ゆうすげ村の小さな旅館 教材分析027

教材分析
つばさ
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ゆうすげ村の小さな旅館」の教材分析について知りたいです。

 よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることは大切です。

 しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。

 そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。

 今回は、「ゆうすげ村の小さな旅館ーウサギのダイコン」の教材分析をします。

ゆうすげ村の小さな旅館ーウサギのダイコン:教材分析

🟠ゆうすげ村の小さな旅館ーウサギのダイコン:教材分析

 この作品は、東京書籍の3年生の教科書に載っています。 

<作者>

 茂市久美子(もいち・くみこ)さん作

 菊池恭子(きくち・きょうこ)さん絵

 出典:「ゆうすげ村の小さな旅館」(講談社・2000年)

ゆうすげ村の小さな旅館」の元々の絵本には、5月から翌年4月にかけて、ゆうすげ村の小さな旅館で起こった出来事が、12編に分けて書かれています。今回とりあげる教材は、最初の「ウサギのダイコン」というお話です。出典の絵本と教科書の教材では、少し書きぶりが違うところがあります。教科書には、付録として、同じ絵本の中の「クマの風船」も掲載されています。

 ここでは、教科書の文章を元に教材分析します。

 茂市久美子さんについて

 1951年、岩手県新里村(現在の宮古市)で生まれます。日本の児童文学作家です。

 実践女子大学英文科卒業です。

 1992年に岩泉線を舞台にした「おちばおちばとんでいけ」で第3回ひろすけ童話賞を受賞しました。

 1992年に岩泉線を舞台にした「おちばおちばとんでいけ」で第3回ひろすけ童話賞を受賞しました。この他、「おちばおちばとんでいけ」(国土社・1991年)、「あなぐまモンタン」シリーズ(学研)、「つるばら村」シリーズ(講談社)などたくさんの本を書かれています。

 古里をイメージした作品が多いのは、幼少のころに曾祖母から聞いた昔話の影響と、少女時代に童話を読んで多感な時代を過ごし、アンデルセンのような物語を書くのが夢だったからだそうです。

 ヒマラヤに咲く青いケシの花を見るのが夢だった茂市さんは、夫の山岳写真家の藤田弘基さんと一緒にネパールやヨーロッパの山岳地方を訪ねて、「氷河と青いケシの国 : ネパール紀行」(あかね書房・1981年)、「私のヒマラヤ紀行」(恒文社・1994年)などの紀行文も出版しています。自然を素材にして、子どもにも大人にも感動を与える本を書き続けています。

