「モチモチの木」の教材分析について知りたいです。
よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることは大切です。
しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。
そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。
今回は、「モチモチの木」の教材分析をします。
モチモチの木:教材分析
🟠モチモチの木:教材分析
この作品は、光村図書、東京書籍、学校図書、教育出版、4社の3年生(下)の教科書に載っています。
表記はほとんど同じですが、掲載されている時期により漢字の扱いが少し違います。その上、場面に小見出しを使っている出版社と番号を使っている出版社があります。さらに、会話文の表記の仕方が少し違います。会話文を文章の中に入れている表記と、必ず改行している表記があります。
ここでは、東京書籍の教科書を元に教材分析することにします。
<作者>
斎藤隆介(さいとう・りゅうすけ)さん作
滝平二郎(たきだいら・じろう)さん絵
出典:「ベロ出しチョンマ」(理論社・1967年)
斎藤隆介さんについて
1917年、東京都で生まれます。日本の児童文学作家です。本名は隆勝(たかかつ)さんです。
明治大学専門部文科を卒業した後、北海道新聞、秋田魁新報の記者になりました。新聞記者のかたわら、著作活動を始めます。
短編童話集の「ベロ出しチョンマ」で、1968年第17回小学館文学賞を受賞しています。
斎藤さんの作品は、秋田地方の方言やオノマトペをたくさん用いて、民話の体裁をとりながらも、ほとんどは、創作童話です。
最初は、子ども向けではなく、地元の教員や生徒の父母に向けた作品でしたが、画家滝平二郎さんの独特な挿絵を用いた絵本を作ったことによって、次第に有名な児童文学作家になりました。滝平さんとは長い間、創作活動を共に続けることになりました。
<題名>
題名は「モチモチの木」です。この題名だけでは、このお話の主人公はわかりません。もしかすると、モチモチの木について書かれた説明文か、もちもちの木の出てくる物語なのかと思うかもしれませんね。
<設定>
いつ(時):真夜中
どこ(場所):家の中
だれ(登場人物):豆太、じさま
<人物>
豆太……おくびょうな子ども。五つ。
じさま……豆太のおじいさん。
豆太のおとう……くまにやられて死んでしまう。
医者様……じさまがはらいたになり、なおしてくれる。
<あらすじ>
・豆太はおくびょうで、五つになるのに、一人でせっちんに行けない。
・せっちんは外にあるし、外には大きなモチモチの木もあるのでこわい。
・真夜中に小さな声で、じさまをよぶと、じさまは目をさましてくれる。
・じさまは、自分と二人でくらす豆太のことがかわいかったから。
・死んだ豆太のおとうもじさまもきも助だから、豆太がおくびょうなのはふしぎだ。
・モチモチの木は、豆太が名づけたでっかい木だ。
・秋になると、実をつけ、実をこなにして、ふかして食べるととてもうまい。
・昼間はいばってさいそくできるが、夜になるとこわくてしょんべんも出なくなる。
・じさまは、しょんべんが出るように、豆太をもって「しいい」と声をかけてくれる。
・霜月二十日の今夜、モチモチの木に灯がともると、じさまが話をしてくれる。
・それは山の神様のお祭りで、一人の勇気のある子どもしか見ることができない。
・じさまもおとうもみたそうなので自分も見たいが、こわくて見れそうにない。
・豆太ははじめからあきらめて、じさまに鼻をおしつけて、ねむってしまう。
・豆太は真夜中にくまのうなり声が聞こえて、目をさました。
・うなっていたのは、はらがいたくなったじさまだったし、いたみはましていった。
・豆太は、医者様を呼ぶために、半道あるふもとの村まで走り出した。
・足がいたくて、寒くて、こわかったけど、じさまが死ぬほうがもっとこわかった。
・なきなきついたふもとの医者様は、わけを聞くと、豆太をおぶい小屋へ上がった。
・豆太は、とちゅう、医者様のせなかで、月が出ている中、雪がふるのを見た。
・豆太は、もう一つふしぎなものを見た。「モチモチの木に、灯がついている!」
・けれど、医者様は、「トチの木の後ろに月が出て、えだの間に星が光り、そこに雪が降っているからあかりがついたように見える」と言った。
・豆太は、医者様の手つだいでいそがしくて、そのあとのことは知らない。
・次の朝、はらいたのなおって元気になったじさまは、豆太に言った。
・「おまえは、神様の祭りを見た。一人で夜道を医者様呼びに行けるほど勇気のある子だ。自分で自分を弱虫だなんて思うな。やさしささえあれば、やらなきゃならないことは、きっとやるもんだ。」
・それでも、じさまが元気になると、豆太はじょんべんにじいさまを起こしたとさ。
<場面>
