「スイミー」の教材分析について知りたいです。
よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることは大切です。
しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。
そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。
今回は、1・2年生の教科書に載っている「スイミー」の教材分析をします。
スイミー:教材分析
🟠スイミー:教材分析
この作品は、東京書籍と教育出版の1年生(下)の教科書に載っています。
そして、光村図書と学校図書の2年生(上)の教科書に載っています。
4つの教科書全てに載っていますが、扱われている学年が違います。
掲載されている時期が違いますので、漢字の扱いが少し違います。
<作者>
レオ・レオニさん作・絵
谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)さん訳
出典:「スイミー・ちいさなかしこいさかなのはなし」(好学社・1969年)
「Swimmy」(1963年・アメリカ合衆国での発表年)
レオ・レオニさんについて
1910年9月生まれです。オランダのアムステルダム人で生まれました。
アメリカ合衆国やイタリアで活躍したイラストレーター、絵本作家です。
彼は、ユダヤ人家庭に育ちました。14歳の時にイタリアに移住しました。その後、スイスのチューリッヒ大学で、経済学を学びました。
1939年、イタリアにファシスト政権が誕生すると、アメリカ合衆国に亡命しました。
広告代理店で働いた後、複数の新聞社で美術担当編集者やデザイナーとして働きながら、美術学校や大学で講義を行いました。
1959年、孫のために作った絵本「あおくんときいろちゃん」で絵本作家としてデビューしました。
1962年、イタリアに戻り、今回紹介する「スイミー」のような生き物を主人公とする絵本をおよそ40冊作りました。
1999年イタリアでなくなりました。
<題名>
題名は「スイミー」です。
この物語は、主人公の名前が題名になるタイプの物語です。
子どもの中には、小学校に入学する前後から「スイミングプール」に通う子どももいますので、泳ぐことに関係するお話かな、と思う子どもがいるかもしれません。
<絵/イラスト>
レオ・レオニは、この本で、絵の具とスタンプを使って、水中の世界を作りました。 海藻、水、触手の一部は、それぞれ、レース、布、ひもを使って描かれました。
<設定>
いつ(時):(書かれていない)
どこ(場所):ひろいうみのどこか
だれ(登場人物):スイミーと魚のきょうだい
<人物>
スイミー……主人公。きょうだいの中で一ぴきだけまっくろで、およぐのがはやい。
さかなのきょうだい……赤い小さい魚たち。
まぐろ……おそろしく、ミサイルみたいにつっこみ、魚たちを一ぴきのこらずのみこむ。
岩かげのさかなのきょうだい……スイミーのとそっくりの、赤い小さな魚たち。
<あらすじ>
・広い海で、小さな魚のきょうだいがくらしていた。
・みんな赤いのに、スイミーという名前の魚だけ、まっくろで、だれよりもはやくおよいだ。
・ある日、おそろしいまぐろが、つっこんできた。
・まぐろは、赤い魚たちをのみこんだ。スイミーだけにげた。
・スイミーは、くらい海のそこをおよいだ。こわく、さびしく、かなしかった。
・でも、海にはすばらしいものがあり、おもしろいものを見ると、元気をとりもどした。
・にじ色のくらげ、ブルトーザーのようないせえび、見たことない魚、こんぶやわかめ。
・うなぎは、長い。そして、やしの木みたいないそぎんちゃく。
・その時、スイミーは、岩かげに、スイミーのとそっくりの、さかなたちを見つけた。
・スイミーは、「出てこいよ。みんなであそぼう。」といった。
・赤い魚たちはこたえた。「だめだよ。大きな魚に食べられる。」
・「だけど、いつまでも、そこにじっとしているわけには行かない。」
・スイミーはかんがえて、かんがえて、かんがえた。
・そして、とつぜん、スイミーは、さけんだ。
・「みんないっしょにおよぐんだ。いちばん大きな魚のふりをして。」
・スイミーはおしえた。はなればなれにならないことと、もちばをまもること。
・みんなが、大きな魚みたいにおよげるようになったとき、スイミーは言った。
・「ぼくが、目になろう。」
・あさのつめたい水の中、ひるのひかりの中、みんなはおよぎ、大きな魚をおいだした。
物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む(内部リンク)
<場面>
物語を、このブログで紹介している方法で、場面を5つに分け、1場面を30~40字程度にまとめてみます。
