教員の勤務実態調査 教育ニュース

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教員の勤務実態調査が公表されました。

 2023年(令和5年)4月28日に、教員の勤務実態調査が文部科学省から公表されました。

 今回は、「教員の勤務実態調査」について書きます。

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<教員の勤務制度について>

 多くの教員は、地方公務員ですので、勤務制度は、それぞれの自治体によって違います。

 多くの自治体では、勤務時間は、朝の8時30分から夕方の5時になっているところが多いのではないでしょうか。ここでは、仮にこの時間帯が基本的な勤務時間であるとして話を進めます。

 教員の勤務に関する状況は、かなりブラックなところがあります。

 1つめは、朝の勤務時間についてです。一応、朝の8時30分までに学校に入ることになっていますが、子どもの登校時間が教職員の8時30分よりも前にの8時から8時20分ごろに設定されていることが多いです。当然、8時前に勤務する教職員もたくさんいます。8時30分の就業前であろうと、基本的には自由な時間ではありません。保護者からの欠席などの連絡が入れば、普通に対応します。

 勤務時間前だから関係ないと言うことはありません。

 これが、同じサービス業でも、スーパーマーケットやレストランなどのサービス業と大いに違うところです。

 就業時間前であろうと、子どもや保護者に対応するのが一般的です。

 多くの学校では、子どもの登校指導を行うことも珍しくありません。交代で、子どもを正門や通用門で出迎え、あいさつをしたり、子どもの様子を観察したりします。しかし、多くの教職員のこの行為はあくまで自発的に行っている行為と考えられています。

 2つめは、休憩時間についてです。多くの小学校では、給食があります。この時間は、給食の準備をしたり、子どもが給食を食べたりするのを見守ったりしますので、子どもとほぼ一緒にいます。自分の昼食を教室やランチルームで食べますが、子どもの指導をしながらですので、完全な自由な時間ではありません。

 普通の労働者は、労働基準法第34条で、「労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければならない」と定められていますので、全く自由な休憩時間を過ごすことができます。勤務場所から離れることも自由ですし、仕事に関係することからは解放されます。

 しかし、教職員でこの自由な休憩時間を過ごしている人はほとんどいません。職員室にいる事務員や管理職などは、子どもと対応していませんので、自由な時間が取れているように感じている人がいるかもしれません。職員室にいる教職員も状況は同じようなものです。電話がかかってくれば、普通に対応しますし、業者が休憩時間に荷物を運んできても「今、休憩時間だから」と断ることはありません。普通に、親切に対応します。保護者の中には、ご自分の昼休みに学校に遅れた児童費を持って来られる方もいますので、この時間は対応しません、と言う時間を設定することもありません。

 多くの教職員はおかしいなあと思いながらも、休憩時間を削って勤務を続けることになります。

 自治体や学校などによっては、昼に休憩時間を取れないので、子どもが帰った後の3時45分や4時ごろから45分間の休憩時間を設定している場合もあります。

 しかし、この休憩時間もほぼまやかしの一応休憩時間を設定していますよ、というアリバイ作りのような設定です。普通に、休憩時間であろうと、職員会議やその他の校務分掌などの会議は設定されます。「今は休憩時間なので、私は会議に出ません。」という教職員はまずいないと思います。もしそんな教職員がいれば、正当な要求でしょうが、確実に他の教職員からのいじめの対象になると思います。

 3つめは、終業時間についてです。一応5時になっていますが、この終業時間で学校からいなくなる教職員はほとんどいません。多くの教職員は、残って様々な仕事をすることになります。

 教員の仕事は、授業をすることが一番重要な仕事ですが、教員の仕事は授業を行うだけではありません。

 テストの採点、宿題の点検、授業準備や教材研究、子どもが問題行動を起こした場合の子どもの指導や保護者対応など多岐に渡ります。

 学校の教職員には、学校の様々な仕事を校務分掌という形で分担して担っていますので、その仕事をする必要もあります。学校行事の準備や職員会議に提出するための書類の作成などもあります。

 若手の教職員の場合は、校務分掌も少ないのですが、少し経験を積むと、たくさんの校務分掌を割り当てられることになります。

 学校全体に関わる事柄もありますので、時には、次の日の授業準備を後回しにして、これらの準備をすることになります。

 多くの教職員は、たいへんだなと思いながら日々教員や職員としての仕事に邁進しています。

 その上、最近は多くの人に認識されるようになりましたが、教員には、残業手当というものがありません

 俗に特措法と呼ばれる法律があります。正式には、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」といわれる法律です。

 この法律の第3条には、次のように書かれています。

 教育職員(校長、副校長及び教頭を除く。以下この条において同じ。)には、その者の給料月額の百分の四に相当する額を基準として、条例で定めるところにより、教職調整額を支給しなければならない。

