「スーホの白い馬」の教材分析について知りたいです。
よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることが大切です。
しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。
そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。
今回は、「スーホの白い馬」です。
スーホの白い馬:教材分析
🟠スーホの白い馬:教材分析
この教材は、光村図書の2年下に掲載されています。
<作者>
大塚勇三(おおつか・ゆうぞう)作
リー・リーシアン絵
出典:「スーホの白い馬」(福音館書店・1967年
大塚勇三さんについて
1921年、旧満州の旧安東市(現・遼寧省丹東市)生まれです。東京帝国大学卒業です。児童分学者であり、翻訳者です。
1957年から1966年まで平凡社に勤めていました。米英、ドイツ、北欧の児童文学の翻訳をしてきました。「スプーンおばさん」シリーズや「小さなバイキング」などの翻訳が有名です。
2018年に亡くなりました。
<題名>
題名は「スーホの白い馬」です。
<設定>
いつ(時):むかし
どこ(場所):モンゴルの草原
だれ(登場人物):スーホ
<人物>
スーホ…………まずしいひつじかいの少年。はたらきもの。歌がうまい。
おばあさん……スーホのおばあさん。年をとっている。
白い馬…………スーホが見つけた馬。
とのさま………けいばの大会をひらく。スーホから白馬をとりあげる。
家来たち………とのさまの家来。
<あらすじ>
・中国の北にあるモンゴルは広い草原が広がり、ひつじや馬をかってくらしていた。
・モンゴルの馬の頭のついた馬頭琴というがっきには、こんな話がある。
・むかし、モンゴルの草原にスーホというひつじかいの少年がおばあさんとくらしていた。
・スーホはよくはたらき、歌もうまく、うつくしい歌声は遠くまでひびいた。
・ある日、おそくになって帰ってきたスーホは、白い子馬を持って帰って来た。
・子馬はすくすくそだち、体は雪のように白く、きりっとひきしまっていた。
・ある日、白馬は、ひつじをまもって、おおかみとたたかったので、スーホは馬をほめた。
・ある年の春、とのさまが、一等はむすめとのけっこんができる馬の大会をひらいた。
・とぶようにかけ、一等になったの白馬を見て、とのさまは白馬とのり手をよびよせた。
・ところが、つれてこたらたのが少年だとわかって、とのさまはやくそくをやぶった。
・とのさまは、スーホにたいし、ぎんか三まいで、馬をおいて、帰れと言った。
・スーホは、「けい馬に来たので、馬を売りにきたのではない」と言った。
・さからうスーホは、はらをたてたとのさまの家来たちになぐられ、白馬をとられた。
・白馬をとられたスーホはかなしみ、白馬のことばかり考えていた。
・すばらしい白馬を手に入れたとのさまは、白馬を見せびらしたくなった。
・おきゃくをよんで、白馬にのって見せようとすると、白馬はとのさまをおとした。
・はらをたてたとのさまは、つかまえられなければ、弓でころせ、とめいじた。
・白馬においつけない家来たちは、つぎつぎに、白馬に矢をはなった。
・白馬はきずをうけながらも、大すきなスーホのところに帰ってきたが、しんでしまった。
・スーホは、かなしさとくやしさのためにいくばんもねむらなかったが、あるばんねむった。
・白馬がゆめに出てきて、じぶんのほねやかわすじ毛で、がっきを作るようにねがった。
・スーホが白馬のからだで作ったこのがっきが、馬頭琴のはじまりです。
・スーホは、どこにでもこの馬頭琴をもっていき、白馬を思いながらがっきをひいた。
・やがて、馬頭琴は、モンゴルに広まり、ひつじかいたちは、うつくしい音に耳をすました。
<場面>
ここでは、このブログで紹介している5場面に分け、1場面を30字程度にまとめてみます。
⓪ モンゴルには、馬頭琴というがっきがあるが、それには、こんな話がある。
① スーホというまずしい少年がおばあさんといっしょに草原でくらしていた。
② ある日、スーホは、白い馬を見つけて、それからは白馬を大切にそだてた。
③ スーホはけいばの大会で一等になるが、とのさまに白馬をとられてしまう。
④ とのさまからにげだした白馬は、家来たちの弓矢にきずついてしんでしまう。
⑤ ゆめに出た白馬のねがいをきき、スーホは白馬で馬頭琴を作り、大切にした。
