名前を見てちょうだい 教材分析050

教材分析
つばさ
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名前を見てちょうだい」の教材分析について知りたいです。

 よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることは大切です。

 しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。

 そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。

 今回は、「名前を見てちょうだい」です。

名前を見てちょうだい:教材分析

🟠名前を見てちょうだい:教材分析

 この教材は、東京書籍の2年生の教科書に掲載されている物語文です。

<作者>

 あまんきみこ(阿萬・紀美子)

 梅田俊作(うめだ・しゅんさく)絵

 出典:「ミュウのいるいえ」(フレーベル館・1972年)

 1972年度版の絵本では、西巻芽子さんが絵を描いています。

 あまんきみこさんについて

 1931年、旧満州の撫順市で生まれます。日本の児童文学作家です。

 太平洋戦争の終戦は、中国の大連で迎えます。ソ連軍占領下の大連で2年ほど過ごした後、大阪に引き揚げてきます。結婚後、東京に引っ越します。その後、勉学の意欲に駆られて、日本女子大学児童学科通信学部に入学し、児童文学者の与田準一さんに出会います。

 与田さんの勧めで、坪田譲治さん主宰の「びわの実学校」に「くましんし」を投稿し評価をえます。

 その後、「びわの実学校」発表の作品を集めた「車のいろは空のいろ」を出版します。

 あまんきみこさんの童話作品は、「ちいちゃんのかげおくり」「白いぼうし」「おにたのぼうし」などたくさんの作品が、教科書に掲載されています。

<題名>

 題名は「名前を見てちょうだい」です。人にとって、名前はとても大切なものです。

 この題名から、このお話が、自分にとってとても大切な名前に関係するお話であることが予想できます。

<設定>

 いつ(時):(きちんと書かれていない)

