせの作成に進む(内部リンク)
教務主任の役割④:教育計画の作成に進む(内部リンク)
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