「雪の夜明け」の教材分析について知りたいです。
よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることは大切です。
しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。
そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。
今回は、5年生の教科書に載っている「雪の夜明け」の教材分析をします。
雪の夜明け:教材分析
🟠雪の夜明け:教材分析
この作品は、光村図書の5年生の教科書に載っています。
<作者>
今村葦子(いまむら・あしこ)さん作
出典:「ゆきのよあけ」(童心社・2012年)
今村葦子さんについて
1947年、熊本県で生まれます。日本の児童文学作家です。
武蔵野美術短期大学卒業です。
「ふたつの家のちえ子」を書いて作家としてデビューします。多くの童話を書いています。
<題名>
題名は「雪の夜明け」です。この題名を読むと、雪が降っていますので、冬の日の夜明けの出来事だろうと予想がつきます。
<設定>
いつ(時):冬の夜
どこ(場所):森
だれ(登場人物):野うさぎの子
<人物>
野うさぎの子……独りぼっちのうさぎの子。
母さん……うさぎの母。夏からはなればなれになる。
きつね……野うさぎをおそう動物。
ふくろう……野うさぎをおそう動物。
野ねずみ……森に住む動物
いたち……野ねずみをおそう動物。
女の子……野うさぎに合図を送ってくれる。
<あらすじ>
・冬の森の静かな夜、雪の巣あなで、野うさぎの子が独りでうずくまっていた。
・母うさぎとは、きつねにおそわれた夏からはぐれたままだ。
・母を待っても待ってももどってこない。
・その時から、独りで草をさがして食べ、安全だと思った野いばらのしげみでねむる。
・冬になると、雪の下のかれ草を食べ、雪の巣あなで、ねむる。
・毛づくろいも、独りで覚え、足音を聞きのがさないように、耳の毛づくろいをする。
・きつねやふくろうからにげるため、後ろ足や体の毛もきれいになめる。
・夜がふけ、雪の白さが広がり、夜の雪の森はひっそりと静まりかえる。
・野ねずみの足音がした後、いたちが追いかけ、悲鳴があがり、森はまた静まりかえる。
・真夜中、月が出て、木のかげが長くのびる。ふくろうはえものをまちぶせている。
・しのび寄る足音があり、きつねのにおいが、ただよってくる。
・野うさぎの子は、体中の毛を逆立て、こおりつくと、耳のおくで母さんの声がひびく。
・ふくろうがつばさをひろげた時、きばをむいたきつねが巣あなめがけおどりかかる。
・それより速く、野うさぎはとびのき、鉄ぽう玉のように飛び出す。
・野うさぎの子は、死にものぐるいで、雪をけって、けって、前へ飛び出してゆく。
・きつねはすぐ後ろにせまり、前には、そびえ立つ雪の山がある。
・野うさぎの子は、最後の力をふりしぼり一気にかけあがる。そのとたん足が軽くなる。
・きつねの細い足は、深い雪のあなに落ち、雪山の木がふくろうのつばさをさえぎる。
・野うさぎの子が山のてっぺんに着くとき、きつねはふもとにいて、ふくろうもいない。
・夜が、白々と明け、山々があかね色にそまり、見る間に金色にかがやく。
・森で小鳥が鳴きはじめ、アカゲラが木のドラムをたたき、りすがとびはねる。
・雪の森が目を覚まし、夜明けの歌をうたいはじめる。
・野うさぎの子は、立ち上がり、耳を立て、体に力がみなぎり、喜びがこみ上げる。
・トン。トン。後ろ足で思いっきり雪をたたき、生きる喜びがばくはつする。
・トン。トン。遠くから応える女の子は「ここにいるよ。ここにおいで。」
・野うさぎの子は応えて、かけだす。「トン。今、行くよ。そこに行くよ。」
・真っ白い雪けむりが、朝の光にまぶしくきらめく。静かな雪の夜明けだ。
<場面>
物語を、このブログで紹介している5場面に分け、1場面を30~40字程度にまとめてみます。
① 野うさぎの子は、きつねにおそわれた夏に母とはぐれた後、ずっと独りぼっちだ。
② 野ねずみの子は、てきから身を守るために、耳や後ろ足の毛づくりを覚えた。
③ 野ねずみがいたちにおそわれた後の真夜中、しのび寄る足音ときつねのにおいがする。
④ きつねが巣あなをおそう前に、野ねずみの子は飛び出し、山の上までかけ上がる。
