1年生向けにスタートカリキュラムがあります。
学校の中には、教職員の中だけで使う特別な用語がたくさんあります。
今回は、そのような教育用語の中の「スタートカリキュラム」について書きます。
スタートカリキュラム
性教育いらすと:ブログ紹介②に進む(内部リンク)
🟠スタートカリキュラム
<スタートカリキュラムとは?>
スタートカリキュラムは、学校で使う特別な用語のひとつです。
スタートカリキュラムとは、小学校へ入学した1年生の子どもが、幼稚園・保育所・認定こども園などの遊びや生活から、スムーズに小学校の学校生活に移行するためのカリキュラムのことです。
小学校と、それ以前に子どもが通う「幼稚園・保育所・認定こども園」では、環境や教育などの目的、日々の過ごし方がずいぶんと違います。
子どもの多くは、小学校で学ぶことのできる喜びに満ちあふれながらも、それまでの環境や日々の生活との違いに戸惑い、スムーズになじめない子どももたくさんいます。
小学校に入学すると、「幼稚園・保育所・認定こども園」で当たり前だったきまりや約束事などとは全く違うきまりや約束事が始まることになります。
「幼稚園・保育所・認定こども園」でも、椅子に座ってお話を聞いたり読み聞かせを聞いたりすることはあったと思います。しかし、小学校では、一人一人に机と椅子が与えられ、基本的には45分間じっと座っていることを強いられます。
子どもの中には、そのような学校生活に馴染めない子どもがいてもふしぎなことではありません。
でも、子どもにきちんとした学力を身につけさせるためには、スムーズに学校生活になじんでもらうことが必要です。
1年生の子どもが新しく始まる学校生活にスムーズに適応できるように、特別なカリキュラムを作る必要があるということで、「スタートカリキュラム」という言葉ができました。
文部科学省は、国立教育政策研究所の教育課程研究センターと協力して 2015年(平成27年)1月に「スタートカリキュラムスタートブック」という20ページ程度の冊子を作りました。
スタートカリキュラムスタートブックに進む(外部リンク)
その後、2018年(平成30年)には、「発達や学びをつなぐスタートカリキュラムースタートカリキュラム導入・実践の手引き」という112ページもある冊子を発行しました。
スタートカリキュラム導入・実践の手引きに進む(外部リンク)
詳細は、この2つの冊子をお読みいただけたらと思います。
ここでは、文部科学省の考えを基本にしつつ、私の考える「スタートカリキュラム」について書きます。
<スタートカリキュラムの基本的な考え>
① 「時間割の工夫」
小学校の1時間の授業時間は45分と決まっています。
しかし、入学したての子どもにいきなり45分の授業をしようとしてもついてこれません。
そこで、1時間の授業の中に10分程度の内容を4つ程度取り入れたり、45分の時間を3分割して15分間の3つの内容を取り入れたり、1時間の間に2つの教科を取り入れたりしようというのが基本的な考えです。
また、生活科のような外で活動する教科では、ゆったり2時間分時間を取るなどの柔軟な指導の仕方をすることもよしとしています。
例えば、冊子の中では、4月の初めに、次のようなカリキュラムを組んだ学校の紹介をしています。
1時間め:「手遊び/お話読んで/お話聞いて/歌って踊ろう」
2時間め「国語:あいうえおであそぼう/算数:かずをくらべよう」
3・4時間め「生活科:はるのがっこうこんにちは」(2時間扱い)
子どものペースに合わせて柔軟な授業の進め方をすることが、スタートカリキュラムでは大切です。
② 「子どもの実態を把握する」
「スタートカリキュラム導入・実践の手引き」という冊子の中では、「スタートカリキュラムをデザインする基本的な考え」の一つとして、次のように書いています。
一人一人の児童の成長の姿からデザインしよう
入学時の児童の発達や成長には個人差があり、それぞれの経験や幼児期の教育を考慮したきめ細かい指導が求められる。そのため、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を踏まえるなどして、幼児の発達や学びの様子を理解した上で、カリキュラムをデザインすることが重要である。
スタートカリキュラム導入・実践の手引き
ここに書かれているように、子どもの実態を把握することもとても重要なことです。
この冊子に書かれていることではありませんですが、フィンランドでは、同じように1年生を学校生活にスムーズに適応させるために「スムーズ・スタートという方法」を取り入れている学校があります。
教育書紹介:フィンランドの教育力に進む(内部リンク)
子どもを2分割して、数週間の間、子どもの登校を、午前と午後に分けます。子どもの人数を半分にした上で、教員は、子どもが「何を知っているか、何を知らないのかをできるだけ詳しく知る機会を作ります。」(「フィンランドの教育力」より引用)
例えば、日本の小学校では、最初に簡単な「つ」「く」「し」のような簡単な平仮名から教えます。一画で書ける平仮名から教えることが普通です。
でも、教える前に、子どもがどの程度、平仮名や片仮名の読みや書きができるのか、簡単に調査してみてもいいのかもしれません。
教員は、子どもが家庭や「幼稚園・保育所・認定こども園」である程度の平仮名の読み書きができるように、学習していることを知っていますが、さも子どもが初めて平仮名を習うような前提で学習を始めることが一般的です。
もし学級の全員が平仮名を知っているのであれば、授業の進め方は変わってくると思います。もちろん平仮名について何も知らない子どもがいるのならば、その子どもにもよくわかるような学習を計画することはとても大切です。
このような子どもが何を知っているかという、知識に関係する実態把握だけでなく、次のようなことも、子どもの実態を把握してほしいと思います。
・えんぴつの正しい持ち方ができているのか。
・配られたプリントをきちんと四隅を揃えて折ることができるのか。
・教科書にきちんと折りめをつけることができているか。
・朝、きちんと提出物を出すことができるのか。
・トイレの正しい使い方は知っているのか。
例えば、最近の子どもの中には、家庭のトイレが用を足した後、自動で水が流れるために、水を流すということを知らない子どももいます。そのような子どもの家庭や「幼稚園・保育所・認定こども園」などでの経験などについても知る努力をする必要があると思います。
その上で、子どもがスムーズに学校生活になじめるようなスタートカリキュラムを作る必要があると思います。
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