 2 教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない

公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法

 このことから、給料の4%を上積みすることで、教員には、一般の労働者に認められている時間外勤務の報酬が出ません

 本当にブラックな勤務状況だと思います。

 最近、多くの自治体で、教員のなり手がいない。教員採用試験の受験者が現象している。教員が休職しても代わりの教員の手配ができない、というようなことが問題になっています。

 しかし、ある意味では、このような構造的な問題を長い間、国も自治体も教職員の勤勉さに甘えて放置してきましたのが、当然の結果なのかもしれません。

<教員勤務実態調査>

 2023年4月29日に文部科学省から、「令和4年度の教員勤務実態調査【速報値】」という資料が公表されました。

教員勤務実態調査(令和4年度)【速報値】についてに進む部リンク

 この資料は、「教師の勤務実態や働き方改革の進捗状況等を把握・分析することを目的として令和4年度に教員勤務実態調査を実施」し、その「その速報値がとりまとまりましたので公表」することになってものです。

 調査対象は、小学校1,200校、中学校1,200校、高等学校300校に勤務するフルタイムの常勤教員(校長、副校長、教頭、教諭等)です。

 調査期間は、令和4年8月、10月、11月のうち、連続する7日間について、調査対象を3つに分けて調査しています。

 今回の調査は、平成28年度(2016年)の同様の調査と比較して公表しています。

 この手の調査によくあることですが、状況が改善していることを積極的に評価しています。

 例えば、次のように書いています。

 前回調査(平成28年度)に比較して、平日・土日ともに、全ての職種において、在校等時間が減少したものの、依然として長時間勤務の教師が多い状況。

教員勤務実態調査(令和4年度)【速報値】について

 勤務時間が多いことに全面的に記載するのではなく、まず、「全ての職種において、在校等時間が減少した」ことを評価しています。

 仕方のないことでしょうが、勤務時間に対する問題意識がとても薄いような印象を受けてしまいました。

 次に「10・11月の業務内容別の在校等時間(1日あたり)」について次のように書いています。

○ 平日については、主に、「授業(主担当)」、「朝の業務」、「学習指導の時間」(小学校)が増加し、「学校行事」、「成 績処理」(小学校)、「学校経営」(小学校)、「学年・学級経営」(中学校)、「生徒指導(集団)」(中学校)の時間が減少している。

〇 土日については、主に、「学校行事」、「部活動・クラブ活動」(中学校)の時間が減少している。

教員勤務実態調査(令和4年度)【速報値】について

 さらに、「その他の勤務状況」として、次のような記載があります。

① 「教諭」の平日の在校等時間は、小学校・中学校共に、特に40歳以下の減少幅が大きい。

② 小学校・中学校共に有給休暇の取得日数が増加している。

③ 部活動顧問の週当たりの活動日数は減少している。

④ ほぼ全ての小学校・中学校で、学習評価や成績処理について、ICTを活用した負担軽減に関する取組が実施されている。

教員勤務実態調査(令和4年度)【速報値】について

 新聞やテレビなどでは、この調査をもとに、次のように報じています。

 今回行われた調査で「過労死ライン」と言われる月80時間の残業に相当する可能性がある教員は、中学校で36.6%、小学校で14.2%でした。

 6年前の前回は、中学校で57.7%、小学校で33.4%でした。

国の残業の上限超える教員 中学校77.1% 小学校64.5% 現場は:NHKニュースWEB

 確かに、6年前の調査に比べると、月80時間を超える残業時間をしている教員の数は減っているのでしょうが、今だにこれほど多くの教員が遅くまで残って仕事をしていることが普通の学校職場が全国にあることが不思議で仕方がありません。

 確かにICTの活用も増え、教員の仕事の効率化も進んでいるのでしょうが、根本的な問題を解決する必要があるように思います。

 学校での仕事が少なくなっても、教員の多くは家に帰っても授業準備などを普通に行っています。特に、教員になりたての教員の負担はとても重いです。

 十分な研修もないまま大学を卒業後すぐに教員になり、一日4~6時間の授業を受け持つことになります。

 一応一年間の初任者研修が行われます、しかし、かえって、初任者研修そのものが初任者の負担を増している状況もあります。

 日本の多くの企業では、本格的な仕事に就くまでに、基本的な研修を行う期間があるのが一般的です。しかし、日本では、教員になり、子どもに授業をしながら、研修を受けるのが普通の姿です。

 多くの新任の教員の中には、今日もどうしようと不安感におそわれながら教員の仕事をしている方も少なくありません。

 そのような新任の教員でも安心して、教員の仕事ができるような根本的な改革が必要な気がします。

 一つの答えは、他国の教員養成制度にあるのかもしれません。日本では、4週間程度の教育実習をするのが一般的ですが、フィンランドなどでは、5か月程度の教育実習を行うこともあります。

 自信を持って授業ができるような指導力を教員になる前に育てるか、教員になってから十分に時間をかけて教員を育てるかする必要があるように思います。

 なお、フィンランドの教員養成制度については、次のページをお読みください。

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