教育者の言葉を紹介します。今回は、東山紘久氏の言葉です。
本を読んでいると、時々、感心する言葉に出合うことがあります。
今回は、東山紘久氏の「登校拒否は心の病気である」を紹介します。
登校拒否は心の病気である
🟠東山紘久氏とは?
東山紘久氏は、1942(昭和17)年、大阪市に生まれ、京都大学教育学部を卒業されました。
カウンセラーであり、臨床心理学者であり、臨床心理士です。大阪教育大学や京都大学、帝塚山学院大学の大学や大学院の教授をされていました。京都大学の副学長をされていたこともあります。
アメリカのカール・ロジャーズ研究所に留学され、帰国後、たくさんの臨床心理士を育てるとともに、大阪教育大学にもおられましたので、教師になる学生にもたくさんの教えを残しました。著書も多く、カウンセラー関係の本、聞く技術の本、子育ての本などたくさんの本を書かれています。
残念なことに、2021(令和3)年3月に亡くなられました。
あたたかい笑顔が印象に残る素晴らしい先生です。大学の講義内容が、具体的でわかりやすく、感心させられたことが何回もありました。大学の授業は退屈なことも多いのですが、いつも次はどんな話なのかわくわくしながら講義を聞いていました。
一度、愛に関する定義をお聞きしたことがあります。
「愛とは、汚いことを共通することができる関係である」とのことでした。例えば、赤ちゃんの便は汚いものです。でも、親は、子どもへの愛があるので、いつも喜びながらおむつを取り替えることができます。唾も一般的には汚いものです。でも、恋人同士のキスは、お互いへの愛があるので、唾がお互いの口を移動しても、汚いものではなく、甘いものへと変化します。
このような感心させられる、心躍る講義を聞く日々は楽しいものでした。
🟠登校拒否、不登校とは?
登校拒否は、学校嫌い、学校恐怖症と言われることもあります。今では、不登校の方が、一般的な呼び方になっています。
登校拒否よりも、不登校という言葉が一般的になったのは、文部科学省がこちらの言葉を使うことになったからです。
登校拒否、不登校の問題は、長い間、日本の大きな社会問題、教育問題です。
文部科学省では、「不登校児生徒」を、次のように定義しています。
何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるため年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由によるものを除いたもの
文部科学省 不登校の現状に関する認識
文部科学省では、1998(平成10)年から、不登校児童生徒として調査を開始しています。
文部科学省では、2003(平成15)年に、「不登校の対応について」という報告書をまとめています。
同じく、2019(令和元)年にも、「不登校児童への支援の在り方について」という通知を、各教育委員会に向けて出しています。
1998(平成10)年、小中学校の不登校人数は、合計で127,697人でした。2020(令和2)年現在の小中学校の不登校人数は、合計で198,127人です。
児童生徒1000人あたりに占める小中学校の不登校人数は、1998(平成10)年の10.6人から2020年(令和2年)の20.5人とほぼ倍増しています。
前年度から減少する時期もありましたが、調査開始の1998(平成10)年から、20年以上にわたり増加傾向にあります。
🟠登校拒否は心の病気である
冒頭に紹介した「登校拒否は心の病気である」という言葉は、次の著書に出てくる言葉です。
「母親と教師がなおす 登校拒否 母親ノート法のすすめ」(創元社・1984年)
この本の中で、東山紘久氏は、次のように書いています。
「登校拒否児はなぜ学校に行かないのか?」答えは簡単である。病気だからいけないのである。病気が治れば、たとえ、親や教師や周囲の者が、行かなくてもよいと言っても、本人は、身体や心がむずむずして、行きたくなる。人間誰だって、40度の熱があれば、学校へ行きたくても、仕事に行きたくてもいけない。起きあがることさえ困難である。しかし、熱が下がり、身体が元に戻りだすと、布団の中でじっとなどしておれるものではない。何かしたくなる。すっかり良くなれば、自分本来の仕事をしたくなるものである。
母と教師がなおす 登校拒否 母親ノート法のすすめ 第1部第2章より
一般的に、登校拒否(不登校)の子どもに接した時、保護者も私たち教師も、それらの子どもが病気だとは思えません。
何か嫌なことから逃げていたり、さぼっていたりしているように感じます。大人の働きかけで事態は好転し、子どもが学校に行くようになるように思います。
登校拒否(不登校)の原因は、何だろうと、探ろうとします。そして、その原因を取り除こうと、子どもを問い詰め、問題を解決しようと考えます。
しかし、カウンセラーでもあり、臨床心理士として、多くの人々の心の問題に、真摯に耳を傾け、問題の解決に寄り添って来られた東山浩久氏は、「登校拒否(不登校)は心の病気である」と説明します。
そして、多くの大人は、子どもが腎臓病のような体の病気になったら、ゆっくり療養するように言い、優しく接するのに、心の病気である登校拒否(不登校)の場合は、病気だと認めることができないゆえに、もっと頑張れ、努力が足りないからだと、厳しく冷たく接することが多いと述べます。
この本では、母親を中心とする家族や教師が、登校拒否(不登校)の子どもをどう理解し、具体的にどう対応すればいいのかを、具体的な会話の仕方を例示して書いています。
この本のエッセンスである母親のノート法について、次のページに書いています。
母親ノート法(1)母子の会話パターンに進む(内部リンク)
母親ノート法(2)快・不快と評価基準に進む(内部リンク)
母親ノート法(3)議論しないことに進む(内部リンク)
母親ノート法(4)説教しないことに進む(内部リンク)
母親ノート法(5)否定的感情の処理に進む(内部リンク)
母親ノート法(6)代弁しないことに進む(内部リンク)
母親ノート法(7)要求をきくことに進む(内部リンク)
母親ノート法(8)親の心、子どもの心に進む(内部リンク)
母親ノート法(9)戸惑う親の心に進む(内部リンク)
母親ノート法(10)不登校の理由に進む(内部リンク)
母親ノート法(11)教師の思いに進む(内部リンク)
現在、この本は、Amazonの電子書籍Kindl版として購入することができます。
Amazonの購入できるページに進む(外部リンク)
学校や学級に登校拒否(不登校)の子どもがいて困っている教師、家庭に登校拒否(不登校)の子どもがいて、どう接していいかわからない保護者のみなさんは、ぜひ、この本を読んでほしいと思います。
きっと、登校拒否(不登校)の子どものことが少しわかり、心が少し軽くなり、具体的にどう接すればいいかわかります。
なお、この本には、姉妹本ともいえる本があります。
「母親ノート法のすすめ 子育て」(東山紘久・東山弘子著・創元社・1992年)です。
こちらは、子育てについて書かれた本ですので、もっと多くの教師、保護者にお勧めです。
なお、教育相談に関係する内容については、次のページをお読みください。
教師による教育相談に進む(内部リンク)
要求の高いタイプの保護者への対応の仕方に進む(内部リンク)
なお、他の名言については、次のページをお読みください。
説教の効果はその長さと反比例するに進む(内部リンク)
子どもはすばらしい先生ですに進む(内部リンク)
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