列挙、反復、問いかけなどについて知りたいです。
説明文の教材研究の仕方について書いています。
今回は、「列挙、反復、問いかけ」についてです。
説明文の教材研究:列挙 反復 問いかけ
🟠説明文の教材研究:列挙 反復 問いかけ
説明文の教材研究の仕方について書いています。
今回は、「表現の工夫」の中の「列挙 反復 問いかけ」について書きます。
<表現の工夫>
説明文の筆者は、自分の考えや意見を読み手にわかりやすく伝えるために様々な工夫をして表現します。
私は、これらの表現のことを「表現の工夫」と名づけています。
大阪教育大学名誉教授の小田迪夫氏は、「説明文の授業」(田近洵一編・国土社・1996年)の中で、次のような文章を書いています。
説明表現の方法に関して指導者が知っておくべき、また学習者に気づかせるべき表現について、以下に列記しておく。
① 対比する述べ方によって、説明対象の特質が明瞭に読み手に伝わる。
② 同類の事例の列挙によって、述べようとすることの説得性が強まる。
③ 反復的表現によって、述べようとすることの強調点が読み手によく伝わる。
④ 問いかける言い方(疑説法)によって、読み手の知的欲求が高まる。
(⑤~⑧は、引用者により略)
説明文の授業
私は、小田迪夫氏の述べる「指導者が知っておくべき、また学習者に気づかせるべき表現」も表現の工夫であると考えています。
前回は①の「対比」について説明しました。
説明文の教材研究(7)表現の工夫(対比)に戻る(内部リンク)
今回は、②の「同類の事例の列挙によって、述べようとすることの説得性が強まる」ことと
③の「反復的表現によって、述べようとすることの強調点が読み手によく伝わる」ことと
④の「問いかける言い方(疑説法)によって、読み手の知的欲求が高まる」ことについて詳しく説明します。
これらの3つのことを説明するために、2つの説明文を使って具体的に説明してみます。
3つのことを説明するために、ふさわしい説明文の1つとして、以前、東京書籍の5年生の教科書に載っていた「森林のおくりもの」という説明文があります。
この説明文は、次のような書き出しで始まっています。
「日本は森の国、木の国です。国土の三分の二が森林です。」
そして、「森林のおくりもの」という題の説明を順番に述べていきます。
「木材の利用」「(木を加工した)紙の利用」「(木を燃やすことで使用した)火」「水」「山くずれや水害から平野を守ること」「(お米を作る上での)土と養分の供給」など、具体的な木材に始まり、防災の予防や米作りまで「森林のおくりもの」であると説きます。
森林のおかげで生活が豊かになっているということをくり返し述べています。
このように「同類の事例の列挙によって、述べようとすることの説得性が強ま」っているのです。
また、この説明文には、様々なところで、「森林のおくりもの」に関する表現が見られます。例えば、「森林のめぐみを精いっぱい利用して『木の暮らし』を築いてきました」「わすれてはならない森林のおくりもの」「木材と、紙度、火と―。それだけでも、なんとすばらしいおくりものでしょう」「森林はもっと別のおくりものをとどけてくれているからです」「森林のおかげです」「森林に守られながら」「森林のお世話になり続けてきたのです」など、あらゆる説明において、「森林のおくりもの」や「森林のおかげ」ということを「反復」して表現しています。
このように「反復的表現によって、述べようとすることの強調点が読み手によく伝わる」ようになっています。
その上、この説明文には、「問いかける言い方(疑説法)」がたくさん出てきます。例えば、「下流に下ろされた木材は、では、どのように使われたのでしょうか」「紙のない生活がどんものか、考えて見たことはありますか」「水は、上から下へ流れています。ですから、いつかなくなってもよさそうなものなのに、なくならないのはなぜでしょうか。」などです。
次から次へと投げかけられる問いかけ(疑問)についてなぜだろうと、読み進めることで筆者の考え(森林のおくりもの)が読者に浸透していくのです。
まさに、「問いかける言い方(疑説法)によって、読み手の知的欲求が高まる」ことになります。
3つのことを説明するために、ふさわしいもう1つの説明文として、現在、東京書籍の5年生の教科書に載っている「和の文化を受け継ぐー和菓子をさぐる」という説明文があります。
この説明文は、和の文化を受け継ぐものをして、「和菓子」を取り上げています。そして、「和菓子」は、「長い時を経て、それぞれの時代の文化に育まれ、いく世代もの人々の夢や創意が受け継がれてきた」ものであり、「おいしさばかりでなく、伝統的な和の文化を再発見させてくれるようなみりょくがある」ものだとしています。
この説明文の中で、「和菓子の歴史に変化が生まれ」たこととして、「外国から来た食べ物がえいきょうをあたえ」たことが述べられています。
「えいきょうをあたえたもの」として、①「飛鳥から平安時代」の「唐菓子」、②「鎌倉から室町時代」の「点心」、③「戦国時代から安土桃山時代」の「南蛮菓子」、④「江戸時代」の「さとう」、⑤「明治時代以降」の「洋菓子」を取り上げいます。
和菓子の歴史に変化が生まれたのは、外国から来た食べ物であることがくり返し述べられています。
このように「同類の事例の列挙によって、述べようとすることの説得性が強ま」っています。
また、この説明文には、様々なところで、「和菓子のよさ」に関する表現が見られます。
例えば、「和菓子には、子どもの成長や家族の健康など、人々の願いや思いが困られているものがあります」「ひしもちや草もちには、わざわいをよせ付けないようにという願いがこめられているといわれ、かしわもちには、子孫はん栄の願いが込められて」などの表現です。
このように「反復的表現によって、述べようとすることの強調点が読み手によく伝わる」ようになっています。
その上、この説明文には、「問いかける言い方(疑説法)」があります。例えば、「和菓子は、どのようにしてその形を確立していったのでしょうか。」「和菓子を作る職人がいても、それを食べる人がいなければ、和菓子はいずれなくなってしまうのではないでしょうか。」などです。
問いかけ(疑問)についてなぜだろうと、読み進めることで筆者の考え(和の文化を受け継ぐこと)が読者に浸透していくのです。
「問いかける言い方(疑説法)によって、読み手の知的欲求が高まる」ことになります。
なお、関係する次の項目についても、併せて読んでください。
説明文の教材研究(7)表現の工夫(対比)に戻る(内部リンク)
説明文の教材研究(9)比喩 数量化 程度差に進む(内部リンク)
説明文の教材研究(10)なぜ教材研究をするのかに進む(内部リンク)
説明文の教材研究(1) 教材研究の視点に戻る(内部リンク)
説明文の教材研究(2) はじめとおわりに戻る(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(1)に進む(内部リンク)
説明文の指導の仕方(1)に進む(内部リンク)
物語文の指導の仕方(1)に進む(内部リンク)
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