はりねずみと金貨 教材分析060

教材分析
つばさ
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はりねずみと金貨」の教材分析について知りたいです。

 よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることが大切です。

 しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。

 そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。

 今回は、「はりねずみと金貨」です。

はりねずみと金貨:教材分析

🟠はりねずみと金貨:教材分析

 東京書籍の3年生の教科書に掲載されています。

<作者>

 ウラジミール・オルロフ

 田中潔(たなか・きよし)訳

 バレンチン・オリシバング絵

 出典:「はりねずみと金貨」(偕成社・2003年)

 ウラジミール・オルロフさんについて

 1930年生まれです。ソビエト連邦時代に、ロシアからウクライナへと領土上の帰属が変わったクリミヤ地方で活躍した児童文学作家、詩人、劇作家です。

 多くの戯曲が舞台化されています。多くの作品がアニメーション映画化もされています。

 1999年に亡くなりました。

<題名>

 題名は「はりねずみと金貨」です。

 題名通り、はりねずみと金貨に関するお話だということがわかります。

<設定>

 いつ(時):冬

 どこ(場所):森のおくの草むら

 だれ(登場人物):はりねずみ

<人物>

 はりねずみ……主人公。金貨を見つける。

 りす……ほしきのこをくれる。

 からす……くつを作ってくれる。

 くも……くつ下をくれる。

 くまの子……はちみつをくれる。

<あらすじ>

・森のおくの草むらに、小さな金貨が落ちていた。古ぼけた金貨は雨にあらわれ光っていた。

・森の小道を行く、はりねずみが見つけ、拾い上げ、次のように思った。

 (わしも年をとったし、冬じたくもたいへんだ。ほしきのこでも買い、のんびりしよう。)

・そして、あちこちさがしましたが、ほしきのこはどこにも売っていなかった。

 (せっかく金貨があるのに、きのこが見つかなないとは……。)

・木のうろからりすが顔を出し言った。「こんにちは、そのきらきらしているのなあに。」

・「こんにちは、これは金貨。それで冬ごもりのために、きのこを買おうと思ってな。」

・「なあんだ。きのこがほしなら、わたしが、ただであげるわよ。」

・そう言うと、りすは、ほしきのこいっぱいのふくろを投げてくれた。

・「たっぷりめしあがって。金貨は、くつに使うといいわ。ぼろぼろだから。」

・はりねずみはりすにおれいを言うと、くつをさがすことにした。

・あたりを見回しながら進むはりねずみにからすが声をかけた。

・「どうしたね、じいさん、落とし物かい。」

・「くつ屋をさがしているのじゃ。金貨で、くつを買おうと思って。」

・「くつを買うだって? くつぐらいおれが作ってやるよ。」

・そういうと、からすは、どんぐりの実にあなをあけ、くつを作ってくれた。

・そして、「その金貨は、あたたかいくつ下にでも使いなよ。」と言った。

・はりねずみは、からすにおれいを言うと、くつ下をさがすことにした。

・あたりを見回しながら進むはりねずみにくもが声をかけた。

・「おじいさん、何をさがしているのさ。」

・「くつ下をさがしているのじゃ。お金はあるが、どこにも売っていなくて。」

・「それなら、おいらがあんだのをあげるよ。自分用に作ったら大きすぎて。」

・はいてみると、ぴったり。はりねずみは、くもにおれいを言うと、家をめざした。

・そこで、だいじなことを思い出した。(はちみつじゃ。せきが出たときないと止まらん。)

・あきらめかけたとき、「おじいさあん」とよぶ子グマの声が聞こえてきた。

・「ぼく、冬ごもりするんだ。春になったら、またいろんなお話聞かせてね。」

・そして、はりねずみに「お母さんから」とはちみつのつぼを手わたした。

・子ぐまが見えなくなるまで見おくっていると、そこは今朝金貨を拾ったあたりだった。

・はりねずみは手の中の金貨を見ながら、考えた。

・(金貨を取ってきなよと、みんな言うが、何のため。ひつようなものはみんなある。)

・はりねずみは、金貨を道ばたに置き、わが家に向かった「だれかの役に立つかもしれん。」

<場面>

 物語を、このブログで紹介している方法で、場面を6つに分け、1場面を30〜40字程度にまとめてみます。 

① はりねずみが、森の草むらで金貨を拾い、冬じたくに使おうと考えた。

② ほしきのこをさがしていると、りすが、ほしきのこをただでくれた。

③ 次に、くつをさがしていると、からすが、くつを作ってくれた。

④ さらに、くつ下をさがしていると、くもが、くつ下をくれた。

⑤  はちみつをわすれたと思っていると、子ぐまがはちみつをくれた。

⑥ 金貨はいらなくなったので、だれかの役に立つかもと、道ばたにおいておくことにした。

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 このお話は、金貨を見つけたはりねずみが、金貨を冬ごもりのしに使おうとしたが、森のなかまが次々にいろいろなものをくれて、必要なものがそろったので、金貨がいらなくなり、もとの場所に戻すというお話です。

