すいせんのラッパ 教材分析036

教材分析
つばさ
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すいせんのラッパ」の教材分析について知りたいです。

 よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることは大切です。

 しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。

 そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。

 今回は、3年生の教科書に載っている「すいせんのラッパ」の教材分析をします。 

すいせんのラッパ:教材分析

🟠すいせんのラッパ:教材分析

 この作品は、東京書籍の3年生の教科書に載っています。  

<作者>

 工藤直子(くどう・なおこ)さん作

 村上康成(むらかみ・やすなり)さん絵

 出典:「おいで、もんしろ蝶」(筑摩書房・1987年刊)

 工藤直子さんについて

 1935年(昭和10年)生まれです。日本の詩人、児童文学者です。

 台湾の嘉義(かぎ)生まれです。工藤さんが生まれた当時、台湾は、日本の植民地でした。

 お茶の水女子大学教育学部を卒業しました。その後、博報堂に入社して、女性初のコピーライターになりました。

 1983年「てつがくのライオン」で、日本児童文学者協会新人賞を受賞しました。

 2008年には、「のはらうた V」で野間児童文学文芸賞を受賞しました。

 多くの詩や物語が教科書に掲載されています。特に、「のはらうた」シリーズの(童話屋・1984-2008)詩集から、「おれはかまきり」「かたつむりのゆめ」などの詩がたくさん掲載されています。

<題名>

 題名は「すいせんのラッパ」です。

 すいせんという花が、ラッパを吹くことについて書かれたことが予想されます。子どもの中には、ラッパスイセンというすいせんの名前を聞いた子どもがいるかもしれません。

 なお、私が子ども向けに作っている「よみもの」というブログで、「水仙」について簡単な文章を作っています。

水仙 Narcissusに進むよみもの・外部リンク

<設定>

 いつ(時):春のまん中

 どこ(場所):池のそば。

 だれ(登場人物):すいせん、ありたち。

<人物>

 すいせん……らっぱをふいて、かえるを起こす。

 ありたち……すいせんがかえるを起こすのを見学にくる。

 かえるたち……すいせんのラッパの音で、目がさめる。

<あらすじ>

・春のお話。池のそばのすいせんが、ラッパのよい音が出るかたしかめている。

・そこへ、ありたちが走ってきて「おはよう」「早く、ラッパふいて」「上がっていい」

 そう話しかけると、すいせんの葉っぱに上がっていった。

・今日は、すいせんが、今年はじめてラッパをふく日。

・なぜかというと、冬の間ねむっていたかえるたちに春ですよ起きなさいと知らせるためだ。

・すいせんは、お日さまの高さや風のはやさを調べたり、プーとふいたりしている。

・ありたちは、葉っぱの上でじっとまっている。日の光が、一面にちった。

・(うん、今だ!)すいせんは、大きくいきをすって、ラッパをふき鳴らす。

・すき通った音が、池をわたり、地面をゆさぶり、おかを上って、空にきえる。

・すると、池のそばのつつじのねもとがむくっ。グローブみたいなかえるがとび起きた。

・目をぱちぱちさせてから、すいせんを見つけると「今年もありがとう」と言った。

・それから、あく日をして、「はらへった、どっすん・ぽこ」と林の方へとんでいった。

・すいせんは、にっこりして、またラッパをふく。音がながれ、あたりはまぶしくひかる。

・おち葉がとびちり、緑色のリボンのようなかえるがとび起き「サンキュー」と言う。

・ちゅうがえりし「うんとあそぼう、ひらり、ぴょん」と林の方へとんでいった。

・すいせんは、いよいよ元気にラッパをふく。こんどは、どんなかえるが目をさますかな。

・そばの土がちょろっとうごいて、豆つぶみたいなかえるがとび起きた。

・「ぼく、こんな上手にめがさめるなんて、なぜだ?」と話すかえる。

・「すいせんのラッパで目がさめたんだよ」とありたちが口をそろえて教えた。

・「ラッパ? そうだったの、ありがとう」「うれしいな」と林の方へとんでいく。

・すいせんは、たくさんのラッパをふき、かえるもたくさんとびおきた。

・あたりは、どんどんにぎやかに、おまつりみたい。

・ありたちは、ラッパに合わせて歌ったり、かえるのまねをしてとんだり……。

・まだ、ねむっているかえるは、いませんか?

