基本的な指導の流れ 社会科の指導(1)

社会科の学習
つばさ
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社会科の基本的な授業の進め方が知りたいです。

 中学年になると、社会科の学習が始まります。

 今回は、社会科の「基本的な指導の流れ」について書きます。

基本的な指導の流れ 社会科の指導(1)

🟠社会科の指導の基本的な流れ

<社会科の目標>

 現行の小学校学習指導要領では、「社会科」の目標が次のように書かれています。

 社会的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成することを目指す。

(1) 地域や我が国の国土の地理的環境,現代社会の仕組みや働き,地域や我が国の歴史や伝統と文化を通して社会生活について理解するとともに,様々な資料や調査活動を通して情報を適切に調べまとめる技能を身に付けるようにする。

(2) 社会的事象の特色や相互の関連,意味を多角的に考えたり,社会に見られる課題を把握して,その解決に向けて社会への関わり方を選択・判断したりする力,考えたことや選択・判断したことを適切に表現する力を養う。

(3) 社会的事象について,よりよい社会を考え主体的に問題解決しようとする態度を養うとともに,多角的な思考や理解を通して,地域社会に対する誇りと愛情,地域社会の一員としての自覚,我が国の国土と歴史に対する愛情,我が国の将来を担う国民としての自覚,世界の国々の人々と共に生きていくことの大切さについての自覚などを養う。

小学校学習指導要領 社会科

 簡単に言いかえると、「社会のしくみとそこに生きる人々の願いを知り、よりよく生きるために問題があれば解決策を探す」ということです。

 私の知り合いの先生は、もっと簡単に社会科は、「社会に生きる人々の願いを知る」ための教科だとおっしゃっていました。ある意味、とても簡単な要約だと思います。

<基本的な指導の流れ>

 社会の時間は、座学を中心にしながらも、様々な方法で調べたり考えたりする活動的な時間です。

 教室で、社会のしくみや社会の出来事などについて、疑問をもち、それを解決するために、予想した上で、調べたり、考えたりしながら、よりよい社会になるための人々の願いや努力などを読み解いていくようにします。

 社会の学習は、小学校では、3年生から6年生が学び、3年生では70時間、4年生では90時間、5年生では100時間、6年生では105時間学ぶことになっています。

 典型的な社会科の学習は、「問題をつかむ」→「予想する」→「調べ、考える」→「まとめる」→「つなげる」という形で進むことがあります。この学習の進め方は、学習内容や教師などにより微妙に変わります。

 先程あげた社会科の時間の基本的な学習の流れは、次の通りです。

0.指導者が、その時間に学ばせたい内容を決める。

1.社会のはてなと思うことやふしぎなことについて、疑問をもつ。

2.疑問を解決するための方法を考える。

3.予想を立てる。

4.様々な方法で調べたり、考えたりする。

5.学んだことを通してわかったことをまとめる。

6.さらにしてみたいことを考えたり、自分の生活に活かしたりする。

<0.指導者が、その時間に学ばせたい内容を決める>

 本来は、子ども自身が、社会についてはてなと思うことやふしぎに思うことなど、疑問をもち、解決したいと強く思うことが大切なのだと思います。しかし、それぞれの子どもが疑問をもつことを待っていると、授業は計画通り進みません。

 そこで、指導者である教員が授業の内容を決めることになるのですが、子どもが疑問をもてるように、上手な導入の工夫をすることも必要です。

 とはいえ、いつもいつもいい導入が思いつくわけではありませんので、さっと問題に入ってもいいと思います。

 教員によっては、子どもが疑問をもつように、写真やグラフなどの資料を用意したり、実物を用意したりすることもあります。

 このブログでも時折紹介している社会科教育の大家である有田和正さんは、このような子どもが興味を引く教材のことを「ネタ」と称して、日常生活を過ごす中で、絶えず「教材・ネタ」を探すことを日課にされていました。