 どこ(場所):えっちゃんの家

 だれ(登場人物)えっちゃん、おかあさん

<人物>

 えっちゃん……この物語の主人公。かわいい女の子。うめだえつこという名前。

 おかあさん……えっちゃんのおかあさん。ぼうしにししゅうで名前をつけてあげる。

 きつね……とんで行ったえっちゃんのぼうしをかぶっている。

 ……とんで行ったえっちゃんのぼうしをかぶっている。

 大男……とんで行ったえっちゃんのぼうしをもっている。

 あっこちゃん……えっちゃんの友だち

<あらすじ>

・えっちゃんは、おかあさんから、名前がししゅうしてある赤いぼうしをもらった。

・えっちゃんは、さっそく、ぼうしをかぶってあそびにいくことにした。

・つよい風がふいてきて、ぼうしをさらい、のはらへとんでいった。

・のはらにはしっていくと、きつねがぼうしをかぶっていた。

・「あたしのぼうしよ。」というと、きつねは「ぼくのだよ。」と言う。

・「名前を見てちょうだい。」と言うと、ぼうしにはきつねの名前が書いているように見えた。

・たしかめようとすると、つよい風がふいてきて、ぼうしをさらい、はたけへとんでいった。

・のはらにはしっていくと、牛がぼうしをかぶっていた。

・「あたしのぼうしよ。」というと、牛は「わたしのですよ。」と言う。

・「名前を見てちょうだい。」と言うと、ぼうしには牛の名前が書いているように見えた。

・たしかめようとすると、つよい風がふいてきて、ぼうしをさらい、林へとんでいった。

・林にはしっていくと、大男がぼうしをふしぎそうに見ていた。

・えっちゃんときつねと牛が、自分のぼうしだと言うと、大男は三人をじろりと見下ろした。

・そして、ぼうしをたべて「たべちゃった。だから、名前もたべちゃった。」と言った。

・牛ときつねは「いそがしい」と言うと、風のようにはしっていった。

・えっちゃんは、「あたしはかえらないわ。だって、あたしのぼうしだもん。」と言った。

・そして、えっちゃんは、体から湯気を出し、ぐわあんと大きくなった。

・えっちゃんは、たたみのような手のひらをまっすぐのばして言った。

・「あたしのぼうしをかえしなさい。」

・大男は、みぶるいをすると、空気のもれる風せんのようにしぼんでいって見えなくなった。

・あとにはぼうしがあり、名前も書いてあった。

・ぼうしをかぶると、えっちゃんは、元の大きさになっていた。

・えっちゃんは、あっこちゃんのうちにあそびに行った。

<場面>

 ここでは、このブログで紹介している5場面に分け、1場面を30字程度にまとめてみます。

① えっちゃんがおかあさんから名前つきの赤いすてきなぼうしをもらう。

② えっちゃんときつねが、とんでいったぼうしのとりあいをする。

③ えっちゃんときつねと牛が、とんでいったぼうしのとりあいをする

④ ぼうしを食べた大男におこったえっちゃんが、大男をやっつける。

⑤ えっちゃんはあっこちゃんのうちにあそびに行く。

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 この物語は、「3びきのこぶた」や「桃太郎」のように、よく似た出来事が3回繰り返されるお話です。このようによく似たことが3回繰り返されることは、お話ではよくあることです。