この物語は、最初から作者によって、5場面に分けられています。
このブログで紹介している5場面に分け、1場面を30~40字程度にまとめてみます。
物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む(内部リンク)
① 豆太は、五つになるがおくびょうもので、夜中に一人でせっちんにも行けない。
② 小屋の前には大きなモチモチの木があり、おいしい実がとれるが、夜はこわい。
③ 霜月二十日の夜モチモチの木に灯がともるそうだが、こわくて見れそうにない。
④ じさまがはらいたになり、医者様を呼びに行った帰り、モチモチの木の灯を見る。
⑤ じさまは豆太を勇気のある子だとほめてくれるが、まだ一人でせっちんに行けない。
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この物語は、おくびょうな豆太とモチモチの木の話です。豆太という名前の少年は、おくびょうで夜に一人でトイレに行くこともできません。
霜月二十日の夜、モチモチの木に灯が灯るそうですがこわくて豆太には見れそうにありません。
でも、真夜中に急にじさまのはらいたが起こり、こわいけれど、じさまが死んでしまうほうがもっとこわいので、夜中、医者様をむかえに行き、その帰りにモチモチの木の灯を見ることになります。
勇気のある子どもだとじさまはほめてくれますが、まだ一人でトイレに行けない豆太です。
<人物の会話・行動>
○ 会話について
じさまの豆太を思う会話はとても重要です。3場面と5場面にあります。
3場面のじさまの会話は、次の通りです。
「霜月二十日のうしみつにゃあ。モチモチの木に灯がともる。起きてて見てみろ。そりゃあきれいだ。おらも、子どものころに見たことがある。死んだおまえのおとうも見たそうだ。山の神様のお祭りなんだ。それは、一人の子どもしか見ることができねえ。それも勇気のある子どもだけだ。」
5場面のじさまの会話は、次の通りです。
「おまえは、山の神様の祭りを見たんだ。モチモチの木には灯がついたんだ。おまえは一人で夜道を医者様をよびに行けるほど勇気のある子どもだったんだからな。自分を自分で弱虫だなんた思うな。人間、やさしささえあれば、やらなきゃならねえことは、きっとやるもんだ。それを見て他人がびっくりするわけよ。ははは。」
○ 行動について
この物語では、豆太のやさしい行動が強く光ります。
・とうげの下りの坂道は、一面の真っ白いしもで、雪みたいだった。しもが足にかみついた。足から血が出た。豆太はなきなき走った。いたくて、寒くて、こわかったからなぁ。
でも、大すきなじさまが死んじまうほうが、もっとこわかったから、なきなきふもとの医者様へ走った。
<主題>
この物語の主題は、何でしょうか?
本当の勇気というのは、どういうものなのかということでしょう。
豆太は、やさしく勇気のある子どもです。
<表現の工夫>
この物語文には、さまざまな表現の工夫があります。
○ 場面ごとに名前がついていること(書いていない教科書もあります。)
・おくびょう豆太
・やい木ぃ
・霜月二十日のばん
・豆太は見た
・弱虫でもやさしけりゃ
○ 民話風の表現
・せっちん、しょんべん、きもすけ、青じし、霜月、うしみつ、よいの口、ねんねこ
・しょんべんにじさまを起こしたとさ。
○比喩表現
・ほっぺたが落っこちるほどうまいんだ。
・じさまは、ころりとたたみに転げると、歯をくいしばって、ますますすごくうなるだけだ。
<まとめにかえて>
この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。
教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。
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他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。
初雪のふる日 教材分析①に進む(内部リンク)
世界一美しいぼくの村 教材分析②に進む(内部リンク)
世界でいちばんやかましい音 教材分析③に進む(内部リンク)
かさこじぞう 教材分析⑦に進む(内部リンク)
大造じいさんとガン 教材分析⑨に進む(内部リンク)
スーホの白い馬 教材分析⑫に進む(内部リンク)
おにたのぼうし 教材分析⑱に進む(内部リンク)
物語文の教材研究については、次のページもお読みください。
物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む(内部リンク)
2年生の子どもが書いた物語
絵本 みくのふしぎなピアノに進む(内部リンク)
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