工夫しながら勉強する教師は必ず伸びるに進む内部リンク):有田和正さんの名言

 どう探すのがわからない、自分で探すなんてたいへんだと思う人は、教科書や資料集などから選んでもいいと思います。

<1.社会のはてなと思うことやふしぎなことについて、疑問をもつ。>

 多くの学級では、教科書に出てくる問題を教員がさっと提示する形で、授業は進んでいくことが多いのだと思います。初任者や経験が浅い教員の場合はそれで十分だと思います。

 ただ、子どもが調べてみたいと思うような演出をすることはとても大切です。

 ある教員は、「5年生の農業に関する授業」をするときに、教科書に載っている写真を拡大して子どもに示して次のように発問したそうです。

「この写真の中央に写っている川の名前を当ててください。」

 多くの子どもは、「えーっ! そんなー。」「分かんないよ。」「無理,無理。」と言い、中には手当たり次第に知っている川の名前を言う子どももいたそうです。

<2.疑問を解決するための方法を考える。>

 多くの場合、これも教員が提案することになると思います。

 できる範囲で子どもの考えを取り入れることも大切かもしれません。

 先程の「5年生の農業に関する授業」では、「川の名前なんてわからない」という子どもに対して、子どもが問題に向き合えるように、粘り強く補助発問を重ねます。「川をよく見て….。」「川のそばは何?」などと続けていくうちに、子どもたちは、「川の周りには田が広がっている。」「米づくりのさかんな地域らしい。」ということに気づきます。 

 そこで、それを解決するための方法として、地図帳には「都道府県別統計資料」という資料があることを知らせます。

 そして、「米の生産量の多い都道府県を探しましょう」と伝えます。その際、米の生産量が多い県とは、40万トン以上の都道府県と伝えます。すると、新潟県、北海道、秋田県、福島県、宮城県、山形県、茨城県の7つが出てきました。

<3.予想を立てる>

 予想を立てることは、とても重要です。なぜそう思うのか、子ども自身に予想や、その理由を考えさせることは、とても大切です。

 とはいえ、多くの子どもがさっと予想やその理由を思いつくわけではありません。

 時には、教員自ら、いくつかの予想を提示し、選ばせるという方法も有効です。

 予想を板書に書き出し、どのようになると思うか、子どもは自分の考えと同じところに、自分の名前カードを貼らせた上で、意見の交換をするという方法もあると思います。

名前カードの活用に進む内部リンク

 先程の「5年生の農業に関する授業」では、「先生、みんな(日本の)東側の県ばっかりだ。」という声が上がるようになったそうです。子どもによって、本時の学習の中心である「稲作の盛んな地方が発見」されることになります。

<4.様々な方法で調べたり、考えたりする。>

 様々な方法で調べたり考えたりするときに、大切なことは、できれば子ども自身に進んでその活動をさせることです。

 子どもが進んでしてみたいと思うと、子どもは授業を楽しく感じ、いつの間にか授業に熱中しています。

 先程の「5年生の農業に関する授業」では、続いて「平野」や「盆地」といった用語が子どもの口から出始めるようになったそうです。子どもたちはいつの間にやら授業に引き込まれ、地図帳を夢中になって見ている姿へと変わっていきました。  

 ここで指導者は、第2のヒントとして「写真の後ろの方にも目を向けよう。」という投げかけをしました。子どもたちは「高い山がある」ということに気づきます。

 先ほどの都道府県の中から、「平野」(一部の子どもは「盆地」)のすぐ近くに高い山のある場所を探し始めました。新潟県の越後平野と大日岳、北海道の十勝平野と日高山脈、福島県の郡山盆地と安達太良山、宮城県の仙台平野と船形山、山形県の庄内平野と鳥海山が子どもによって拾い出されました。

 この段階で、秋田県と茨城県は外されました。ここで、「低地部と山の位置関係」を考えさせて、福島県の郡山盆地と安達太良山、写真に大都市である仙台市らしき町並みがないことから宮城県の仙台平野と船形山、写真の山は独立峰であることから北海道の十勝平野と日高山脈が外されました。