<人物の会話・行動>

会話について

 この物語では、重要な会話がいくつか出てきます。

 1つは、えっちゃんとおかあさんの会話です。

 お母さんは、えっちゃんにぼうしを渡して言います。

うらを見てごらん。

 そこには、えっちゃんの名前が青い糸でししゅうされています。

う、め、だ、え、つ、こ。うふっ。ありがとう。

 2つめは、えっちゃんときつねや牛とのやりとりです。

 ここでは、よく似た表現がくり返されています

 きつねとのやりとりは、次のように続きます。

「それ、あたしのぼうしよ。」「ぼくのだよ。」

「あたしの名前が書いてあるわ。名前を見てちょうだい。」

「ぼうら、ぼくの名前だよ。の、は、ら、こ、ん、き、ち。」

「へんねえ。」

 同じようなやりとりは、きつねと牛とえっちゃんの間でもおこります。

「それ、あたしのよ。」「ぼくのだよ。」

「わたしのですよ。」

「名前を見てちょうだい。」

「ぼうら、わたしの名前だよ。は、た、な、か、も、う、こ。」

 大男との会話は同じ部分もありますが、少し変わってきます

「それ、あたしのよ。」「ぼくのだよ。」「わたしのですよ。」

「名前を見てちょうだい。」

 すると、大男は、ぼうしをたべてしまいます。そして言います。

「たべちゃった。だから、名前もたべちゃった。もっと何かたべたいなあ。」

 そそくさと帰る牛ときつね。でも、えっちゃんはちがいます。

「あたしはかえらないわ。だって、あたしのぼうしだもん。」

「たべるならたべなさい。あたし、おこっているから、あついわよ。」

 そして、言います。

「あたしのぼうしをかえしなさい。」

 ぼうしとぼうしに書かれた名前にまつわるやりとりです。

 えっちゃんが自分の名前をとても大切にしていることがよくわかるやりとりです。

行動について

 この物語では、よく似た行動がいくつか出てきます。

えっちゃんがそののはらにはしっていくと、赤いぼうしをちょこんとかぶったきつねが一ぴき、白いすすきをもってプープーふいていました

えっちゃんたちが、そのはたけにはしっていくと、赤いぼうしをちょこんとかぶった牛が一ぴき、空をまぶしそうに見上げていました

えっちゃんたちが、その林に入っていくと、木よりもたかい大男がどかんとすわっていました。そして、ぼうしをりょう手で持って、ふしぎそうにながめていました

 この物語では、えっちゃんと大男とのたたかいも迫力があります。

 まず、大男の攻撃です。

すると、大男は、えっちゃんたちをじろりと見下ろしました。それから、あっという間にぱくん。ぼうしを口の中に入れました

大男は、したなめずりをして、じろりじろり見下ろしながら言いました

 きつねと牛は、あとずさりをして、むきをかえると、逃げ帰ります。

 でも、えっちゃんは負けていません。

むねをはって、大男をきりりと見上げて言いました。「あたしはかえらないわ。」

すると、えっちゃんの体から湯気がもうもうとでてきました。そして、ぐわあんと大きくなりました。「たべるなら、たべなさい。あたし、おこっているから、あついわよ。」

湯気を立てたえっちゃんの体がまた、ぐわんと、大きくなりました。そうして、大男と同じ大きさになってしまいました

えっちゃんは、たたみのような手のひらをまっすぐのばして言いました。「あたしのぼうしをかえしなさい。」

 えっちゃんの圧勝です。自分の名前と自分ぼうしを大切に考えて、守ろうとしたえっちんが見事に勝ちました。

<主題>

 この物語の主題は、何でしょうか?

 題名に「名前を見てちょうだい」とあるように、名前」が重要な意味を持ってくるのだと思います。

 両親からもらった大切な名前、そして、その名前のついた大切なぼうし、それを大切にすることが、この物語の主題なのかもしれません。

<表現の工夫>

 この物語文には、さまざまな表現の工夫があります。

よく似たことが3回繰り返されること

 一番の工夫は、よく似たことが3回繰り返されることです。

 子どもたちは、繰り返される表現が大好きです。次にどのようなことが起こるか容易に予想できるからです。「また、同じだな。」「また、一緒の事が起こった。」と子どもたちは喜びます。

そのことを作者のあまんきみこさんは、よくわかっているのだと思います。

 しかし、すっと同じでは、あきてしまうのも子供の特性です。そのことをよく知っている作者は、3回もよく似たことが起こると見せかけて、大きな変化を起こします。大男の登場です。

 体が大きいだけでも驚くのに、ぼうしを食べてしまいます。

 でも、この物語では、可愛いえっちゃんが変身します。大男に負けないぐらいに体が大きくなります。

 その他にもいろいろな表現の工夫があります。

不思議な世界へ移る表現

 この物語では、現実世界から不思議な世界へ移るためのきっかけが「つよい風」になります。

・さて、えっちゃんが門を出たとき、つよい風がふいてきて、いきなりぼうしをさらっていきました。

・えっちゃんが、もう一度たしかめようとしたとき、つよい風がふいてきて、いきなりぼうしをさらっていきました。

比喩表現

 この物語では、比喩表現もたくさん出てきます。

・牛は、くるりとむきをかえると、風のようにはしっていってしまいました。

・えっちゃんは、たたみのような手のひらをまっすぐのばして言いました。

・ぶるぶるふるえながら、空気のもれる風せんのように、しぼんで、しぼんで、しぼんで、とうとう見えなくなってしまいました。

<まとめにかえて>

 この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。

 教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。

⭐️ ⭐️

 なお、この物語を参考にした物語を書く指導について、次のページをお読みください。

物語を書く指導(1) 指導のポイントに進む内部リンク

物語を書く指導(2) 単元目標と指導計画に進む内部リンク

物語を書く指導(3) 指導の工夫①に進む内部リンク

物語を書く指導(4) 指導の工夫②に進む内部リンク

物語を書く指導(5) 指導の工夫③に進む内部リンク

物語を書く指導(6) 指導の工夫④に進む内部リンク

物語を書く指導(7)  みくのふしぎなピアノに進む内部リンク

 物語文の教材研究については、次のページもお読みください。

物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む内部リンク

 他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。

白いぼうし 教材分析031に進む内部リンクあまんきみこさんの作品

おにたのぼうし 教材分析018に進む内部リンクあまんきみこさんの作品

風のゆうびんやさん 教材分析038に進む内部リンク

かさこじぞう 教材分析⑦に進む内部リンク

スーホの白い馬 教材分析012に進む内部リンク

 

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