<場面>

 物語を、このブログで紹介している方法で、場面を5つに分け、1場面を30~40字程度にまとめてみます。 

①  春になり、すいせんがラッパの音をたしかめている。ありたちが見学にやってくる。

②  ラッパをふくと、グローブみたいなかえるが起きだし「はらへった」と言う。

③  次のラッパで、緑色のリボンのようなかえるが起きだし「うんと、あそぼう」と言う。

④  次のラッパで、豆つぶみたいなかえるが起き出し「うれしいな」と言う。

⑤  すいせんはたくさんラッパを吹いて、かえるをたくさん起こしておまつりみたいだ。

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<人物の会話>

 この物語で、会話をするのは、ラッパをふくすいせんと、ラッパで起こされるかえると、それを楽しそうに見学しているありたちです。

 どれも大切な会話ですが、起こされた3びきのかえるの反応がいろいろで面白いです。

 グローブみたいなかえるは次のように言います。

・「やあ、今年もありがとう。」「パオーン。

 「はらへった、はらへった、はらへった

  どっすん・ぼこ。どっすん・ぽこ。どっすん・ぽこ。

 緑色のリボンのようなかえるもユニークです。

・「はあい、目ざましラッパ、サンキュー、サンキュー。

・「さ、あそぼう。うんとあそぼう。だれとあそぼう。

  ひらり・びょん。ひらり・びょん。ひらり・びょん。

 豆つぶみたいなかえるは最初どうなったのか、わからなかったみたいです。

・「やあもう春だ。ん? ぼく、こんなに上手に目がさめるなんて……なぜだ? なぜだ?

 ありたちに「すいせんのラッパで目がさめたんだよ」と教えてもらうと、

 「ラッパ? あ、金色のラッパ。そうだったの……。ありがとう!

 「うれしいな。うれしいな。うれしいな。

  ぴこぴん。ぴこぴん。ぴこぴんぴん。

<人物の行動>

 この物語のおもしろさの一つは、すいせんのラッパの音にかえるが起こされるのを見ているありたちの反応です。いろいろあります。

ありたちが、とっとと走ってきました。

ありたちは、わいわいはしゃいで、すいせんの葉っぱに上ってきました。

ありたちは、葉っぱの上で、ゆらゆらゆれて、じっとまっています。

ありたちは、ひじをつついて、ささやきます。

ありたちは、葉っぱの上で、とび上がって手をたたきました。

ありたちは、感心して手をたたきました。

ありたちが、口をそろえて教えました。

ありたちは、にこにこして見おくりました。

ありたちは、ラッパに合わせて歌ったり、かえるのまねをしてとんだり……。

 ありたちは、本当に楽しそうです。

<主題>

 この物語の主題は、何でしょうか?

春の喜び」ということかもしれません。

 春になり、すいせんのラッパの音で次々に起こされるかえるたち。その様子を楽しそうに見ているありたち。冬が終わり、春になり、生きものがまた活発に活動を始める様子をいきいきと描いた物語です。

<表現の工夫>

 3年生の子どもに身につけてほしい作文の技術に上手に比喩表現(たとえ)が使えるようになってほしいと言うことがあります。作文で上手なたとえが使えるようになると、その作文はとても豊かになります。そのような表現を子どもに身につけさせるためには、そのような表現があることを意識させることはとても大切です。

 この物語には、たとえの工夫がたくさんあります。

グローブみたいなかえる。

緑色のリボンのようなかえる。

豆つぶみたいなかえる。

 この物語がいきいきしている理由の一つに、オノマトペの豊かさがあります。

 オノマトペとは、物事の様子や状態や動きなどを表した表現のことです。

 オノマトペは、物事の様子や状態を表す擬態語(ゆっくり、きらきらなど)と、音を言葉で表した擬音語(ピーポーピーポー、ガチャガチャなど)、動物や人物などの発する鳴き声や声などを表した擬声語(ワンワン、キャーなど)の3つの種類に分けられます

 そのうち、様子を表す擬態語は、平仮名で表現し、擬音語や擬声語は、片仮名で表現します。その使い分けを子どもに伝え、音に関係していることは片仮名で、音に関係していないことは平仮名であることをていねいに教えて、定着させることも大切です。

 この物語に出てくる擬態語の一例

とっとと走る、わいわいはしゃぐ、うんうんうなずく、ゆらゆらゆれる、じっとまつ。ささあっとふきわたる。ねもとがむくっむくむくむくっ。目をぱちぱちする。どっすん・ぽこうきうきする音。ぱっぱっぱっととびちる。ひらり・ぴょんぴょんちょろっとうごく。ぴいんととび起きる。きょろきょろする。ぴん、とおじぎする。ぴこぴんにこにこする。

 この物語に出てくる擬音語や擬声語

プル・プル・プープープップ・パッパ・パッパラピー・プウー。パオーンピラリ・ピッピー・ランパッパ・ピーパッパッポーンピピピプーピポピポ・ピッピー

 なお、オノマトペについては、次のページに詳しく書いています。

オノマトペ:教育用語⑦に進む内部リンク

まとめにかえて>

 この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。

 教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。


⭐️ ⭐️

 他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。

世界一美しいぼくの村 教材分析002に進む内部リンク

世界でいちばんやかましい音 教材分析003に進む内部リンク

スーホの白い馬 教材分析012に進む内部リンク

おにたのぼうし 教材分析018に進む内部リンク

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なまえつけてよ 教材分析032に進む内部リンク

きつつきの商売 教材分析033に進む内部リンク

ふきのとう 教材分析034に進む内部リンク

 物語文の教材研究については、次のページもお読みください。

物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む内部リンク

 2年生の子どもが書いた物語

絵本  みくのふしぎなピアノに進む内部リンク

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