動物たちが教えてくれる海の中のくらし 教材分析047

教材分析
つばさ
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動物たちが教えてくれる海の中のくらし」の教材分析について知りたいです。

 よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることが大切です。

 しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。

 そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。

 今回は、「動物たちが教えてくれる海の中のくらし」です。

動物たちが教えてくれる海の中のくらし:教材分析

🟠動物たちが教えてくれる海の中のくらし:教材分析

 この教材は、東京書籍の5年生の教科書に掲載されている説明文です。

<作者>

 佐藤克文(さとう・かつふみ)作

 出典:「動物たちが教えてくれる海の中のくらし 」(福音館書店・2020年)

 佐藤克文さんについて

 1967年(昭和42年)に神奈川県で生まれました。日本の動物学者、行動生態学者です。

 京都大学農学部を卒業後、京都大学大学院修士課程・博士課程を修了されました。

 京都大学研修員、日本学術振興会特別研究員などを経て、現在、東京大学教授です。

 なお、佐藤克文さんは、福音館書店で「動物たちが教えてくれる海の中のくらし 」が出版され、教科書にも掲載されたことに合わせて、YouTubeチャンネルで、5回にわたり授業をされています。

動物たちが教えてくれる海の中のくらし(その1:アザラシ)に進む外部リンク26分10秒

動物たちが教えてくれる海の中のくらし(その2:ペンギン)に進む外部リンク23分9秒

動物たちが教えてくれる海の中のくらし(その3:エンペラーペンギン)に進む外部リンク21分50

動物たちが教えてくれる海の中のくらし(その4:動物たちの泳ぐ速さ)に進む外部リンク21分28秒

動物たちが教えてくれる海の中のくらし(その5:世界最高の旅)に進む外部リンク18分46秒

<題名>

 題名は「動物たちが教えてくれる海の中のくらし」です。

 題名そのものが、この説明文に書かれている内容を伝えています。

 動物が海のくらしをどのように教えてくれるのかは興味を引く題名です。

<はじめとおわり>

はじめ

 最初に、「地球表面の多くは海でおおわれ、その平均水深は、三千八百メートルにもなる。その広くて深い海を自由気ままに泳ぎ回っている動物のくらしぶりを、人間は直接観察することができない。」と書かれています。そして、水族館や図鑑から海の動物を少し知ることはできるが、本当は少しもわかっていないと続けます。

おわり

 最後に、「これからも動物に取り付ける記録計は年々改良されて、どんどん小さくなっていくはずだ。より小型の動物まで調査の対象が広がり、予想もしなかった動物たちのくらしぶりが見えてくると、知りたいことはさらに増えていくだろう。この先、バイオロギングによって、どんなデーターがえられるようになるのだろうか。動物たちから学べることは、まだたくさん残されている。」と書かれています。

 まだまだ筆者たちの研究は続くみたいです。

説明文の教材研究(2) はじめとおわりに進む内部リンク

<形式段落>

 形式段落は、全部で10段落です。

 形式段落毎の簡単な内容は、次の通りです。

① 広く深い海の動物のくらしぶりを人間が直接観察することはできない。よくわかっていない。

② 研究者たちは海の動物に小型の記録計をつけるバイオロギングというやり方を考案した。

③ バイオロキングの研究で、動物の泳ぐ速さと体の大きさの不思議な関係に気づいた。

④ ペンギンとアザラシも調べ、大きい体の動物が速く泳ぐわけではないことがわかった。

⑤ それを確かめるために大型のマッコウクジラの研究者にたのみ、データーを取ってもらった。

⑥ マッコウクジラは千メートル以上深くもぐるが、泳ぐ速さはペンギンと同じぐらいだった。

⑦ いろいろな海の動物の泳ぐ速さをくらべると、時速四・〇から八・〇キロメートルだった。

⑧ この結果から、海の動物はできるだけえさ場に楽に移動していていることがわかった。

⑨ 動物はちょうどよい速さを選び、生息環境に合わせたくらしを工夫して進化してきた。

⑩ これからも改良した記録計によるバイオロキングの研究で、動物からさらに学べるだろう。 

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 なお、この部分については、リライト教材として、漢字に読みがなをつけたものを、姉妹ブログの「よみもの」に用意しています。

動物たちが教えてくれる海の中のくらし・要点に進む外部リンク

説明文の教材研究(4) 段落関係と要点に進む内部リンク

<意味段落>

 ここでは、5つの意味段落に分かれていると考えてみることにします。

①~②段落:序論(はじめ)

 広く深い海に住む動物のくらしぶりを人間が直接観察することはできません。そこで、研究者たちは海の動物に小型の記録計をつけるバイオロギングというやり方を考案して、動物たちに直接教えてもらうことにしました。    

③~④段落:本論1(なか1)

 バイオロキングを使って調べていく中で、動物の泳ぐ速さと体の大きさの不思議な関係に気づきました。体の大きい動物の方が速く泳ぐと思っていましたが、そうではないみたいです。いろいろなペンギンとアザラシを調べてみて、大きい体の動物が速く泳ぐわけではないことがわかりました。

