まいごのかぎ 教材分析052

教材分析
つばさ
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まいごのかぎ」の教材分析について知りたいです。

 よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることは大切です。

 しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。

 そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。

 今回は、「まいごのかぎ」です。

まいごのかぎ:教材分析

🟠まいごのかぎ:教材分析

 この物語文は、光村出版の3年上に掲載されています。

<作者>

 斉藤倫(さいとう・りん)作

 陣崎草子(じんさき・そうこ)絵

 出典:この教科書のために書き下ろされました。

 斉藤倫さんについて

 1969年(昭和44年)秋田県で生まれます。日本の詩人、児童絵本作家です。

 2004年に「手をふる手をふる」(あざみ書房)でデビューしました。

 2014年に「どろぼうのどろぼん」(福音館書店)で長篇作品のデビューをしました。この作品で、第48回児童文学者協会新人賞と、第64回小学館児童出版文化賞を受賞しました。

 主な作品に、「せなか町から、ずっと」(福音館書店)、「とうだい」(福音館書店)、「えのないえほん」(講談社)などがあります。

<題名>

 題名は「まいごのかぎ」です。

 この題名から、自分のかぎをなくしたのか、かぎを拾ったけれどもだれのかぎかわからない、というようなことが予想されます。どのようなかぎか興味が湧く題名です。

<設定>

 いつ(時):夏、学校帰り

 どこ(場所):海ぞいの町

 だれ(登場人物):りいこ

<人物>

 りいこ……この物語の主人公。学校帰りの女の子。かぎをひろう。

 友だち……図工の時間、りいこのかいたうさぎを見てわらう。

 さくらの木……かぎを回すと、動き出し、どんぐりを落としはじめる。

 ベンチ……かぎを回すと、動いて、ひるねをはじめる。

 あじの開き……かぎを回すと、動いて、空をとびはじめる。

 バス……バスていのかぎを回ると、集まりダンスをはじめる。

 うさぎ……バスの中からりいこに向かって手をふる。

<あらすじ>

・りいこは学校帰り道で、図工の時間のことを思い出して、しょんぼりした。

・学校のまわりの絵をかくとき、こうしゃがさびしかったので、うさぎをつけたした。

・友だちがわらったので、はずかしくなって、あわててうさぎをけした。

・頭の中にいたうさぎがいなくなった気がして、うさぎに悪いことをしたと思った。

・ふと目に入ったガードレールの下のヤブガラシの中で、何かがちらっと光った。

・りいこが拾い上げると、夏の日ざしをすいこんだような、こがね色のかぎだった。

・りいこは落とした人がこまっていると思い、帰り道とは別の方角の交番に向かうことにした。

・いくつもの家をながめながら、どんな人が落としたのかなと、あれこれ思いうかべた。

・通りぞいの大きなさくら木は、青々とした葉ざくらになっていた。

・木のねもとを見て、りいこはびっくりした。四角い金具がみきについていて、あながある。

・「さくらの木の落としたかぎ」まさかと思いながら、さしこんでみるとすいこまれ回せた。

・「あっ」思わず、さけんだ。木が、ぶるっとふるえた。そして木につぼみがついた。

・そして、ぱらぱらとふってきた。「どんぐりだ」りいこは、悲鳴をあげた。

・どんぐりをランドセルでふせぎ、あわててかぎをぬいた。さくらの木は、葉さくらにもどった。

・りいこは後ずさりしながら「びっくりした。さくらの木のかぎじゃなかったんだ」と言った。

・公園があった。今日は、通り抜けるだけ。そのほうが、海べの交番への近道になる。

・ところが、緑色のベンチの手すりに、小さなあなが空いていた。

・「あれもあぎあなに見えるけど」りいこは、通りすぎようとして、ふと立ち止まる。

・「でも、もしかしてー」カチンとかぎを回す音が、あたりにひびく。

・ベンチは、四本のあしをのばし、大きな犬のようにせなかをそらした。

・「わあ」りいこは、ひっくり返りそうになった。ベンチが歩き出した。

・公園のまん中の日だまりにねそべり、ねいきを立てはじめた。

・りいこはかぎをぬいた。ベンチはうらめしそうにふり返ってから、元いた所に帰った。