 残るは越後平野と庄内平野です。ここまでくると教室内では子どもそれぞれが自分なりの意見を出し合い、大騒ぎになったそうです。多少時間をとった後にそれぞれの意見を集約しました。

 越後平野を支持する子どもは、「新潟県は日本一の米どころ。」「やっぱり有名。」という理由が大半を占めました。それに対して、庄内平野を支持する子どもの中には、「平野のすぐ近くに山がある。」「前回の授業でやった都道府県別特産物で山形県は米だった。」という、指導者が用意していた第3、第4のヒントをずばりと言い当てる子どももいました。ごく自然な感じで「先生、この写真は庄内平野でしょう。」ということになったそうです。

「それでは庄内平野を流れる川を探しましょう。」と言う間もなく、月光川、 日向川、最上川、赤川の名前が出されました。写真から見て取れる山との距離感から最上川と赤川は違いそうだということになり、月光川と日向川のいずれかであるということになりました。どちらも鳥海山の方から流れてくるが、平野部に入ってから山の裾野に沿って大きく曲がる月光川ではなく、平野の中を流れる日向川が、子どもたちが最終的に選択した河川でした。

 指導者の「大当たり~」の声とともに、教室は割れんばかりの大喝采になりました。苦労しながらもみんなでたどり着いた正解に、どの子どもも大喜びでした。  

<5.学んだことを通してわかったことをまとめる>

 今回紹介した「5年生の農業に関する授業」では見事に最後まで子どもの力で解答にたどりつけました。

 しかし、子どもが行う調べ活動では、時には思ったとおりに進まないこともあります。

 そのような場合、必要に応じて、内容がよくわかるようにまとまっている教科書やNHKなどの動画を見ることもとても効果的です。

 特に、NHKが公開している「NHK for school 」は、いろいろな長さの動画も多数用意されていますので、上手に活用することで、子どもが行った調べ活動を補足することができます。

NHK for school 情報教育に進む内部リンク

NHK  for  Schoolのホームページに進む外部リンク

<6.さらにしてみたいことを考えたり、自分の生活に活かしたりする。>

 学習の最後は、まとめをします。学力の定着を図るためには、とても大切な学習です。

 子ども自身の言葉で、分かったことをまとめたり、感想を書いたりする時間をもつことも大切です。

 単元テストをする前には、その単元でわかったことをノートにまとめる時間を設定するようにしたり、NHK for school などの動画を通して見せたりすることもよいと思います。

 今回紹介した「5年生の農業に関する授業」では、この授業を通して、子どもたちは地図帳の中に描き込まれている様々な情報を自らの力で発掘することができています。このような地図利用の面白さや楽しさを体感することによって、今まで地名探し程度の利用に過ぎなかった地図帳が急に「宝の泉」へと大変身を遂げたと思います。

 その後、休み時間などにも地図帳を開いている子どもの姿が見られるようになり、地図の活発な活用の礎となる授業となったそうです。

 今回の記事を書くにあたり、東京書籍のホームページに載っている埼玉県東松山市立松山第一小学校の岩本教裕(いわもと・のりひろ)先生が書かれた「社会科を学びたくなるような授業を目指して」という優秀賞を受賞された論文に書かれている授業と子どもの様子を活用させていただきました。緑色の部分は、岩本先生の文章です。とてもよい論文ですので、ぜひ、論文もお読みください。

社会科を学びたくなるような授業を目指してに進む外部リンク

⭐️ ⭐️

 他の教科の授業の流れなどは、次のページをお読みください。

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道徳の時間の指導に進む内部リンク

問題解決学習に進む内部リンク算数の授業の進め方の一例

物語文の指導の仕方(5)1時間めの指導に進む内部リンク

説明文の指導(4)1次の指導 題名読み・計画作りに進む内部リンク

 各教科の内容については、次のページをお読みください。

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