「さわっておどろく」という説明文の教材分析について知りたいです。
よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることが大切です。
しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。
そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。
今回は、学校図書の4年生下巻に載っている「さわっておどろく」です。
さわっておどろく:教材分析
🟠さわっておどろく:教材分析
この教材は、学校図書の4年下に掲載されている説明文です。
<作者>
広瀬浩二郎(ひろせ・こうじろう)作
出典:教科書のために書きおろしされた文章です。
広瀬浩二郎さんについて
1967年、東京で生まれました。弱視で生まれ、13才の時に、全盲になりました。
筑波大学附属盲学校を卒業した後、京都大学を卒業し、京都大学大学院博士課程を修了しています。
文化人類学者です。国立民族博物館の准教授です。日本の宗教史、民俗学、障がい者文化論を研究されています。
この説明文の元になった「さわっておどろく!」という本を岩波書店の岩波ジュニア新書として2012年に発行しています。
<題名>
題名は「さわっておどろく」です。
題名を読むと、触ることで何かに驚いていることがわかります。
普通は、視覚を通して見て驚くことがいいのですが、触覚を通して触って驚くことについて書かれていることが予想されます。
<はじめとおわり>
○ はじめ
筆者は「わたしは全盲の視覚しょうがい者です。中学一年生の時に目が見えなくなりました。」と書き出しています。
この文を通して、全盲なので、触ることを通して驚くことがあるのだとわかります。
○おわり
筆者は、最後に「見える人が見えない人をサポートする、助けるという一方向の矢印ではなく『見る文化』『さわる文化』の特ちょうを学び合う、両方向の矢印が成り立つのではないでしょうか。」と締めくくります。
障がい者と聞くと、サポートや支援が必要な人というイメージがありますが、筆者は、そう考えていないということがわかります。
<形式段落>
形式段落は、全部で、17段落です。
形式段落毎の簡単な内容は、次の通りです。
① わたしは全盲で、視覚しょうがい者で、中1の時に目が見えなくなった。
② 盲学校の時に点字を使うようになり、勉強するうちになれることができた。
③ 1987年大学に入学した後、33才の時に博物館で働くことになった。
④ 働き始めて、博物館や美術館は、目で見る場所であることに気づいた。
⑤ 見れない視覚しょうがい者にとって博物館は親しみにくい場所だと感じた。
⑥ 自分の体験を生かして博物館を視覚しょうがい者が楽しめる方法を考えた。
⑦ 2001年ごろ、ユニーバーサルミュージアムという考えが出てきた。
⑧ アメリカでの体験が、視覚しょうがい者も楽しめる博物館のヒントになった。
⑨ アメリカの博物館では、ボランティアが視覚しょうがい者を助けてくれる。
⑩ 視覚しょうがい者が博物館を楽しむためには、人のサービスが大切である。
⑪ 赤ちゃんはさわってたしかめるが、視覚中心の生活が触覚の力をわすれる。
⑫ ねむっていた触覚の力を、博物館で「さわっておどろく」経験で発見できる。
⑬ 点字を発明したブライユを記念して「さわる」てんらん会をきかくした。
⑭ てんらい会などを通して点字の役わりや「さわる文化」について伝えている。
⑮ さわることのよさがたくさんあるが、そのことに気づいていない人がいる。
⑯ 目の不自由な人をさわるのが得意な人と考えると、考え方が変わってくる。
⑰ 「見る文化」「さわる文化」を学び合う両方向の関係が成り立つだろう。
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<意味段落>
①~③段落:序論(はじめ):
13才で全盲になった後、読めるわけのないと思った点字を学び、大学を卒業し、33才で博物館ではたらくことになった。
④~⑥段落:本論1(なか1):
博物館は見て楽しむ場であるが、視覚しょうがい者も楽しめる方法を考えることにした。
⑦~⑪段落:本論2(なか2):
ユニバーサルミュージアムの考えやアメリカの博物館を使った体験から、「さわっておどろく」博物館について考えるようになった。
⑫~⑮段落:本論3(なか3)
2009年、民博で「さわる」てんらい会をきかくし、「さわる文化」を目が見える人に伝える努力をしている。
⑯~⑰段落:結論(おわり):
目の不自由な人をさわるのが得意な人と考えると、見える人の「見る文化」と見えない人の「さわる文化」を学び合う両方向の関係が成り立つだろう。
<大事な言葉>
全盲、視覚しょうがい者、点字、盲学校、ボランティア、国立民族学博物館、ユニバーサルミュージアム、ユニバーサルデザイン、点字ブロック、触覚、視覚、さわっておどろく、さわる文化、見る文化など
これらの言葉のいくつかには、かぎかっこが使われています。かぎかっこを使うことで、大事な言葉を強調しています。
<表現の工夫>
「対比」
この文章では、いくつかの対比が用いられています。対比することで、説明対象の特質が明瞭に読み手に伝わるようになっています。
1つは、日本の博物館とアメリカの博物館の対比です。
もう1つは、目の見える人と見えない人の対比です。
・目の不自由な人を、さわるのが得意とする人だと、とらえ直すと、目が見える人と見えない人の関係は、「視覚にたよって生活する人」と「触覚にたよって生活する人」のコミュニケーションだということができます。
「写真」
この説明文では、9つの写真を添えています。写真には、簡単な説明の言葉がついています。
<要旨>
この説明文では、次のようなことを筆者は考えているように思います。
障がい者の問題を、助ける人、助けられる人という一方向の関係性でとらえるのではなく、「さわるのが得意な人」と「見るのか得意な人」という視点でとらえ直すと、互いに「見る文化」と「さわる文化」のよさを学び合う対等な関係性が捉えることができます。
ただ、この説明文を読む4年生の子どもにとって、ユニバーサルデザイン、点字などについて知ることも大切です。ですから、この説明文では、「点字のかなと数字」「ユニバーサルデザインの例」という2つの資料をつけています。
<まとめにかえて>
この教材分析は、このブログに載せている「説明文の教材研究」に挙げた視点のうちにいくつかの視点に基づいて行ったものです。
教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。
なお、この説明文に関係する言葉については、次のページをお読みください。
ユニバーサルデザインに進む(姉妹ブログ・よみもの)
ユニバーサルデザインに進む(内部ブログ)
⭐️ ⭐️
なお、説明文に関係する次の項目についても、併せて読んでください。
説明文の教材研究(1) 教材研究の視点に進む(内部リンク)
説明文の教材研究(2) はじめとおわりに進む(内部リンク)
説明文の教材研究(3) 文章の構成に進む(内部リンク)
説明文の教材研究(4) 段落関係と要点に進む(内部リンク)
説明文の教材研究(5) 大事な言葉と要約に進む(内部リンク)
説明文の教材研究(6) 引用に進む(内部リンク)
説明文の教材研究(7) 表現の工夫(対比)に進む(内部リンク)
説明文の教材研究(8) 列挙 反復 問いかけに進む(内部リンク)
説明文の教材研究(9) 比喩 数量化 程度差に進む(内部リンク)
説明文の教材研究(10)なぜ教材研究をするのかに進む(内部リンク)
説明文の指導の仕方(1)指導計画に進む(内部リンク)
説明文の指導の仕方(10)に進む(内部リンク)
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