教材研究の他の視点について知りたいです。
視点を決めて、教材研究をすることはとても大切です。
今回は、「人物の会話を読む」ことと「人物の行動を読む」ことにに焦点をあてて説明します。
人物の会話を読む
多くの物語では、会話文が出てきます。
物語によっては、地の文を除いて、会話文だけを読んでも、内容がわかることがあります。
例えば、東京書籍の2年生の教科書に出てくる「名前を見てちょうだい」というお話は、会話文だけを読んでも内容がよくわかります。
おかあさんからもらった刺繍の名前入りの帽子をめぐって奮闘する様子が会話文の中にいきいき描かれています。
物語によっては、登場人物が考えたり、思ったりしたことを全て声に出して言うように書かれているわけではありません。
しかし、作家は、重要な内容や考えや思いを、登場人物があえて言葉にするように、会話文にして書くことがあります。
会話文に使われる鍵かっこ「」は、強調の際にも使われる記号ですから、よく目立ちます。
会話文の前後には、文字を書かないきまりですから、物語を読んでいると、そこだけ浮かんで見えてきます。
会話文は、一般的には、会話する相手がいますが、時には独り言が書かれることがあります。
4年生の教科書に出てくる「ごんぎつね」の中で、ごんは、「おれと同じ、ひとりぼっちの兵十か。」とつぶやきます。
この言葉から、ごんの兵十に対する思いが伝わってきます。
5年生の教科書に出てくる「注文の多い料理店」の中では、二人の紳士の会話を追っていくと、二人の紳士の独りよがりで滑稽な様子が、読者によく伝わってきます。
会話だけに着目し、読むことで物語全体を見たときに見えなかったことが浮かび上がってくることがあります。
物語を楽しむという点では、物語を普通に読む方がよいのでしょうが、教材をよく理解するためには、あえてこういう読み方をすることも必要だと思います。
会話文を読む際に、着目するとよいことに、「○○○と言いました」の○○○の部分があります。
「ゆっくり」「あわてて」「大きな声で」「さけぶように」などと書かれています。
この部分に着目することで、会話文に込められた思いを知ることもできますから、音読する際に、その会話文をどのように読むといいのかということがわかります。
また、学習中にここに着目させることで、子どもたちは、自分が作文を書く際にも、「言いました」と書くだけでなく、「つぶやきました」「さけびました」などと書くことができるようになります。
物語文を学習した後に、「会話文を入れて作文を書きましょう。できれば、『○○○と言いました。』の○○○を工夫して書きましょう」と指示して書かせることで、作文がぐっと引き締まってくることがあります。
人物の行動を読む
会話文と同じように登場人物の心の動きや気持ちがわかることが多いものに、登場人物の「行動」があります。
声に出して言わなくても、行動の中にその人物の思いや気持ちがこめられていることがよくあります。
2年生の教科書に出てくる「かさこじそう」では、雪の中に埋もれかけているじそうさまに、じいさまは、売り物のかさをかぶせたり、自分の手ぬぐいをかぶせたりします。
このじいさまの行動から、じいさまは本当に優しい人だということがよくわかります。
人物の行動だけを抜き出し、なぜそのような行動をしたのか考えることで、その人物の思いや考えや気持ちや性格などがよくわかることがあります。
行動だけに着目する読みをすることも教材分析の際には、有効な読みの方法だと思います。
低学年では、基本的に気持ちを中心に読まないことになっています。
学習指導要領では、次のように書かれています
イ 場面の様子や登場人物の行動など,内容の大体を捉えること。
第1学年及び第2学年の内容/2 思考力,判断力,表現力等/C 読むこと
また、中学年では、次のように書かれています。
イ 登場人物の行動や気持ちなどについて,叙述を基に捉えること。
第3学年及び第4学年の内容/2 思考力,判断力,表現力等/C 読むこと
教材研究の際には、人物の行動にも注目するとよいと思います。
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物語文の教材研究については、次のページもお読みください。
物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む(内部リンク)
教材の教材分析については、次のページをお読みください。
初雪のふる日 教材分析①に進む(内部リンク)
世界一美しいぼくの村 教材分析②に進む(内部リンク)
世界でいちばんやかましい音 教材分析③に進む(内部リンク)
かさこじぞう 教材分析⑦に進む(内部リンク)
大造じいさんとガン 教材分析⑨に進む(内部リンク)
スーホの白い馬 教材分析⑫に進む(内部リンク)
おにたのぼうし 教材分析⑱に進む(内部リンク)
モチモチの木 教材分析⑲に進む(内部リンク)
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