⑤ 雪の夜明け、逃げ切れたうさぎの子は、体中に力がみなぎり、強い喜びがこみ上げてくる。
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この物語は、きつねにおそわれ母うさぎとはぐれ独りぼっちになった子うさぎの話です。
母とはぐれた後、いつしか毛づくりを覚え、食べものや安全なすみかも見つけ生きています。
冬のある夜、しのび寄るきつねの気配を感じ、間一髪のところで逃げることに成功します。
そのまま一気に山のてっぺんまで逃げることに成功します。
夜が明け、雪が朝の光に包まれます。うさぎの子は、生きていることの喜びを強く感じます。
<人物の会話・行動>
○ 会話について
母うさぎの会話はとても重要です。2つあります。
「にげてっ。早く。」
この声を最後に、子うさぎは、助かりますが、母うさぎとはぐれ、独りぼっちになってしまいます。
<動かないで。じっとふせてっ。>
今はいない母うさぎの声が、耳のおくにひびきます。その声のおかげで、また、子うさぎは助かります。
○ 行動について
この物語では、子うさぎの、独りでも強く生きる姿が印象的です。
・耳を顔の前にひっぱり、前足でていねいでなでつけます。
この後、「大事な大事な手入れです。」と「大事な」が2回繰り返されている説明の文があることからも、この行動が子うさぎにとって、生き抜くためにとても大切な行動であることがわかります。
・野うさぎの子は、死にものぐるいで雪をけります。雪をけって、けって、けり上げます。息の続くかぎり雪をけり、前へ、前へと、飛び出してゆきます。
ここでも「けって」が3回、「前へ」が2回繰り返して表現されています。野うさぎの必死さが強く伝わる行動です。
<主題>
この物語の主題は、何でしょうか?
「生きのびることのできた喜び」だと思います。
母とはぐれ独りぼっちの野うさぎの子は、今日もきつねとふくろうのおそわれ、死の恐怖を覚えます。しかし、うまく生きのびることができ、雪の夜明けを迎えることができます。
<表現の工夫>
この物語文には、さまざまな表現の工夫があります。
○ 強調のための繰り返し表現
・しのび寄る足音を聞きのがさないための、大事な大事な手入れです。
・雪をけって、けって、けり上げます。
・息の続くかぎり雪をけり、前へ、前へと、飛び出してゆきます。
○ 夜が静かにふける様子を表す表現
・しんしんと、夜がふけてゆきます。
・果てもなく暗い森に、雪の白さだけが、どこまでもどこまでも広がっています。
・夜の雪の森は、ひっそりと静まりかえっています。
○ 夜が明け、朝がきた様子を表す表現
・夜が、白々と明けてゆきます。遠くの山々があかね色にそまり、見る間にまばゆい金色にかがやきます。水の底にしずんだように光を失っていた雪は、しだいしだいに、雪の白さを取りもどし、朝の光にきらめきます。雪の夜明けの、光のまほうです。
<まとめにかえて>
この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。
教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。
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他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。
初雪のふる日 教材分析①に進む(内部リンク)
世界一美しいぼくの村 教材分析②に進む(内部リンク)
世界でいちばんやかましい音 教材分析③に進む(内部リンク)
かさこじぞう 教材分析⑦に進む(内部リンク)
大造じいさんとガン 教材分析⑨に進む(内部リンク)
スーホの白い馬 教材分析⑫に進む(内部リンク)
おにたのぼうし 教材分析⑱に進む(内部リンク)
モチモチの木 教材分析⑲に進む(内部リンク)
海の命 教材分析⑳に進む(内部リンク)
物語文の教材研究については、次のページもお読みください。
物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む(内部リンク)
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