「やくそく」という文章の教材分析について知りたいです。
よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることが大切です。
しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。
そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。
今回は、「やくそく」です。
やくそく:教材分析
🟠やくそく:教材分析
光村図書の1年生の教科書に掲載されています。
<作者>
小風さち(こかぜ・さち)さん・作
黒井健(くろい・けん)さん・絵
出典:この教科書のために書き下ろされたものです。
小風さちさんについて
1955年(昭和30年)東京都で生まれます。日本の童話作家です。
白百合女子大学文学部仏文学科を卒業しました。
1977年から1987年までイギリスのロンドン郊外に暮らしていました。
著書に、「ゆびぬき小路の秘密」(1994年・福音館書店)、絵本「トーマスのもくば」(1994年・福音館書店)、「とべ!ちいさいプロペラき」(2000年・福音館書店)、「ちいさいときはなんだった?」(1990年・福音館書店)などがあります。
小風さちさんの父親である松居直(まつい・ただし)さんは、福音館書店の編集者や社長、会長などをしていました。
<題名>
題名は「やくそく」です。
この題名から、誰かが何かの約束をしたお話だということがわかります。
<設定>
いつ(時):(明確に書かれていない)
どこ(場所):おおきな木
だれ(登場人物):あおむし
<人物>
あおむし……主人公。おおきな木にすむあおむし。
2ひきめのあおむし……あおむしにそっくりのあおむし。
3びきめのあおむし……あおむしたちにそっくりのあおむし。
おおきな木……あおむしたちがすむ木。
<あらすじ>
・おおきな木にあおむしがいて、まいにち木のはをたべて、ちょうになるひをまっていた。
・あるひ、木のはをたべていると、むしゃむしゃとおとがきこえた。
・じぶんとそっくりなあおむしが木のはをたべていた。
・「だめ、だめ。この木はぼくの木。ぼくのはっぱ。」あおむしがいうと、
「この木はわたしの木。わたしのはっぱ。」といった。
・にひきがいいあいをしていると、もりもりとおとがきこえた。
・自分たちとそっくりなあおむしが木のはをたべていた。
・「そのはっぱはぼくのだぞ。」「わたしのはっぱをたべないで。」そういうと、
「そんなことしるものか。」とさんびきめがいいかえした。
・そのとき、「うるさいぞ。」とおおきな木がぐらりとゆれていった。
・「みんな、もっとうえまでのぼって、そとのせかいをみてごらん。」
・あおむしたちは、木をのぼって、いちばんたかいえだまでつくと、めをまるくした。
・「ぼくら、こんなひろいところにいたんだね。」
「そらも、こんなにひろいんだね。」
・とおくにうみがみえる。あおむしたちはうみをしらない。
・「あのひかっているところはなんだろう。」
・さんびきは、えだにならぶと、せのびをした。
・「きれいだね。からだがちょうにかわったら、あそこまでとんでみたいな。」
「わたしも、あそこまでとんでみたい。」
「それなら、みんなでいこう。」
・さんびきのあおむしは、やくそくした。そして、くんねりおりていった。
・木のはが、さらさらそよいでいる。
<場面>
物語を、このブログで紹介している方法で、場面を5つに分け、1場面を30~40字程度にまとめてみます。
① おおきな木にあおむしがいて、まいにち木のはをたべて、ちょうになるひをまっていた。
② 木のはをたべていると、そっくりなあおむしが木のはをたべていたので、いいあいをした。
③ いいあいをしていると、もういっぴきのあおむしがいて、さんびきでいいあいになった。
④ 「うるさい」と木がいい、木のうえまでいくようにいったので、さんびきはむかった。
⑤ 木の上はひろく、さんびきは、ちょうになると、ひかるところにいくやくそくをした。
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このお話は、さんびきのあおむしが、じぶんの木だとけんかしていたが、木に「木の上に行くよう」に言われ、木の上で広い空を見て、遠くにある海を見ることで、ちょうになったら、一緒にそこに行こうとやくそくするお話です。
「やくそく」という題名のお話は、けんかしていたあおむしが、海に行くという「やくそく」をするように変わったというお話です。
<人物の会話>
このお話には3びきのあおむしと、木が出てきます。
最初3びきのあおむしは、この木はじぶんの木だと、次のような言い合いをしていました。
「だめ、だめ。この木はぼくの木。ぼくのはっぱ。」
「この木はわたしの木。だから、はっぱは、わたしのはっぱ。」
「そのはっぱはぼくのだぞ。」
「わたしのはっぱをたべないで。」
「そんなことしるものか。」
しかし、木に次のように言われます。
「みんな、もっと上までのぼって、そとのせかいをみてごらん。」
そして、ひろい空や海を見て、気持ちが次のように変わります。
「あのひかっているところは、なんだろう。」
「きれいだね、からだがちょうにかわったら、あそこまでとんでみたいな。」
「わたしも、あそこまでとんでみたい。」
「それなら、みんなでいこう。」
<人物の行動>
このお話の面白いところはなんでしょうか。それはさんびきのあおむしの行動です。
さんびきのあおむしは、「この木はじぶんの木だ」とけんかをしています。
しかし、木に言われて、木のうえまでのぼっていきます。
そこで、ひろい空と遠くに光る海を見つけます。そして、いつの間にか仲良くなって、一緒に海まで行くことをやくそくします。
それが、この題名にある「やくそく」の内容です。
本当にこんなことが起こるわけではありません。でも、とても夢のある楽しいお話です。
<主題>
この物語の主題は、何でしょうか?
けんかしていたあおむしが、木の上で、ひろい空を見ることで、けんかをやめて、一緒に海まで行く約束をするまで仲良くなることでしょう。
「ひろい視野から、自分や周りのものを見ると、仲良くできるようになることがある」ということかもしれません。
<表現の工夫>
この物語文には、さまざまな表現の工夫があります。
特に目立つのは、あおむしの食べる様子を表す次のような表現です。
・どこかから、むしゃむしゃ、むしゃむしゃと、おとがきこえます。
・どこかから、もりもり、もりもりと、おとがきこえます。
また、あおむしが木から降りてくる時の様子も面白いです。
・そして、くんねりくんねりおりていきました。
<まとめにかえて>
この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。
教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。
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他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。
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物語文の教材研究については、次のページもお読みください。
物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む(内部リンク)
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