「天気を予想する」の教材分析について知りたいです。
よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることが大切です。
しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。
そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。
今回は、「天気を予想する」です。
天気を予想する:教材分析
🟠天気を予想する:教材分析
この教材は、光村図書の5年生の教科書に掲載されている説明文です。
<作者>
武田康男(たけだ・やすお)作
出典:この説明文のために書き下ろしされた文章です。2008年に書かれ、2017年に改稿されました。
武田康男さんについて
1960年(昭和35年)、東京都生まれです。気象予報士です。
千葉県の高等学校で、地学の教鞭をとるかたわら、雲や虹、雷などの気象の写真家としても活躍されています。日本教育大学院大学で非常勤講師をされています。
<題名>
題名は「天気を予想する」です。
この教材は、5年生の教科書に出てきます。5年生の理科の学習では、「天気の変化」について学び、「天気の変化は,映像などの気象情報を用いて予想できること」を学習します。そのことに関係する内容です。
<はじめとおわり>
○ はじめ
天気予報は、1970年代には八十パーセントに見たなかった的中率が、2000年を過ぎると、八十五パーセント以上になったことが分かる。的中率は、どうして高くなったのか。
○ おわり
科学技術の進歩や国際的な協力によって、天気予報の精度は向上してきた。それによりわたしたちの生活は便利になった。しかし、自分でも天気の知識をもち、急な天気の変化に備えることも大切だ。
説明文の教材研究(2) はじめとおわりに進む(内部リンク)
<形式段落>
形式段落は、全部で11段落です。
形式段落毎の簡単な内容は、次の通りです。
① 天気予報は、2000年を過ぎると、的中率が高くなったが、それはどうしてなのか。
② 一つは、科学技術の進歩である。観測装置やコンピューターの性能がよくなった。
③ もう一つは、国際的な協力の実現だ。他国の気球や気象衛星などから情報を得ている。
④ では、天気予報が百パーセントになることはあるのか。むずかしいとわたしは考える。
⑤ 天気の予想のむずかしさの要因の一つは、突発的な天気の変化が挙げられる。
⑥ 他の要因は、局地的な天気の変化が挙げられる。海に囲まれ、さまざまな風が吹く。
⑦ でも、突発的・局地的な天気の変化を予想する手立ては、わたしはあると考える。
⑧ まず、いろいろな情報手段を使い、ちいきの現在や、この先の天気を知ることだ。
⑨ また、突発的な天気変化へは、自分で空を見たり、風を感じたりすることも必要だ。
⑩ さらに、ちいきに根ざし、経験が積み重なった、天気のことわざが有効な場合もある。
⑪ 科学技術の進歩や国際的な協力と天気の知識をもち、天気の変化に備えることも大切だ。
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説明文の教材研究(4) 段落関係と要点に進む(内部リンク)
<意味段落>
ここでは、5つの意味段落に分かれている、と考えられます。
①段落:序論(はじめ)
最初の問題提起の段落です。
天気予報は、1970年代に比べると、2000年を過ぎてから、的中率が高くなりましたが、それはどうしてなのか、と筆者は問い、次の二つの理由によると書きます。
②~③段落:本論1(なか1)
天気予報の的中率がよくなった二つの理由について書いています。一つは、科学的技術の進歩があったからです。アメダスなどの観測装置やスーパーコンピューターなどの性能がよくなったからだと説明しています。
もう一つは、国際的な協力の実現です。気球による観測は、世界約八百か所で同時刻に行い、世界には十三の気象衛星があり、日本は、そのうちの二機の管理・運営をしていると説明しています。
④~⑥段落:本論2(なか2)
形式段落の④段落は、更なる問題提起をしている段落です。
科学的技術の進歩と国際的な協力によって、天気予報が百パーセントになることはあるのか、と筆者は、更なる問いを出します。そして、それは、むずかしいと筆者は考えています。