<題名>

 題名は「ゆうすげ村の小さな旅館ーウサギのダイコン」です。

 題名からゆうすげ村の中の小さな旅館での出来事だとわかります。ウサギのダイコンと書かれていますので、ウサギがダイコンを作る話かな、と予想することができます。

<設定>

 いつ(時):わか葉のきせつ

 どこ(場所):ゆうすげ村のゆうすげ旅館

 だれ(登場人物):つぼみさん

<人物>

 つぼみさん……年とったおかみさん。

 お客さん……山に林道を通す工事の人たち。

 美月……つぼみさんに畑をかりている宇佐見のむすめ。

 宇佐美……つぼみさんに畑をかりている男の人。

<あらすじ>

・ゆうすげ村に、ゆうすげ旅館という小さな旅館があり、つぼみさんが一人で切りもりしている。

・わか葉のきせつ、山に林道を通す工事の六人がたいざいし、つぼみさんは大いそがしになる。

・年のせいで、一週間もすると、つぼみさんはつらくなってくる。

・ある日、つぼみさんは、道ばたで「手つだってくれる人いないかしら。」とひとり言を言う。

・よく朝、何本ものダイコンをもった美月が「お手つだいに来ました。」とやってくる。

・きょとんとしていると、「手つだってくれる人いないかな、と言ってたでしょ。」と言う美月。

・(へんねえ、だれにも会わなかったけど……。)と首をかしげるつぼみさん。

・「わたし、畑をかりてる宇佐見のむすめです。これ、畑で作ったウサギダイコンです。」

・それを聞いて、つぼみさんは、去年の秋のことを思い出した。

・ゆうすけ旅館では、山の中に畑を持っていたが、だんなさんがなくなった後、ほっていた。

・畑をかりたい、と宇佐見という男の人がやってきて、つぼみさんはかすことにした。

・「宇佐美さんのむすめさんなの。来てくれたんなら、手つだってもらいましょう。」

・むすめは、くるくるとよくはたらく。むかしから、手つだってきたみたいなのだ。

・つぼみさんは、体が楽になったばかりか、楽しく幸せな気持ちになった。

・午後になると、むすめは、たんぽぽの花とよもぎの葉っぱをつんできた。

・そのばんの旅館のこんだては、美月の作ったたんぽぽとよもぎのてんぷらと、ふろふきダイコンとタイコンサラダと、ブリのてりやきになった。

・ひょうばんになり、よく日も、そのよく日も、旅館のこんだては、ダイコンづくしになった。

・こんだてがダイコンづくしになったある日「近ごろ、耳がよくなったみたい。」と言うお客。

・それを聞き、つぼみさんもはっとし、自分の耳も急によくなった気がして、ふしぎに思う。

・二週間がすぎ、お客の仕事が終わり、旅館を引き上げることになる。

・むすめが「そろそろおいとまします。」と言うと、がっかりするつぼみさん。

・むすめは「ダイコンがとり入れどきで、父さんひとりじゃたいへんで、しゅうかくがおくれると、

 まほうのきき目がなくなってしまう。」と言う。

・「まほうのきき目って?」と聞くつぼみさん。

・「耳がよくなるまほうです。山のみんなは、ダイコンがとれるのをまってるんです。」

・(まあ。だから、お客さんもわたしも、耳がよくなったんだ。)とうなずくつぼみさん。

・つぼみさんがおきゅうりょうのふくろをわたそうとすると、むすめはおしかえす。

・「とんでもない。畑をかりているおれいです。」むすめはおじぎをすると、帰って行った。

・よく日、つぼみさんは町でむすめのために花がらのエプロンを買うと、山の畑に出かけた。

・畑について、つぼみさんの目にとびこんできたのは、二ひきのうさぎだった。

・(たいへん、ウサギが、畑をあらしている)と思ったが、そうでないことに気づいた。

・(そういうことだったの……。)つぼみさんは、畑のダイコンに見とれた。

・(山のよい空気と水で、ウサギがたんせいこめて育てたダイコン。おいしいはずだわ。)

・つぼみさんは、エプロンのつつみに「美月さんへ」と書いて畑におき、こっそりと帰る。

・よく朝、ゆうすげ旅館の台所の外に、一かかえのダイコンと手紙が置いてあった。

・『すてきなエプロン、ありがとうございました。おかみさんが来たのは、足音で分かったのですが、ウサギのすがたを見られたのがはずかしくて、知らんぷりしてしまいました。いそがしくなったら、また、お手つだいに行きます。どうぞ、お元気で。ウサギの美月より』

<場面>

 物語を、このブログで紹介している6場面に分け、1場面を30~40字程度にまとめてみます。 

① お客さんがたくさん来て大いそがしになり、手つだいがいないかとつぼみさんはつぶやく。

② ウサギダイコンをもった美月が、手つだいに来ました、とやって来て、りょかんを手つだう。

③ 美月のダイコンづくしの料理を食べたきゃくとつぼみさんの耳がよくなりふしぎに思う。

④ きゃくが帰り、美月も耳がよくなるまほうのダイコンをしゅうかくするために帰っていく。

⑤ 山の畑をたずねたつぼみさんは、美月とその父がウサギだったことに気づきこっそり帰る。

⑥ よく朝ダイコンと、おれいとはずかしかったこととまた手つだうと書かれた手紙がとどく。

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 この物語は、ゆうすげ旅館を一人で切りもみするつぼみさんが、いそがしくなったので、山の畑を借りる宇佐見のむすめである美月が表れ、しばらく旅館の仕事を手伝い帰っていくお話です。

 所々に、美月がウサギであることがわかるようなしかけが用意されていて、謎解きのような楽しさもある物語です。

<人物の会話・行動>

会話について

 つぼみさんと美月さんの会話はとても重要です。そこに、いくつか、美月さんがウサギであることが分かるヒントがあります。

・(つぼみさんは、)ついひとり言を言いました。 

せめて、今止まっているいるお客さんたちが帰るまで、だれか、手つだってくれる人はいないかしら。

・「おはようございます。わたし、美月っていいます。お手つだいに来ました。

 「えっ?」

 つぼみさんが、きょとんとしてると、むすめは親しげにわらいかけました。

ほら、きのうの午後、だれか手つだってくれる人がいないかしらって、言ってたでしょ。

へんねえ。買い物の帰り、だれにも会わなかったけど……。

・「わたし、こちらの畑をかりている宇佐見のむすめです。」

行動や人物描写について

 この物語では、行動や人物の描写でも、美月さんがうさぎであることがわかるヒントがあります。

・つぼみさんが、朝ごはんのかたずけをしていると、色白のぽっちゃりとしたむすめが、何本ものダイコンを入れたかごを持って、やってきました。

むすめは、くるくるとよくはたらきました

・むすめは、毎朝、とれたてのダイコンを持ってきて、せっせと、ダイコンの料理を作りました。

<主題>

 この物語の主題は、何でしょうか?

 「畑を借りてお世話になっているつぼみさんに対するウサギの恩返し」だと思います。

<表現の工夫>

 この物語文には、さまざまな表現の工夫があります。

 先程、「人物の会話や行動」でも書きましたが、この物語の最大の工夫は、美月がウサギであることをなんとなく分かるように書かれていることです。

 先ほど取り上げた以外にも、耳がよくなることなど、いろいろなヒントになるしかけが散りばめられていて、読んでいてとても楽しくなります。

<まとめにかえて>

 この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。

 教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。

⭐️ ⭐️

 他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。

初雪のふる日 教材分析①に進む内部リンク

世界一美しいぼくの村 教材分析②に進む内部リンク

世界でいちばんやかましい音 教材分析③に進む内部リンク

かさこじぞう 教材分析⑦に進む内部リンク

大造じいさんとガン 教材分析⑨に進む内部リンク

スーホの白い馬 教材分析⑫に進む内部リンク

おにたのぼうし 教材分析⑱に進む内部リンク

モチモチの木 教材分析⑲に進む内部リンク

海の命 教材分析⑳に進む内部リンク

 物語文の教材研究については、次のページもお読みください。

物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む内部リンク

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