・「ベンチのかぎでもないよね。歩くなんて、おかしいもの。」

・りいこはためいきをついて、公園を後にした。大きな国道の向こうで海が光っている。

・しおのかおりがする。道のわきにいたが立ててあり、魚の開きが一面にならんでいた。

・あじのひものを作っていた。中の一ぴきに、円いあなが空いているのに気づいた。

・「お魚に、かぎあななんて」へんだなと思いながら、すいこまれるようにかぎをさした。

・カチャッ。たちまち、あじの開きはかもめみたいにはばたくと、ふわふわうかびあがった。

・あわててとびつき、かぎを引きぬいた。開きは、元のいたに、ぽとりと落ちた。

「あぶない。海に帰っちゃうとこだった。」早く交番にとどけよう。

・海岸通りをいそぎはじめたとき、ふとバスていのかんばんが目に入った。

・「バ」の点が、なぜか三つある。その一つが、かぎあなに見えた。「どうしよう」

・そのとき、点の一つが、ぱちっとまたたいた。「これで、さいごだからね。」

・りいこは、かんばんの前でせのびをしていた。カチンと音がしてかぎが回った。

・ところが、何もおこらない。ほっとしたような、かっかりしたような気持ちで時こく表を見た。

・「あっ」と言った。数字がありのようにぞろぞろ動いている。とんでもない時間になっている。

・「すごい」と目をかがやかせた後で、りいこは、すぐに自分がいやになった。

・りいこはかぎをぬいたが、時ごく表の数字は、元にもどらない。

・りいこはこわくなって、にげるようにかけだした。

・国道のずっと向こうから、車の音が聞こえてくる。

・ふり向くと、バスが何十台も、おだんごみたいにぎゅうぎゅうになって、やって来る。

・「わたしが、時こく表をめちゃくちゃにしたせいだ。」どうしよう。

・きみょうなことに、つらなっていたバスが、りいこの前で止まり、クラクションを鳴らす。

・そして、リズムに合わせて、くるくると、向きや順番を変え、ダンスをはじめた。

・「なんだか、とても楽しそう」そして、りいこははっと気づく。

・あのさくらも、楽しかったのかも。ベンチもねころびたいし、あじも空をとびたかったのかも。

・「みんなも、すきに走ってみたかったんだね。」

・しばらくして、バスはまんぞくしたように、いつもの路線に帰っていった。

・そのとき、一つのまどの中に、りいこはたしかに見た。

・図工の時間にけしてしまった、あのうさぎが、うれしそうに手をふっているのを。

・りいこもうれしくなって、大きく手をふり返した。

・かぎは、いつのまにか、かげも形もなくなっていた。

・りいこは、夕日の中で、いつまでも、その手をふりつづけた。

<場面>

 ここでは、このブログで紹介している6場面に分け、1場面を40字程度にまとめてみます。

① 図工の時間にけしたうさぎを思い出し落ちこむりいこは、かぎを拾い届けることにした。

② さくらの木のねもとにかぎをさしてみると、さくらがどんぐりを落としはじめた。

③ 公園のベンチにかぎをさしてみると、ベンチが日だまりでひるねをはじめた。

④ 海ぞいのあじのひものの一つにかぎをさしてみると、かもめみたいに飛びはじめた。

⑤ バス停にかぎをさしてみると。たくさんのバスが自由に動き、ダンスをはじめた。

⑥ もどるバスの中に手をふるうさぎを見つけたりいこはいつまでも手をふりつづけた。

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 この物語は、りいこが不思議なかぎを拾うお話です。りいこが、いろいろなところにあるかぎあなに、かぎをさしこむと次々に不思議なことが起こるお話です。やがて、りいこは、いろいろなものにいろいろな願いがあることに気づきます。

<人物の会話・行動>

会話について

 この物語では、すべての会話がりいこのひとりごとです。

 誰かに話すというよりも、自分の気持ちを確かめるように会話は続きます

 1つめは、図工の時間を思い出してつぶやきます。

「またよけいなことをしちゃったなあ。」

 そこにないうさぎをかいて友だちに笑われたので、せっかくかいたうさぎを消してしまったからです。

 2つめはかぎを見つけた時です。

「何だろう。」「落とし物かな。」

 3つめは、さくらの木にかぎあならしきものを見た時の会話です。

「あれは、何だろう。なんだか、かぎあなみたい。」「もしかして、さくらの木の落としたかぎだったりして。」「あっ。」「どんぐりだ。」「びっくりした。」「こんなことになるなんて。さくらの木のかぎじゃなかったんだ。」