⑤~⑥段落:本論2(なか2)

 そこで、大きい体の動物が速く泳ぐわけではないことを確かめるために大型のマッコウクジラの研究者に頼み、データーを取ってもらいました。マッコウクジラは千メートル以上深く潜っていましたが、、泳ぐ速さはペンギンやアザラシと同じぐらいでした。

⑦~⑧段落:本論3(なか3)

 さらに、いろいろな鳥類やほ乳類で調べてみました。重さは五百グラムから九十トンまでです。これだけ体の大きさがことなるのに、海の動物の泳ぐ速さは、時速四・〇から八・〇キロメートルの中におさまっていました。この結果から、海の動物はできるだけ、えさ場に長時間とどまるために、えさ場に楽に移動していていることがわかりました。

⑨~⑩段落:結論(おわり)

 バイオロキングで調べることで、海の動物たちは、深く長くもぐることができる一方で、意外とゆっくり泳いでいました。動物たちはちょうどよい速さを選び、生息環境に合わせたくらしを工夫していく中で進化してきました。

 これからも進化した記録計によるバイオロキングの研究で、予想しなかった動物の暮らしがわかるでしょう。動物たちから学べることはまだまだ残されているみたいです。    

<大事な言葉>

 地球表面、平均、手法、考案、データロガー、バイオロギング、時速、装置、ほ乳類、範囲、潜水、移動、消費、最小限、能力、生息環境

 なお、私が子ども用に作っている「よみもの」で、「バイオロギング」について簡単な文を書いています。よければ、お読みください。

バイオロギング Biologgingに進む外部リンク・よみもの

説明文の教材研究(5) 大事な言葉と要約に進む内部リンク

<表現の工夫>

数量化

 この説明文では、いろいろなところに具体的な数量が出てきます。海の平均水深、海の動物の体重や泳ぐ速さ、海にもぐることのできる深さなどです。

 このような具体的な数量化されたデータを根拠にすることによって、述べようとすることの確かさが強まります。その上、この説明文では、より正確な情報を得るために、データロガーという科学的な手法を使っていることも詳しく説明しています。

説明文の教材研究(9) 比喩 数量化 程度差に進む内部リンク

問いかけ

 この説明文ではいくつかの疑問文が使われています。

人間をひと飲みにできそうなほど大きなマッコウクジラの場合、いったいどれほど深くもぐり、どのくらいの速さで泳いでいるのだろう。

・(いろいろな動物の泳ぐ速さをくらべてみた。すると、これだけ体の大きさがことなるのに、泳ぐ速さは時速時速四・〇から八・〇キロメートルのせまい範囲におさまっていることがわかった。)これはいったいなぜなのか。

 このような問いかける言い方(疑説法)によって、読み手の知的好奇心が高まります。

説明文の教材研究(8) 列挙 反復 問いかけに進む内部リンク

写真と図表

 この説明文には、扉のページを含めて7枚の写真と2つの図表があります。

 写真を使うことで、動物に小型の記録計を付けていることがわかります。

 また、「動物の泳ぐ速さ」や「体の大きさと泳ぐ速さの関係」の図表があることで、筆者の述べていることがよくわかります。

 言葉で説明することに加えて、具体的的な写真や図表があることで、筆者の伝えたいことがよりよくわかるようになっています。

<要旨>

 この説明文では、「海の動物は、えさを取るために深く長くもぐる能力と、長く泳ぎ続けられるちょうどよい速さを身に付け、それぞれの生息環境に合わせるような進化を続けてきたことがバイオロギングという方法によって分かった」ということについて書かれていると思います。

<まとめにかえて>

 この教材分析は、このブログに載せている「説明文の教材研究」で取りあげたいくつかの視点に基づいて行ったものです。

 教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。

⭐️   ⭐️

 なお、説明文に関係する次の項目についても、併せて読んでください。

説明文の教材研究(1) 教材研究の視点に進む内部リンク

説明文の教材研究(3) 文章の構成に進む内部リンク

説明文の教材研究(6) 引用に進む内部リンク

説明文の教材研究(7) 表現の工夫(対比)に進む内部リンク

説明文の教材研究(10)なぜ教材研究をするのかに進む内部リンク

⭐️ ⭐️

説明文の指導の仕方(1)指導計画に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(2)2次と3次の指導に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(3)指導計画の実際に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(4)1次の指導の実際に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(5)2次の指導の実際①に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(6)2次の指導の実際②に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(7)筆者の表現の工夫に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(8)3次・調べ学習に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(9)3次・書く時の指導に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(10)に進む内部リンク

⭐️   ⭐️

 他の説明文の教材分析も併せてお読みください。

「弱いロボット」だからできること 教材分析011に進む内部リンク

イースター島にはなぜ森林がないのか 教材分析046に進む内部リンク

プロフェッショナルたち 教材分析017に進む内部リンク

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