予想をむずかしている要因の一つは、突発的な天気の変化を挙げています。グラフのデーターを挙げて、十年間ではげしい雨が二百三十回も起こっていることを伝えています。
もう一つの要因は、局地的な天気の変化です。日本は地形の変化に富み、風や雲の動きが複雑です。それが予想をむずかしている要因だと筆者は書いています。
⑦~⑩段落:本論3(なか3)
形式段落の⑦段落は、三つめの問題提起をしている段落です。
では、突発的・局地的な天気の変化を予想することはできないのか、と筆者は問います。そして、いくつかの手立てがあると筆者は書きます。
まず、いろいろな情報手段を使い、ちいきの現在や、この先の天気を知ることで、突発的・局地的な天気の変化を知ることができると書きます。
また、実際に、自分で空を見たり、風を感じたりすることで、突発的な天気の変化へ対処できると書きます。
さらに、ちいきに根ざし、経験が積み重なった、天気のことわざが有効な場合もあると書きます。
⑪段落:結論(おわり)
科学技術の進歩や国際的な協力によって、天気予報の精度は向上してきました。それによりわたしたちの生活は便利になりました。しかし、天気の的中率が高くなっても、自分でも天気の知識をもち、急な天気の変化に備えることも大切だとまとめています。
<大事な言葉>
天気予報、的中、気象庁、アメダス、観測装置、降水率、予想図、科学技術、静止気象衛生、要因、突発的、積乱雲、局地的、情報手段、ことわざ
なお、わたしが子ども用に作っているブログ「よみもの」で、「人工衛星」について簡単な文章を作りましたので、お読みください。
人工衛星 Satellitesに進む(外部リンク・よみもの)
説明文の教材研究(5) 大事な言葉と要約に進む(内部リンク)
<表現の工夫>
「問いかけ」
この説明文では、三つの疑問を提示しています。①「天気予報の的中率が高くなったのか」、②「天気予報が百パーセントの的中することはあるのか」、③「突発的・局地的な天気の変化を予想するためにできることはないのか」の3つです。
問いかける言い方(疑説法)によって、読み手の知的欲求が高まり、その答えを読みたくなります。
説明文の教材研究(8) 列挙 反復 問いかけに進む(内部リンク)
「数量化されたデータ」
この説明文では、「東京地方の降水の予報精度」という図と「1時間に50ミリメートル以上の雨が観測された回数」というグラフを用意しています。天気予想の的中率を数値で表したり、観測装置や気象レーダーの数、気球や静止気象衛星の数なども挙げています。
具体的な数量化されたデータを挙げて説明することで、述べようとすることの確かさが強まる説明になっています。
説明文の教材研究(9) 比喩 数量化 程度差に進む(内部リンク)
<要旨>
この説明文では、「①科学技術の進歩と国際的な協力によって天気予報の的中率がよくなったこと。②突発的・局地的な天気を百パーセント予想することはできないこと、③突発的・局地的な天気を予想するために、天気の知識をもち、空を見、風を感じ、天気の変化に備えることが大切であること」について書いています。
<まとめにかえて>
この教材分析は、このブログに載せている「説明文の教材研究」で取りあげたいくつかの視点に基づいて行ったものです。
教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。
⭐️ ⭐️
なお、説明文に関係する次の項目についても、併せて読んでください。
説明文の教材研究(1) 教材研究の視点に進む(内部リンク)
説明文の教材研究(3) 文章の構成に進む(内部リンク)
説明文の教材研究(6) 引用に進む(内部リンク)
説明文の教材研究(7) 表現の工夫(対比)に進む(内部リンク)
説明文の教材研究(10)なぜ教材研究をするのかに進む(内部リンク)
説明文の指導の仕方(1)指導計画に進む(内部リンク)
説明文の指導の仕方(10)に進む(内部リンク)
他の説明文の教材分析については、次のページをお読みください。
想像力のスイッチを入れよう 教材分析015に進む(内部リンク)
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