「だいじょうぶ だいじょうぶ」の教材分析について知りたいです。
よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることは大切です。
しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。
そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。
今回は、5年生の教科書に載っている「だいじょうぶ だいじょうぶ」の教材分析をします。
だいじょうぶ だいじょうぶ:教材分析
🟠だいじょうぶ だいじょうぶ:教材分析
この作品は、東京書籍の5年生の教科書に載っています。
<作者>
いとうひろし(いとう・ひろし)さん文・絵
出典:「だいじょうぶ だいじょうぶ」(講談社・1995年年刊)
いとうひろしさんについて
1957年(昭和32年)生まれです。日本の絵本作家、イラストレーターです。本名は、伊藤寛さんです。
東京都生まれです。早稲田大学教育学部卒業です。大学在学中に児童文学研究会に所属して、絵本の創作を始めました。
主な作品に「くもくん」、「ルラルさん」シリーズ(以上、ポプラ社)、「ねこのなまえ」、「あかちゃんのおさんぽ」シリーズ(以上、徳間書店)、「へびくんのおさんぽ」(鈴木出版)などがあります。
日本絵本賞読者賞、絵本にっぽん賞、路傍の石幼少文学賞、講談社出版文化賞絵本賞などを受賞されています。
<題名>
題名は「だいじょうぶだいじょうぶ」です。
だいじょうぶは、漢字で書くと「大丈夫」になります。例解新国語辞典によると、「安心してみていられる」という意味です。2回繰り返すことで、相手に「だいじょうぶだよ」と呼びかけているようにも感じられます。
<設定>
いつ(時):ぼくが小さいころ。
どこ(場所):家の近く。
だれ(登場人物):ぼくとおじいちゃん。
<人物>
ぼく……主人公。このお話を書いている人。
おじいちゃん……ぼくのおじいちゃん。
<あらすじ>
・ぼくが小さく、おじいちゃんが元気だったころ、毎日お散歩を楽しんでいた。
・二人の散歩は、家の近くを歩くだけだったけど、ぼうけんするような楽しさがあった。
・おじいちゃんと歩いていると、ぼくの周りは、どんどん広がっていった。
・新しい発見や出会いが増えると、こまったことやこわいことにも出会う。
・友達からいじわるされることや自動車や飛行機のこわさを知ることもあった。
・このまま大きくなれないと思うこともあったが、そのたびおじいちゃんに助けられた。
・おじいちゃんは、ぼくの手をにぎりおまじないのようにつぶやく。「だいじょうぶ。」・
・「だいじょうぶ、だいじょうぶ」それは、無理して仲良くしなくてよいということ。
・「だいじょうぶ、だいじょうぶ」それは、わざとぶつかる車も飛行機もめったにないこと。
・「だいじょうぶ、だいじょうぶ」それは、たいていの病気やけがはいつか治るということ。
・それは、心が通じることがあるということ。世の中悪いことばかりじゃないということ。
・「だいじょうぶ、だいじょうぶ」ぼくとおじいちゃんは何度もその言葉をくり返した。
・友達と仲良くなり、けがや病気もよくなり、頭に飛行機が落ちることもなかった。
・むずかしい本も読めるようになり、もっとたくさんの人や動物や草や本に出会えるだろう。
・ぼくはずいぶん大きくなり、おじいちゃんはずいぶん年を取った。
・今度はぼくの番。おじいちゃんの手を取り何度も繰り返す。「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
<場面>
物語を、このブログで紹介している方法で、場面を5つに分け、1場面を30~40字程度にまとめてみます。
① 小さいころぼくはおじいちゃんと散歩しているとぼくの世界はどんどん広がった。
② 世界が広がるとこまったことも増えたが、おじいちゃんがぼくを助けてくれた。
③ 「だいじょうぶ」は、この世の中悪いことばかりじゃないことを教えてくれる言葉。
④ 「だいじょうぶ」という言葉で、友達と仲良くなり、いろいろなことに出会えた。
⑤ 今度は年をとったおじいちゃんにぼくが言う番。「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
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<人物の会話>
このお話に出てくる会話文は、題名にもなっている「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」だけです。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」はおじいちゃんからぼくにかけられる魔法の言葉です。
この言葉を通して、無理して仲良くならなくいいことや、くるまや飛行機の事故にはめったにあわないことや、多くの病気やけがは治ることや、言葉がわからなくても心が通じることや、世の中そんなに悪いことばかりじゃないことを知ることができました。
そして、ぼくも大きくなり、おじいちゃんは年を取りました。今後はぼくの番です。
ぼくからおじいちゃんに何度も繰り返します。「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」と。
<人物の行動>
この物語のよさは、ぼくとおじいちゃんの仲のよさです。二人はいつも一緒にいます。そして、おじいちゃんはぼくに「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」という言葉をかけるだけでなく、行動でも優しさを示してくれます。それは、二人がよく手をつないでいることです。
・そんなおじいちゃんと手をつないでとことこ歩いていると、ぼくの周りは、まほうにでもかかったみたいにどんどん広がっていくのでした。
・おじいちゃんは、ぼくの手をにぎり、おまじないのようにつぶやくのでした。
・おじいちゃんの手をにぎり、何度でも何度でもくり返します。
<主題>
この物語の主題は、何でしょうか?
自分を愛してくれる人がいて優しい言葉と行動を示してくれると、世の中を楽しく生きていけるということかもしれません。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」という言葉は魔法の言葉で、この言葉を通して、世の中を力強く生きていけるということかもしれません。
子どもに自由に行動できるような自主性を育てるためには、親や保護者、家族などの子どもが絶対に信頼できる人がそばにいて、その人がそこにいる安心感の中で、少しずつ冒険の旅に出ることを繰り返すことだ、というようなことを聞いたことがあります。
(この文章は、このブログの中の次のページの中で、私が書いている文章です。)
母親ノート法(1)母子の会話パターン 親子関係に進む(内部リンク)
このお話は、まさに、ぼくがおじいちゃんという信頼できる家族がそばにいて、いつも「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」と励ましてくれることで、そのような自主性を育てたということかもしれません。
<表現の工夫>
このお話での表現の工夫の一つは、少し大げさでユニークな表現をすることです。
友達がいじわるすることや、犬や車がこわいことを次のように表現します。
・お向かいのけんちゃんは、わけもなくぼくをぶつし、おすましのくみちゃんは、ぼくに会うたびに顔をしかめます。
・犬はうなって歯をむき出すし、自動車は、タイヤをきしませて走っていきます。
もう一つの表現の工夫は、イラストの素晴らしさです。優しいタッチで描かれたイラストによって文章だけでは伝わらないことも描かれています。
おじいちゃんが年を取っただけでなく、病気になり病院にいること、いつかは死んでしまうかもしれないことを最後のイラストを見せることで、読者である私たちに伝えています。
<まとめにかえて>
この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。
教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。
他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。
世界でいちばんやかましい音 教材分析003に進む(内部リンク)
大造じいさんとガン 教材分析009に進む(内部リンク)
海の命 教材分析020に進む(内部リンク)
雪の夜明け 教材分析023に進む(内部リンク)
なまえつけてよ 教材分析032に進む(内部リンク)
サボテンの花 教材分析039に進む(内部リンク)
物語文の教材研究については、次のページもお読みください。
物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む(内部リンク)
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