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<人物の会話>
この物語には、重要な会話がいくつかあります。
会話の中には、スーホの白馬に対する優しさがあふれた会話がたくさんあります。
1つめの会話は、白馬を見つけた時の会話です。
「帰るとちゅうで、子馬を見つけたんだ。あたりを見ても、もちぬしらしい人もいないし、おかあさん馬も見えない。ほうっておいたら、夜になって、おおかみに食われてしまうかもしれない。それで、つれてきたんだよ。」
2つめの会話は、白馬がおおかみからひつじをまもった時の会話です。
「よくやってくれたね。白馬。本当にありがとう。これから先、どんなときでも、ぼくはおまえといっしょだよ。」
3つめの会話は、馬が弓矢にやられてしにそうになった時です。
「白馬。ぼくの白馬。しなないでおくれ。」
これに対して白馬もゆめの中で、スーホにやさしく話しかけます。
「そんなにかなしまないでください。それより、わたしの、ほねやかわや、すじ毛をつかって、がっきを作ってください。そうすれば、わたしは、いつまでもあなたのそばにいられますから。」
<人物の行動>
スーホの行動にも白馬に対するやさしい行動がたくさんあります。
1つめは、スーホが白馬を育てる時の行動です。
・スーホが、心をこめてせわしたおかげで、子馬はすくすくとそだちました。
2つめは、おおかみとたたかった白馬に語りかける時の行動です。
・スーホは、あせまみれになった白馬の体をなでながら、兄弟に言うように話しかけました。
3つめは、白馬を思う時の行動です。
・白馬はどうしているだろうと、スーホは、そればかり考えていました。
4つめは、白馬がきずついたのを見た時です。
・スーホは、はを食いしばりながら、白馬にささっている矢をぬきました。
5つめは、白馬が死んだ時です。
・かなしさとくやしさで、スーホは、いくばんもねむらませんでした。
6つめは、馬頭琴を作った後です。
・スーホは、どこへ行くときも、この馬頭琴をもっていきました。
・それをひくたびに、スーホは、白馬をころされたくやしさや、白馬にのって草原をかけ回った楽しさを思い出しました。
<主題>
この物語の主題は、何でしょうか?
それは、スーホと白馬の心の交流だと思います。
死んでからも楽器になってスーホのそばにいたいと望む白馬と、その白馬のことをいつまでも大切に思って楽器をひくスーホの仲のよさがこの物語の主題だと思います。
<表現の工夫>
この物語文には、さまざまな表現の工夫があります。ここでは、1つだけ書きます。
それは、最初に、前書きがあることです。馬頭琴という楽器の話をして、その楽器ができた話をするという形で、物語が始まります。そして、物語の最後の方で、馬頭琴という楽器ができた理由がわかるようになっています。
・馬頭琴という楽器があります。がっきのいちばん上が、馬の頭の形をしているので、馬頭琴というのです。いったい、どうして、こういうがっきができたのでしょう。それには、こんな話があるのです。
・がっきはできあがりました。これが馬頭琴です。
<まとめにかえて>
この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。
教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。
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他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。
初雪のふる日 教材分析①に進む(内部リンク)
世界一美しいぼくの村 教材分析②に進む(内部リンク)
世界でいちばんやかましい音 教材分析③に進む(内部リンク)
かさこじぞう 教材分析⑦に進む(内部リンク)
大造じいさんとガン 教材分析⑨に進む(内部リンク)
物語文の教材研究については、次のページもお読みください。
物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む(内部リンク)
2年生の子どもが書いた物語
絵本 みくのふしぎなピアノに進む(内部リンク)
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