<人物の会話>

 このお話に出てくるはりねずみに声をかける生き物はみんな親切です。

 困っていそうなはりねずみに、声をかけ、進んでいろいろなものをくれます。

 最初に声をかけたりすは、次のように話を進めます。

「こんにちは、おじいさん、そのきらきらしているのは、なあに。」

「なあんだ、きのこがほしいなら、わたしがただであげるわよ。」

「たっぷりめしあがって。その金貨は、くつに使うといいわ。おじいさんのは、もうぼろぼろだもの。」

 次に声をかけたからすも、次のように話を進めます。

「どうしたね。じいさん。落とし物かい。」

「くつを買うだって? どうして。くつぐらいおれが作ってやるよ。」

「どうだい、いいくつだろう。できたてのぴかぴかさ。さあさあ、はいてみなよ。」

「そいつはよかった。その金貨は、ほら、あったかいくつ下にでも使いなよ。冬はもうすぐだからね。」

 3番めに声をかけたくもは、次のように話を進めます。

「おじいさん、何をさがしてるのさ。」

「なんだ、それなら、おいらがあんだのをあげるよ。自分用に作ったら大きすぎてさ。おじいさんにはちょうどいいかも。ほらほら、はいてみなよ。」

「どういたしまして。かぜを引かないようにね。そのお金はどこかにしまっときなよ。またいつか、役に立つかもしれないしさ。」

 最後に、声をかけた子ぐまは、次のように話を進めます。

 自分が冬ごもりをするので、お休みを言いに来たこと、春になると、またお話を聞かせてほしいこと。そして、お母さんからと、はちみつのつぼをさしだします。

 みんな自分のしたことに対して対価をもらおうとせずに、おじいさんを気づかう言葉を伝えます。

<人物の行動>

 このお話の面白いことは、よく似た親切が何回も何回も繰り返されることです。

 りすは、ほしきのこをただでくれます。

 からすは、くつを作ってくれます。

 くもは、自分用に作ったくつ下を、少し大きいからとただでくれます。

 くまの子も、お母さんからと、はちみつをくれます。

 人々の親切で、冬ごもりのしたくはすっかりそろってしまいます。

 でも、実は、はりねずみのおじいさんも親切な人です。こう書いています。

小さなくま。生まれたときからよく知っていて、あそびに来るたび、はりねずみが、お話を聞かせてやっている子ぐまです

<主題>

 この物語の主題は、何でしょうか?

 「人と人との親切のつながりがあれば、みんな幸せに生きていける」ということかもしれません。

 ここに出てくる人物は、なぜかとても親切です。

 このような親切な人がたくさんいることなんて、実際の人生ではあまりないように思うのですが、でも、そのような人がたくさんいれば、みんな幸せに生きていけるかもしれないな、と思います。

 主人公のはりねずみもまた親切な人です。子ぐまにいつもお話を聞かせてやっているからです。

 普段から、誰に対しても親切にしているので、みんなから親切にされたということもかもしれません。

<表現の工夫>

 この物語文には、さまざまな表現の工夫があります。

 特に目立つのは、よく似た表現の繰り返しです。

 はりねずみは、いつも親切に対してきちんとお礼を伝えます。

・「ありがとう、りすさんや。年よりを気づかってくれて。」

 はりねずみは、りすに頭を下げました。

・「ありがとう、からすさん。すばらしいくつじゃ。」

 はりねずみは頭を下げました。

・「ありがとう、くもさんや。すばらしいくつ下じゃ。」

 はりねずみは、くもにれいを言いました。

・子ぐまが見えなくなるまで、じっと見おくっていたはりねずみ

 よく似ていますが、少しずつ表現の仕方を変えています。これも表現の工夫のひとつといえるでしょう。

<まとめにかえて>

 この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。

 教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。


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 他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。

すいせんのラッパ 教材分析036に進む内部リンク

おにたのぼうし 教材分析018に進む内部リンク

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ふきのとう 教材分析034に進む内部リンク

 物語文の教材研究については、次のページもお読みください。

物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む内部リンク

 2年生の子どもが書いた物語

絵本  みくのふしぎなピアノに進む内部リンク

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