図書館のユニバーサルデザインについて知りたいです。
最近、ユニバーサルデザイン(UD)の考えが少しずつ一般的になってきました。
学校以外のさまざまなところでも子どもは過ごします。
そのような子どもが過ごしている場所において、どのようなユニバーサルデザイン(UD)の考えが広がっているのか考えてみます。
今回は、「社会の中のユニバーサルデザイン 図書館」について書きます。
社会の中のユニバーサルデザイン 図書館
<ユニバーサルデザインとは?>
ユニバーサルデザイン(UD)という言葉が一般的になってきました。
ユニバーサルデザインとは、1980年代にアメリカのロナルド・メイス氏という博士が中心となって提唱した「年齢や能力、状況などにかかわらず、できるだけ多くの人が使いやすいように、製品や建物・環境をデザインする」という考え方です。
「ユニバーサル」とは「すべてに共通の」「普遍的な」という意味で、「ユニバーサルデザイン」を日本語に言いかえると、「すべての人のためのデザイン」「みんなにやさしいデザイン」という意味です。ユニバーサルデザインは、必ずしも形のあるものだけをさしているわけではありません。
ユニバーサルデザインには、7つの原則があります。
その7つの原則とは、次の7つです。
原則1:誰にでも公平に使用できること
原則2:使う上で自由度が高いこと
原則3:使い方が簡単ですぐわかること
原則4:必要な情報がすぐに理解できること
原則5:うっかりミスや危険につながらないデザインであること
原則6:無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使用できること
原則7:アクセスしやすいスペースと大きさを確保すること
<社会の中のユニバーサルデザイン>
子どもが、家庭や学校以外によく利用する場所には、どのような場所があるでしょうか。
駅、スーパーマーケット、道路、図書館、児童館、公園、病院、遊園地などがあります。
そのような場所では、最近ユニバーサルデザインを意識した設計になっていることがよくあります。
今回は、そのような場所の中から子どもが利用することの多い図書館で、どのようなユニバーサルデザインを考慮してしているのかを紹介したいと思います。
<図書館のユニバーサルデザイン>
今回は、「放送大学」の「情報社会とユニバーサルデザイン」という講座の「第4回 サービスと情報提示のユニバーサルデザイン」という番組の中で、紹介されている兵庫県明石市にある「あかし市民図書館」のユニバーサルデザインを中心に紹介します。
「立地」
あかし市民図書館は、JR西日本の明石駅のすぐ前にあります。図書館のような施設は、駅から近いところにあるのはとても重要だと思います。
あかし市民図書館は、「パピオスあかし」というビルの4階にあります。
このパピオスあかしは、地下に駐車場も完備した大きな商業施設です。
このビルの5階と6階には、「あかし子ども広場」という名前で、屋内大型遊具やキッチンルーム、音楽スタジオ、親子交流広場、子ども支援センター、子ども用図書館、子ども健康センターなどがあります。
7階には、屋上広場まであります。
「サービスタワー」
総合案内をする場所です。ドリンクコーナーもあります。
「ラウンジ」
ラウンジには、たくさんの椅子が置いてあり、大きな窓からは、きれいな景色を見ることができます。近くにある明石城公園にある城跡ときれいな木々などを見ることができます。
「児童エリア」
子どもが本を取りやすいように低い本棚を用意しています。すぐに本が読めるように、本棚の横には、小さな椅子を用意しています。
棚の「カ行」「タ行」などの表記の漢字には、「ぎょう」という読みがなをつけています。
「児童カウンター」
子ども用のカウンターの表記の漢字にも読みがなをつけたり、「筆談&おえかきボード」や「コミュニケーションボード」を用意したりしています。
「コミュニケーションボード」には、子どもたちがよく質問する「本を借りたい」「本を予約したい」「コピー機を使いたい」などの言葉がイラストと一緒にえがかれています。ここでも漢字には読みがながついていて、指でコミュニケーションボードを指すだけでも、図書館の職員とコミュニケーションができるような工夫をしています。
「説明カード」
非常時用に大きな紙に「非常ベルがなりました」「地震が発生しました」「火災が発生しました」「誘導します ついて来てください」というような言葉を書いたものを用意し、耳の不自由な人が、目で見てわかるようなものも用意しています。漢字には、読みがながついています。
「赤ちゃんえほんコーナー」
絨毯敷きのコーナーに低い椅子と絵本が用意され、お母さんと赤ちゃんがゆっくり絵本を楽しむことができるようになっています。
「授乳室」
お母さんが赤ちゃんにお乳をあげることのできる部屋です。お父さんなども哺乳瓶でミルクをあげることができるように水道や熱湯、ベッド、椅子などが用意されています。
部屋の前には、かわいいイラストとピクトグラムが掲示されています。
「こどもWC」
ここにも扉に、かわいいイラストとピクトグラムが掲示されています。
洋式トイレ、子ども用の小さな洋式トイレ、男の子用のトイレの3つが1つの個室トイレの中に用意されていて、複数の子どもも一緒にトイレができるようなに工夫されています。
「一般書エリア」
車椅子の人も通りやすいように、本棚と本棚の間の通路の幅を広くとっています。
本を読む机には、普通の椅子もありますが、足元に小さな車輪のついた椅子をところどころに配置していて、座ったり立ったりや、椅子の移動をしたりすることがしやすくなっています。
「ディヒューザー」
香りを出す機械を設置し、リラックス効果をもたらすことに加えて、ユニバーサル資料の近くに置いてあるので、目の不自由な人が、この香りを嗅いで、ユニバーサルコーナーに辿り着く道案内の役割もしています。
「ユニバーサル資料コーナー」
デイジー資料、点字資料、大活字本などが置いてあります。
デイジー(DAISY)とは,Digital Accessible Information Systemの略です。「アクセシブルな情報システム」と訳されるデジタル録音図書の国際標準規格のことです。
視覚の障がい等により,普通の印刷物を読むことがむずかしい方々のために,カセットテープに代わるものとして開発されました。
1枚のCDにカセットテープ約50巻分の録音が可能です。
「電子閲覧室」
インターネットで情報を得ることができます。
ここにある「ユニバーサルサービス席」では、点字翻訳データーベース(サピエ図書館)につなぐことができます。
拡大読書機もあります。この機械に、本などの資料を置き、つまみを回転させることで、モニターに写す字の大きさを変えることができ、自分に合った好きな大きさの文字にすることができます。
音声読み上げ機では、本をスキャンすると、機械が自動で、文字を読み上げてくれます。
「移動図書館」
あかし図書館は、移動図書館用の車を2台持っていて、明石市内の各地に移動し、市民がそこで本を読むことができます。移動図書館車には、車椅子でも出入りできるようなリフトも完備しています。
<学校に活かすことのできること>
資金の問題もありますので、あかし図書館にあるような設備を、一般の小学校で揃えることはできないかもしれません。しかし、これらの設備で取り入れられているユニバーサルデザインの考えは、学校の環境を整える上でも、とても参考になると思います。
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