 4つめは、ベンチにかぎあならしきものを見た時の会話です。

「なんだか、あれもかぎあなに見えるんだけど、そんなはずないよね。」「でも、もしかしてー。」

「わあ。」「ベンチのかぎでもないよね。歩くなんて、おかしいもの。」

 5つめは、あじの開きにかぎあならしきものを見た時の会話です。

「お魚に、かぎあななんて。」「あぶない。海に帰っちゃうとこだった。」

 最後は、バスていのかんばんにかぎあならしきものを見た時の会話です。

「どうしよう。」「これで、さいごだからね。」「あっ。」「すごい。」「あれ、どうして。」「わたしが、時こく表をめちゃくちゃにしたせいだ。」「なんだか、とても楽しそう。」「みんなもすきに走ってみたかったんだね。」

 会話文を読むだけでも、りいこの気持ちの変化がよくわかります。

行動について

 この物語では、普段動くことのないいろいろなものの行動がとても面白いです。

 1つめは、さくらの木です。

・木が、ぶるっとふるえたのです。そうして、えだの先にみるみるたくさんのつぼみがついたかと思うと、ぱらぱら何かがふってきました。

 2つめは、ベンチです。

・ベンチは、四本のあしをぐいとのばし、大きな犬のように、せなかをそらしました。

・日かげにいたベンチは、のそのそ歩き出すと、公園のまん中の日だまりにねそべり、そのままねいきを立てはじめました。

・ベンチは体をふるわせ、りいこの方を、なんだかうらめしそうにふり返ってから、元いた所に帰って行きました。

 3つめは、あじの開きです。

・あじの開きは、小さなかもめみたいに、はばたきはじめます。

・あじは、目の前でふわふわとうかび上がりました。

 4つめは、バスたちです。

・バスが何十台も、おだんごみたいにぎゅうぎゅうになって、やって来るのです。

・つながってきたバスが、りいこの前に止まり、クラクションをファ、ファ、ファーン、とがっそうするように鳴らしたのです。

・そして、リズムに合わせて、くるくると、向きや順番をかえはじめました。

・しばらくして、バスはまんぞくしたかのように、一台一台といつもの路線に帰って行きました。

 最後は、うさぎです。

・そのとき、一つのまどの中に、りいこはたしかにみたのです。図工の時間にけしてしまった、あのうさぎが、うれしそうにこちらに手をふっているのを。

<主題>

 この物語の主題は、何でしょうか?

 物語の最初、りいこはしょんぼりしています。「またよけいなことをしちゃったな。」と思います。よけいなこととは、図工の時間にそこにいないうさぎをつけ足し、友だちにわらわれたので、けしてしまったことです。

 でも、子どもは自分の気持ちに正直に思ったことを言ったり、したりするものです。

 最後の場面で、りいこはバスのダンスに見とれながら気づきます。

「なんだか、とても楽しそう。」

 そして、さくらの木も、ベンチも、あじも、バスも、自由に遊んだり、ねころんだり、空をとんだり、すきに走ってみたりしたかったのだなと思います。

 そして、それはりいこもきっと同じだったんです。その時、りいこはまた、けしたはずがうさぎをバスのまどの中に見つけます。そうです。りいこは本当は、うさぎを消したくなかったんです。

 この物語は、自分のしたいことをしたいようにして楽しむことの大切さを伝えています。ついつい私たちは、他の人の目を気にして、したいことができなかったりあきらめてしまったりすることがあります。

 したいことを自由にすることの大切さに気づくことが、この物語の主題かもしれませんね。

<表現の工夫>

 この物語文には、さまざまな表現の工夫があります。

比喩表現

・どんぐりの雨

・ベンチは、四本のあしをぐいとのばし、大きな犬のように、せなかをそらしました。

・あじの開きは、小さなかもめみたいに、はばたきはじめます。

・バスが何十台も、おだんごみたいにぎゅうぎゅうになって、やって来るのです。

倒置法

 普通の文の書き方ではなく、言いたいことを強調するために、文の順番をいれかえることです。

・そのとき、一つのまどの中に、りいこはたしかにみたのです。図工の時間にけしてしまった、あのうさぎが、うれしそうにこちらに手をふっているのを。

<まとめにかえて>

 この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。

 教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。

⭐️ ⭐️

 物語文の教材研究については、次のページをお読みください。

物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む内部リンク

 他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。

きつつきの商売 教材分析033に進む内部リンク

モチモチの木 教材分析019に進む内部リンク

すいせんのラッパ 教材分析036に進む内部リンク

おにたのぼうし 教材分析018に進む内部リンク

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