教育課程の編成はとても大切です。
学校の中には、教職員の中だけで使う特別な用語がたくさんあります。
今回は、そのような教育用語の中の「教育課程」について書きます。
教育課程
🟠教育課程
<教育課程とは?>
教育課程(きょういくかてい)は、学校で使う特別な用語のひとつです。
教育課程は、カリキュラムとほぼ同じ意味です。
文部科学省のホームページには、教育課程について、次のように書いています。
教育課程とは、学校教育の目的や目標を達成するために、教育の内容を子供の心身の発達に応じ、授業時数との関連において総合的に組織した学校の教育計画であり、その編成主体は各学校である。
文部科学省・ホームページ:学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策
また、平成29年(2017年)告示の「小学校学習指導要領解説総則編」には、「教育課程の意義」として、次のように書かれています。
教育課程は,日々の指導の中でその存在があまりにも当然のこととなっており,その意義が改めて振り返られる機会は多くはないが,各学校の教育活動の中核として最も重要な役割を担うものである。教育課程の意義については様々な捉え方があるが,学校において編成する教育課程については,学校教育の目的や目標を達成するために,教育の内容を児童の心身の発達に応じ,授業時数との関連において総合的に組織した各学校の教育計画であると言うことができ,その際,学校の教育目標の設定,指導内容の組織及び授業時数の配当が教育課程の編成の基本的な要素になってくる。
小学校学習指導要領解説総則編
さらに、次のようにも書かれています。
教育課程は,国語, 社会,算数,理科,生活,音楽,図画工作,家庭,体育及び外国語の各教科,特別の教科である道徳,外国語活動,総合的な学習の時間並びに特別活動(以下「各教科等」という。)によって編成することとしており,学習指導要領においては,各教科等の目標や指導内容を学年段階に即して示している。
小学校学習指導要領解説総則編
簡単に言い換えると、教育課程(カリキュラム)とは、次のようなものです。
各学校で、学校長を中心に、4月の段階で、その一年間、小学校学習指導要領に書かれた教育目標を達成するために、どのような教材を、どのように教えるのかを定めた年間の計画書です。
それぞれの教科・領域には、最低限度の授業時数が定められています。
年間の計画ですので、本来は、きちんと明文化され、誰が見てもよくわかるようになっているものです。
しかし、教育現場で仕事をしたことのある教職員であれば、これが現実の姿と少し違っていることが多いことがあることもわかると思います。
教育課程をきちんと文章化した形で揃えている学校は、あまりないのかもしれません。
あったとしても、多くは、教科書会社が作成したものを、一応形式的に印刷するか、データーの形で揃えているだけです。
私自身長い間教員をしていましたが、年度当初の4月の段階で、毎時間の指導内容のあらましを書き、明確に教育課程を編成していたのは、ある教育系の大学の附属小学校に勤務していたときだけでした。
附属小学校に勤務していた時には、教員がぞれぞれの教科の専門家でしたので、4月の最初の段階で、きちんと他の学年の分も揃えていました。
もっとも、授業をする時には、年度当初の教育課程をそのまま実施するのではなく、絶えず、修正と変更を加えてよりよいものに変えていく努力もしていました。
<教育課程をどう進めていくのか>
小学校の初任者の時に、戸惑うことのひとつが、明確な教育課程や年間指導計画があるわけではないということです。
もしかすると、学校では、校長を中心にした教育課程を編成する必要があるということを知らない教員もいるかもしれません。
では、教員は、どのようにして教育内容を決めて、日々教えているのでしょうか。
簡単なことです。
多くの教員は、教科書会社の作成した教科書を使って、教科書会社の作った指導書などを参考に、教科書会社の作った年間指導計画に沿って授業をしているのです。
教科書会社の作成した指導書はとてもよくできているのですが、どうしても全国のどの学校でも使えるような平均的な作りになっています。
自分が勤務している学校の子どもの実態に合っているのかどうかなど考慮されて作られているわけではありません。
指導書には、授業の進め方などもていねいに書かれ、発問例や板書案なども載っているのですが、テレビ番組の台本ではありませんので、そこに書かれている子どもの反応例のようなことを子どもが話すことはまずありません。
1時間の中で、こんなにたくさんのことができるのか、と思われるようなことが書かれていることもあります。
<教育課程をもとに、指導をする上での問題点>
学校独自で熱心に教育に取り組み、教育過程をきちんと作成している学校が全くないわけではありません。
中には、教科書の配列に沿って、単元名だけを順に書くだけで、教育課程を編成したことにしている学校も多いです。
しかし、たとえ、きちんと教育課程が編成されていても、本来考慮されるべき2つの要素があまり考えられていません。
1つは、先程述べたように子どもの実態です。
子どもの実態は、同じ3年生を2年続けて受けもったとしても毎年違います。
ある程度の発達段階の類似点はありますが、昨年度の段階で、前担任の教員がどの程度きちんと子どもにていねいな教育を行なっていたかで、身についている能力には大いに違いがあります。
もう1つは、指導者である教員の実力です。
国語の年間指導時数は、3・4年生の場合、1年間に、45分の授業を最低245回以上することになっています。でも、考えてみるとわかることなのですが、20年前後教員をしているベテランの教員の教える45分の授業と、教員になりたてほやほやの教員の教える45分の授業の中身が全く同じわけはありません。
ベテランの教員は、45分間の授業をきちんと導入から工夫しますし、その時間の学習のめあてを板書し、何について考えるとよいのか、子どもにとってもわかりやすい、明確な発問をすることでしょう。
しかし、教員になりたての教員は、何を教えたらいいか迷っていると、休み時間に揉めた子どものが、不満を訴えてきます。少しだけと思って話を聞いているうちに、あっという間に15分が過ぎてしまい、残り30分でどう授業を進めていこうと思っているうちに、子どもは口々に私語を始めます。
子どもを叱りつつ、なんとかその時間の授業を進めていきます。そのような日々のくり返しです。
このような2つの学級の学力に、少しずつ差が生まれるのは不思議なことではありません。
たとえいくらよい教育課程を編成しようと、それがきちんと実行できなければ、その教育課程は絵に描いた餅です。
<教育課程を実施するために>
若い教員がこのようなことにならないために、どうすればいいのでしょうか。
明快な正解はないのかもしれません。
しかし、個人的には、1時間に1つの明確な指導内容を決め、とにかく、ゆっくりていねいに子どもに指導を重ねていくことです。
少しずつ教員としての力量を高め、よい授業になるように努力を続けていくことです。
少しずつ授業改善を図り、子どもが楽しいと思えるような授業を行う努力を重ねることです。
先輩教員の板書を少し覗かせてもらうだけでも参考になるかもしれません。
導入を少し工夫するだけでも、子どもは授業を楽しいと思うかもしれません。
子どもの頑張りや努力を認め、よいところを見つけほめることで子どもの意欲は増すかもしれません。
日本全国で頑張っておられる教員のみなさんの授業が、今日も、子どもにもわかりやすく、うまくいくことを望みます。
そのために、私の書くブログの記事が少しでも役に立つといいなあと思います。
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