こわれた千の楽器 教材分析037

教材分析
つばさ
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こわれた千の楽器」の教材分析について知りたいです。

 よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることは大切です。

 しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。

 そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。

 今回は、3年生の教科書に載っている「こわれた千の楽器」の教材分析をします。 

こわれた千の楽器:教材分析

🟠こわれた千の楽器:教材分析

 この作品は、東京書籍の4年生の教科書に載っています。  

<作者>

 野呂昶(のろ・さかん)さん作

 天野恭子(あまの・きょうこ)さん絵

 出典:「こわれた1000のがっき」(カワイ出版・1993年刊)

 野呂昶さんについて

 1936年(昭和11年)生まれです。日本の詩人、児童文学者です。

 岐阜県生まれです。

 詩集に「おとのかだん」(教育出版センター・1983年)、「野呂昶詩集」(いしずえ・2003年などがあります。

 滋賀県湖南市教育委員会委員長をされていたこともあります。

<題名>

 題名は「こわれた千の楽器」です。

 千というたくさんの楽器がこわれたのか、こわれるのかが描かれた物語だと予想されます。

 ここでいう千というのが、千ぴったりなのか、たくさんという意味なのか興味がわきます。

 なお、私が子ども用に作っている「よみもの」で、「楽器」について簡単な文を書いています。よければ、お読みください。

楽器に進む外部リンク・よみもの

<設定>

 いつ(時):あるとき。(最初の場面では書かれていない)

 どこ(場所):ある大きな町のかたすみの楽器倉庫。

 だれ(登場人物):たくさんのこわれた楽器。

<人物>

 月……夜の町を見守っている。

 チェロ……こわれている。

 ハーブ……こわれている。

 たくさんの楽器……こわれている。

<あらすじ>

・町のかたすみに楽器倉庫があった。そこには、こわれたたくさんの楽器がねむっていた。

・ある日、月が倉庫を見て「ここは、こわれた楽器の倉庫だな。」と言った。

・楽器は目を覚ました。チェロは「こわれていません。休んでいるんです。」と言った。

・「これは失礼。」月は、きまり悪そうに、まどからはなれた。

・月が行くと、チェロは「うそを言った。こわれているのに、こわれていないと。」言った。

・「自分がこわれた楽器なんて、だれも思いたくないよ。」とハーブが言った。

・「もう一度えんそうがしたい。」とホルンが言った。

・「えんそうがしたい。」とトランペットが言った。

・「こんなにこわれていると、えんそうなんてできないよ。」とたいこが言った。

・「できるかもしれない。こわれた十の楽器で、一つの楽器になろう。」とビオラが言った。

・「名案だわ。」とピッコロが言った。

・「それならぼくにもできるかもしれない。」ともっきんが言った。

・「やろう。」「やろう。」といろいろな楽器が言った。

・楽器たちは、それぞれ集まって練習を始めた。

・毎日毎日練習が続けられた。音が出ると、「できた。」とよろこんだ。

・ある夜のこと、月は、楽器倉庫の上を通りがかった。

・すると、どこからか音楽が流れてきた。「きれいな音。だれのえんそうかな。」と月が言った。

・月が音に近づくと、前にのぞいたことのある楽器倉庫で、千の楽器がえんそうしていた。

・おたがいにおぎない合って、音楽を作っていた。

・「ああ、いいなあ。」と月はうっとりききほれた。ときどき思い出しては、光をふき上げた。

<場面>

 物語を、このブログで紹介している方法で、場面を5つに分け、1場面を30~40字程度にまとめてみます。 

①  町のかたすみに楽器倉庫があった。そこには、こわれたたくさんの楽器がねむっていた。

②  月が倉庫を見て「こわれた楽器の倉庫か」と言うと「こわれていない」とチェロが言った。

③  月がさった後、こわれた楽器たちは、みんなで一つの楽器になろうと話し合った。

④  それから、こわれた楽器たちは、毎日毎日、えんそうの練習を続けた。

⑤  月は、楽器倉庫で千の楽器がえんそうをしているのを聞き、うっとりと聞きほれた。

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<人物の会話>

 この物語で、会話をするのは、月といろいろな楽器です。ここでは月を中心に見ていきます。

 月は次のように言います。

・「おやおや、ここはこわれた楽器の倉庫だな。

 それを聞いた楽器は目を覚まし、チェロが「こわれていない、休んでいるだけ」と言います。

・「いやいや、これはどうも失礼。」月は、きまり悪そうに、まどからはなれていきました。

 月は最後にも出てきます。

・「なんときれいな音。だれがえんそうしているのだろう。」と言い、前にのぞいたことのある楽器倉庫で、千の楽器がえんそうしていることに気づきます。そして、

・「ああ、いいなあ。」とうっとり聞きほれました。

<人物の行動>

 この物語のおもしろさの一つは、人間でない月や楽器が、まるで人間のように話したり、行動したりすることです。一般的には、このような表現を「擬人法と言います。

 月の行動は、次のようなものです。

月が倉庫の高まどから中をのぞきました

月は、きまり悪そうに、まどからはなれました

月は、楽器倉庫の上を通りかかりました

月は、音のする方へ近づいていきました

月は、音楽におし上げられるように、空高く上っていきました

月は、うっとり聞きほれました

ときどき、思い出しては、光の糸を大空いっぱいにふき上げました

 千の楽器もいろいろな行動をします。

今までねむっていた楽器たちが目を覚ましました

チェロが、まぶしそうに月をながめて言いました。そして、あわてて、ひびわれたせなかを隠しました

楽器たちは、それぞれ集まって練習を始めました

おどり上がってよろこびました

千の楽器がいきいきと、えんそうに夢中でした

<主題>

 この物語の主題は、何でしょうか?

「あきらめなければ、いつからでも再起できる」ということかもしれません。

「友と協力すると、不可能に思えることが可能になる」ということかもしれません。

「みんなで協力することの大切さ」ということかもしれません。

 指導する先生や子どもが、それぞれの主題を見つけるといいと思います。

<表現の工夫>

 子どもに身につけてほしい作文の技術に会話文の横にある「言いました」という表現を少し工夫することがあります。会話文であることを示す「言いました」と書くだけでなく、「小さな声で」や「うれしそうに」という言葉をそえたり、「つぶやきました」「さけびました」という言葉に変えたるすることで、表現はとても豊かになります。このような表現を子どもにさせるためには、このような表現があることを意識させることはとても大切です。

 この物語には、そのような表現の工夫があります。

チェロは、しょんぼりとして言いました

すぐ横のハーブが、半分しかないげんをふるわせて言いました

ホルンが、すみの方から言いました

バイオリンやコントラバス、オーボエ、フルートなども、立ち上がって言いました

<まとめにかえて>

 この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。

 教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。


⭐️ ⭐️

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 物語文の教材研究については、次のページもお読みください。

物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む内部リンク

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