① ひろい海に魚のきょうだいがいた。みんな赤いのにスイミーだけまっくろで、はやかった。
② ある日、まぐろが、小さい赤い魚たちを、のみこんだ。スイミーだけにげた。
③ スイミーはかなしかったが、くらげやうなぎなどを見て、元気をとりもどした。
④ スイミーは岩かげに魚のきょうだいを見つけ、魚にたべられないやりかたをかんがえた。
⑤ 大きな魚のふりをしていっしょにおよぎ、スイミーは目になった。大きな魚をおいだした。
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この物語は、一人ぼっちになったスイミーが仲間を見つけて、いちばん大きな魚のふりをして、大きな魚をおいだす話です。
<人物の会話>
スイミーが、新しく見つけた仲間の小さな魚にいう会話は、どれもとても重要です。
最初は、次の言葉です。
・「出てこいよ。みんなであそぼう。おもしろいものがいっぱいだよ。」
でも、「だめだよ。大きな魚にたべられてしまうよ。」と断られてしまいます。
・「だけど、いつまでもそこにじっとしているわけにはいかないよ。なんとかかんがえなきゃ。」
よく考えた後、スイミーはさけびます。
・「そうだ、みんないっしょにおよぐんだ。うみでいちばん大きな魚のふりをして。」
最後は、みんなが大きな魚みたいにおよげるようになった時に言います。
・「ぼくが、目になろう。」
<人物の行動>
新しい仲間を岩かげから出す方法を考えるときに、スイミーは、しっかりと考えます。
原文では、次のようになっています・
「Swimmy thought and thought and thought.」
thinkの過去形thoughtを3回繰り返して表現されています。
この文章を、翻訳した谷川俊太郎さんは、次のように訳します。
・スイミーはかんがえた。いろいろかんがえた。うんとかんがえた。
なかなか考えれたすばらしい訳文だと思います。
<主題>
この物語の主題は、何でしょうか?
「みんなが力を合わせると、困難なことに打ち勝てる」ということかもしれません。
みんなと見た目の違う人物でも、好奇心をもち、リーダーシップを発揮すれば、大活躍できることもあるという話かもしれません。
ケンブリッジ児童文学研究センター所長のカレン・コーツは、ある論文の中で、スイミーを例に、「子ども向けの本が大人の読者向けの文章と同じくらい知的要求が高いこと」を示しています。 彼女は、「スイミーのような本は、子どもにとっては単純なヒーローストーリーですが、大人は、表面的な物語を超えた社会や人間関係についての追加のメッセージを見ることができる」と考えています。
<表現の工夫>
この物語文には、さまざまな表現の工夫があります。
特に目立つのは、優れた比喩表現です。海の生き物をさまざまなたとえを使って表現しています。
・スイミー。一ぴきだけは、からす貝よりもまっくろ。
・おそろしいまぐろが、おなかをすかせて、すごいはやさで、ミサイルみたいにつっこんできた。
・にじいろのゼリーのようなくらげ。
・水中ブルトーザーみたいないせえび。
・見たことも魚たち。見えない糸でひっぱられている。
・ドロップみたいな岩から生えているこんぶやわかめの林。
・うなぎ。かおを見るころには、しっぽをわすれるほど長い。
・風にゆれるもも色のやしの木のようないそぎんちゃく。
物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む(内部リンク)
<まとめにかえて>
この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。
教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。
⭐️ ⭐️
私は、子ども用のブログ「よみもの」で子どもが読めるような簡単な文章で、海の生き物に関係する文章をいくつか作っています。よければ、お読みください。
他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。
ずうっと、ずっと、大すきだよ 教材分析029に進む(内部リンク)
かさこじぞう 教材分析007に進む(内部リンク)
スーホの白い馬 教材分析012に進む(内部リンク)
おにたのぼうし 教材分析018に進む(内部リンク)
モチモチの木 教材分析019に進む(内部リンク)
物語文の教材研究については、次のページもお読みください。
物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む(内部リンク)
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