「君たちに伝えたいこと」の教材分析について知りたいです。
よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることが大切です。
しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。
そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。
今回は、「君たちに伝えたいこと」です。
君たちに伝えたいこと:教材分析
🟠君たちに伝えたいこと:教材分析
この教材は、東京書籍の6年生の教科書に掲載されている説明文です。
この文章は、医師の日野原重明さんが、2009年に97歳のときに書いたものです。
<作者>
日野原重明(ひのはら・しげあき)作
出典:この説明文のために書き下ろしされた文章です。
日野原重明さんについて
1911年(明治44年)、山口県生まれです。日本の医師、医学者です。
京都帝国大学医学部を卒業しています。聖路加国際病院名誉院長、上智大学日本グリーフケア研究所名誉所長、公益法人笹川記念保健協力財団名誉会長などになっておられます。
2017年(令和29年)に亡くなりました。
<題名>
題名は「君たちに伝えたいこと」です。
この教材は、6年生の教科書の最後のあたりに出てきます。このことから、「君たち」というのは、「卒業を間近に控えた6年生の子どもたち」であることが予想されます。
<はじめとおわり>
○ はじめ
君が十二歳あたりだとすると、九十七歳を過ぎた私は、君のおよそ八倍で、君たちが生きた年月の八倍くり返しています。
○ おわり
君が生まれ、こうして同じときに生きていけるのはとてもうれしいことで、奇跡のようにすばらしいことです。
<形式段落>
形式段落は、全部で23段落です。
形式段落毎の簡単な内容は、次の通りです。
① 君が十二歳だとすると、九十七歳の私は、およそ八倍生きていることになる。
② 八倍長く生きている私から、君に「寿命」の話をすることにする。
③ 「寿命」とは、その人に与えられた、生きることについやせる「時間」である。
④ それは、生まれた時に平均寿命の時間をぽんと手わたされるようなものではない。
⑤ 寿命とは、大きな空っぽのうつわに生きた一瞬一瞬をつめこんでいくイメージだ。
⑥ ぼんやり過ごすか、何かに没頭して過ごすか、一人一人の自由に委ねられている。
⑦ 決められた時間をどう過ごすかは君しだいで、時間の中身を決めるのは君自身だ。
⑧ 時間は常に流れるが、君が時間に何をつめこむかで、時間の質が決まることになる。
⑨ 私の残り時間は、君に比べるとずっと短いが、精いっぱい生きたいと思っている。
⑩ 私は、寿命を自分のためだけでなく、ほかの人のために使う人間になりたい。
⑪ なぜなら、ほかの人のために時間を使うと、時間はいちばん生きてくるからだ。
⑫ 君が生まれた時に、周りの人がどんなに幸せに包まれたか想像したことはあるか。
⑬ 君が笑えば、ほほえみを返し、君が泣けば、君のもとにかけ寄ったことだろう。
⑭ 君の世話をすることはつかれることでも、精いっぱいつくしてくれたのだ。
⑮ 世話することで喜びがわくのは、自分の時間を君のために使っていたからだ。
⑯ ほかの人に自分の時間を使うことは、特別な喜びで心が満たされることだ。
⑰ 自分の時間をほかの人に使う理由がわかったと思うので、君にもおすすめしたい。
⑱ ここまで寿命の話と、自分の時間をほかの人に使えるよさについて話してきた。
⑲ 長い人生の間には、つらくて悲しい日があり、自分を消したいことがあるかもしれない。
⑳ でも、そんなときでも、忘れないでほしいことがある。
㉑ うれしいときも、悲しいときも、きえたなくなりたいときも、すべて「君」だ。
㉒ どんなときの自分もだいじにして、自分をいつも大好きだと思っていてほしい。
㉓ 君がいて同じときに生きていけることは奇跡のようにすばらしいことなのだ。
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説明文の教材研究(4) 段落関係と要点に進む(内部リンク)
<意味段落>
この説明文では、途中で1行開いているところが2か所あります。
そこで、3つの意味段落に分かれていると考えられます。
①~⑪段落:序論(はじめ)
寿命とは、どのようなものであるかを説明をした後で、時間をどう使うかで時間の質が変わってくること、できたら自分の時間をほかの人のために使うことが大切だとしています。
⑫~⑰ 段落:本論(なか)
君が生まれたときから、周りの人たちは君のために時間を使い、そのことでたくさんの喜びを感じることができた。自分の時間をほかの人に使うことは損なことではなく、特別な喜びで心が満たされることなので、君にもそうすることをおすすめします。
⑱~㉓段落:結論(おわり)
長い人生の間には、つらくて悲しい日があり、自分を消したいことがあるかもしれないが、どのようなときの君も君なので、どんなときの自分もだいじにして、自分をいつも大好きだと思っていてほしいです。
<大事な言葉>
年齢、寿命、平均寿命、没頭、 精いっぱい、純粋、お返し、奇跡
説明文の教材研究(5) 大事な言葉と要約に進む(内部リンク)
<表現の工夫>
「対比」
最初に、読者である君たちの年齢である「十二歳」と、書き手の日野原さんの年齢の「九十七歳」という2つの年齢を対比して書くことで、説明対象である「寿命」についての理解が明瞭に読み手に伝わるように工夫しています。
説明文の教材研究(7) 表現の工夫(対比)に進む(内部リンク)
「問いかけ」
この説明文では、次のような問いかけの文章があります。
・君が生まれたときに、君の周りにいた人たちがどんな幸せに包まれたかを、君は想像したことがありますか。
問いかけることで、読み手の知的欲求が高まるように工夫しています。
説明文の教材研究(8) 列挙 反復 問いかけに進む(内部リンク)
「かぎかっこの利用」
寿命、時間、君などの言葉にかぎかっこを用いることで、これらの言葉を強調したり、ていねいに定義づけたりしています。
<要旨>
この説明文では、寿命の意味、時間や寿命の使い方、時間を人のために使うこと、つらいことがあり、はずかしくて消えてなくなりたいときでも、自分をだいじにして、自分を大好きだと思うことの大切さについて書いています。
<まとめにかえて>
この教材分析は、このブログに載せている「説明文の教材研究」で取りあげたいくつかの視点に基づいて行ったものです。
教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。
⭐️ ⭐️
なお、説明文に関係する次の項目についても、併せて読んでください。
説明文の教材研究(1) 教材研究の視点に進む(内部リンク)
説明文の教材研究(2) はじめとおわりに進む(内部リンク)
説明文の教材研究(3) 文章の構成に進む(内部リンク)
説明文の教材研究(6) 引用に進む(内部リンク)
説明文の教材研究(9) 比喩 数量化 程度差に進む(内部リンク)
説明文の教材研究(10)なぜ教材研究をするのかに進む(内部リンク)
説明文の指導の仕方(1)指導計画に進む(内部リンク)
説明文の指導の仕方(10)に進む(内部リンク)
他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。
プロフェッショナルたち 教材分析⑰に進む(内部リンク)
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