教育者の言葉を紹介します。今日は、有田和正氏の言葉です。
人生を生きていると、時々、感心する言葉に出合うことがあります。
今回は、とても優秀な教師である有田和正氏の「教師は、どんな子どもでも好きにならなければ、教育は成立しない」という言葉を紹介します。
教師は、どんな子どもでも好きにならなければ、教育は成立しない
🟠教師は、どんな子どもでも好きにならなければ、教育は成立しない
<有田和正氏とは>
以前にも、有田和正氏の「工夫しながら勉強する教師は必ず伸びる」という言葉を紹介したことがあります。
有田和正氏は、筑波大学附属小学校で、社会科を中心に実践をする教師でした。
「追求の鬼を育てる」という言葉を作って、教育界に新しい風を吹かせたすぐれた教育者です。
調べがいのある「教材」を開発し、子どもに「はてな?」と思わせるような優れた「発問」や「指示」を行い、子どもを「追求の鬼」に変容させ、工夫された「板書」をして、子どもを育てていました。
多くの著書を執筆した有田氏ですが、私も次のような本を買い、勉強しました。
「追求の鬼を育てる」(有田和正著・明治図書・1989年)
「『はてな?』で育つ子どもたち」(有田和正著・図書文化・1989年)
「ノート指導の技術」(有田和正著・明治図書・1991年)
「新・ノート指導の技術」(明治図書・1996年)
「いま、必要なユーモア教育の技術」(毎時図書・2003年)
有田氏は、筑波大学附属小学校を退官後、愛知教育大学教授になりました。
有田氏は、たくさんの本を執筆されたのですが、ある時「『追求の鬼』を育てるシリーズ」という全20冊の本を刊行されました。
今回紹介する「教師は、どんな子どもでも好きにならなければ、教育は成立しない」という言葉は、このシリーズの1冊である「教育技術は人柄なりや?」(明治図書・1997年)という本の中に出てくる言葉です。
<有田氏の考える指導技術>
有田氏は、この著書の「教育技術は人柄なりや?」という章の中で、「指導技術」について次のように書いています。
わたしは、以前に「教育技術をギリギリまとめれば五つになる」ということを提案した。
1 発問・指示→子どもの反応を集約・焦点化する技術(後半の方がむずかしい)
2 資料活用ー資料収集・作成・提示の技術
3 板書の技術ー何を書き、何を書かないか(視覚は認識の六〇%を占める。板書は視覚に訴えるもの)
4 話術・表情・ゼスチャー等
5 人間性〈1~4は5の中に含まれるようにならなければダメ〉
教育技術は人柄なりや?
有田氏は、教育技術の大切さをよく知り、教育技術を高める努力をたくさんされた方です。
その人をして、「技術はとても大切なことだが、教育技術を支えるのは、人間性である」と語っておられるのです。
人間性とは、何でしょうか。
最近、とても悲しいことに、教員が子どもに対していじめを誘発するような言動をしたり、いじめが起こり子どもが自殺したり不登校になったりする事件が起こっても、素直にそのことを認めない教員や学校や教育委員会などの事例が報告されています。
多くの教師は子どもが好きで教師になっていますので、いつも子どものことを第一に考えています。しかし、残念なことに、子どもに暴言を吐いたり、冷たい態度で接したりする教師が全くいないわけではありません。
有田氏は、「人間性」について次のように書いています。
教師は概して真面目である。一生懸命子どもをよくしようと情熱を燃やしている。
こういう教師ばかりだと、子どもは面白くないだろうという。マジメ一点ばりのような教師は面白くない。だから、子どもに嫌われる。(中略)
「ぬけたふり」をしたり、「忘れたふり」をするのも、「教育技術」なのである。それを教育技術と見せないで「人間性」と見せるのである。「教育技術が人柄に見える」ようになった時、プロ教師になったと言えるのではないだろうか。
教育技術は人柄なりや?
有田氏の考えの深さがよくわかる言葉です。
<教師は、どんな子どもでも好きにならなければ、教育は成立しない>
「教師は、どんな子どもでも好きにならなければ、教育は成立しない」という言葉は、「人を好きになり、信頼できること」という小見出しをつけた文章の中に出てくる言葉です。
有田氏は、続けます。
どんなクラスを担任しても、一人や二人「虫が好かん」というような子どもがいる。わたしもこれで苦労した。
「虫が好かん」子どもがいる間、よいクラスはできないし、子どもたちとしっくりいかない。だから授業も面白くない。
どうやって「虫の好かん子ども」を好きになるか。
教育技術は人柄なりや?
さて、みなさんは、どう思いますか?
有田氏は、どのように「虫の好かん」子どもを好きになったのでしょうか。
この答えがさっといくつか思いつくようであれば、あなたは、とても「人間性のある教師」なのかもしれませんね。
有田氏がとった行動は次の3つです。
1.「虫の好かん子ども」を好きになる努力をすることが人間性を磨くチャンスである、と考えたこと。
2.毎日、その子のよいところをさがすこと。
3.他の子どもにも応援をたのみ、「A君の良いところを紙に書いてください」という手法をとったこと。
こうすると、子どもは有田氏の気づかない、その子どものよさをたくさん教えてくれたそうです。そして、有田氏はその子どもを好きになる努力をしたそうです。
ある時、A君が面白い発言をしました。有田氏はすかさず、次のように指示しました。
「今のA君の発言のどこかよいか、具体的に指摘しなさい!」
と一列を当てた。
前から順に、A君の発言のよいところを指摘した。
他の子どもが面白い発言をしたり、面白い作文を書いたりした時も今の方法でみんなに指摘させた。
すると、いつのまにか「友達のよいところを見つけること」がくせのようになってしまった。
こうなると、クラスの人間関係がすごくよくなる。同時に「先生は、ぼくたちのよいところばかり見つけて、ほめてくれる」ということになり、信頼も増した。
教育技術は人柄なりや?
有田氏ほどのとても優秀な教師でも悩み、戸惑い、どうすればいいのか考えたという話を聞くと、少し安心します。
私たちが日々、学級経営に悩み、子どもや保護者や同僚との人間関係に悩むことも仕方のないことだと思えてきます。
たとえ、うまくいかないことがあっても、少し努力をする視点を変えて、身近にいる人に応援を頼み、工夫をすることで、悩んだことが、いつの間にか自分の持ち味や指導技術の1つになっています。
自分と合わない子どもや同僚がいることは決して不思議なことではありません。
教師も人間ですから、好き嫌いがあっても当たり前のことです。
しかし、優れた教師は、そのことをそのままにしないで、視点を変えて、努力や工夫をするのです。
「どんな子どもでも好きにならなければ、教育は成立しない。」
みなさんは、いかがでしょうか。
どのような子どもでも好きになる努力や工夫をしていますか?
⭐️ ⭐️
他の名言や有田氏の本の紹介については、次のページも併せてお読みください。
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