時計の時間と心の時間 教材分析049

教材分析
つばさ
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時計の時間と心の時間」の教材分析について知りたいです。

よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることが大切です。

しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。

そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。

今回は、「時計の時間と心の時間」です。

時計の時間と心の時間:教材分析

🟠時計の時間と心の時間:教材分析

 この教材は、光村図書の6年生の教科書に掲載されている説明文です。

<作者>

 一川誠(いちかわ・まこと)作

 タラジロウ絵

 出典:この教科書のために書き下ろされたものです。

 一川誠さんについて

 1965年(昭和38年)に宮崎県で生まれ、大阪府で育ちました。日本の心理学者です。専門は、知覚心理学、時間学などです。

 大阪市立大学文学部人間関係学部を卒業後、同大学院文学研究科博士課程を修了しています。

千葉大学の教授をされています。

<題名>

 題名は「時計の時間と心の時間」です。

 題名から、時間について書いていることがわかります。

 時計の時間は分かるが、心の時間とは一体なんだろう、と子どもたちは思うかもしれません。

<はじめとおわり>

はじめ

 最初に、「私たちは毎日、当たり前のように時間と付き合いながら生活しています。みなさんも、全く時計を見ずに過ごすことはないでしょう。」と書かれています。

 さらに、時間には、「時計の時間」と「心の時間」があり、「心の時間」に目を向けることが重要だと考えると、書かれています。

おわり

 最後に、「このように考えると、生活の中で『心の時間』にも目を向けることの大切さが見えてくるのではないでしょうか。さまざまな事がらのえいきょうで、『心の時間』の進方が変わると知っていれば、それを考えに入れて計画を立てられるでしょう。また、人それぞれに『心の時間』の感覚が違うことを知っていれば、他の人といっしょに作業するときも、たがいを気づかいながら進められるかもしれません。私たちは、二つの時間と共に生活しています。そんな私たちに必要なのは、『心の時間』を頭に入れて、『時計の時間』を道具として使うという、『時間と付き合うちえなのです。」と書かれています。

 はじめとおわりから、筆者は、時間には、題名にあるように、時計の時間と心の時間の二つがあり、その付き合い方について考えを述べていることがわかります。

説明文の教材研究(2) はじめとおわりに進む内部リンク

<形式段落>

 形式段落は、全部で8段落です。

 形式段落毎の簡単な内容は、次の通りです。

① 時間には時計の時間と心の時間があり、心の時間に目を向けて、付き合うことが重要だ。

② 時計の時間はだれにも同じように進むが、心の時間はさまざまな事がらで進み方が違う。

③ していることで心の時間の進み方は変わり、夢中になるとはやく時間が進むように感じる。

④ 時間帯によっても進み方は変わり、朝夕は昼よりはやく時間が進むように感じる。

⑤ 回りの環境でも心の時間の進み方は変わり、刺激が多いと、おそく時間は進むように感じる。

⑥ 心の時間の進み方は人によっても違い、それぞれ違う感覚で時間と向き合っている。

⑦ 心の時間は心や体の状態、環境や個人によっても変わるが、共通するのは時計の時間である。

⑧ 心の時間を頭に入れ、時計の時間を道具にして、時間と付き合うちえをもつことが大切だ。

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説明文の教材研究(4) 段落関係と要点に進む内部リンク

<意味段落>

 ここでは、3つの意味段落に分かれていると考えてみることにします。

①段落:序論(はじめ)

 1段落では、時間には「時計の時間」と「心の時間」という2つの時間があることと、心の時間に目を向けて付き合うことが重要だということが書かれています。

 この序論では、話題提示と筆者の主張が書かれています。

②~⑦段落:本論(なか)

 2段落から7段落までは、「心の時間」を中心に「時計の時間」と「心の時間」について詳しく説明しています。

 2段落では、「時計の時間」と「心の時間」について説明しています。

 3段落では、していることをどう感じるかによって「心の時間」の進み方に違いがあることを説明しています。

 4段落では、時間帯によって「心の時間」の進み方には違いがあることを説明しています。

 5段落では、環境によって、「心の時間」の進み方には違いがあることを説明しています。

 6段落では、「心の時間」の進み方は、人によって違いがあることについて説明しています。

 7段落では、「心の時間」の進み方は心や体の状態、環境によっても変わってくるし、それぞれの人によっても変わってくることが再度書かれています。そして、その時、大切なのは、いつでもだれにも同じ時をきざむ「時計の時間」であることが書かれています。

⑧段落:結論(おわり)

 8段落では、「心の時間」を頭に入れ、「時計の時間」を道具にして、時間と付き合うちえをもつことが大切だ、という筆者の主張が書かれています。   

<大事な言葉>

 時計の時間、心の時間、感覚、特性、経験、夢中、集中、平均、環境、刺激、テンポ、ペース、ストレス、ちえ

 なお、私が子ども用に作っている「よみもの」で、「時間の単位」について簡単な文を書いています。よければ、お読みください。

時間の単位に進む外部リンク・よみもの

説明文の教材研究(5) 大事な言葉と要約に進む内部リンク

<表現の工夫>

問いかけ

 この説明文では、1つの問いかけ文が使われています。

みなさんは、あっという間に時間が過ぎるように感じたり、なかなか時間が時間がたたないと思ったりしたことはありませんか。

 このような問いかける言い方(疑説法)によって、読み手にいろいろなことを考えさせることができますし、さらに、読み手の知的好奇心が高まる効果があります。

説明文の教材研究(8) 列挙 反復 問いかけに進む内部リンク

対比」 

 この説明文では、「時計の時間」と「心の時間」という2つの時間のあり方を対比しながら説明しています。

 「時計の時間」は、時計が表す時間のことで、「心の時間」は、私たちが体感している時間のことです。

 「時計の時間」の進み方は、みんなに共通していますが、「心の時間」の進み方は、人それぞれの体感なので進み方も感じ方も変わってきます。

 対比する説明によって、説明することの特性が明瞭に読み手に伝わるようになっています。

説明文の教材研究(7) 表現の工夫(対比)に進む内部リンク

イラストと図表

 この説明文には、1枚のイラストと2つの実験の様子を2つの図表で示しています。

 イラストでは、日常的な生活の様子を、2つの図表では、この説明文を書くために行なった2つの実験「実験①:時間帯による時間の感じ方の変化」と「実験②:刺激の増減による時間の感じ方の変化」を付けています。

 言葉で説明することに加えて、イラストや図表を使って視覚的に表現することで、筆者の伝えたいことがよりよくわかるようになっています。

<要旨>

 この説明文では、「時間には『時計の時間』と『心の時間』があり、『心の時間』を頭に入れつつ、『時計の時間』を道具にして、時間と付き合うちえをもつことが大切だ。」というようなことが書かれています。

<まとめにかえて>

 この教材分析は、このブログに載せている「説明文の教材研究」で取りあげたいくつかの視点に基づいて行ったものです。

 教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。

⭐️   ⭐️

 なお、説明文に関係する次の項目についても、併せて読んでください。

説明文の教材研究(1) 教材研究の視点に進む内部リンク

説明文の教材研究(3) 文章の構成に進む内部リンク

説明文の教材研究(6) 引用に進む内部リンク

説明文の教材研究(9) 比喩 数量化 程度差に進む内部リンク

説明文の教材研究(10)なぜ教材研究をするのかに進む内部リンク

⭐️ ⭐️

説明文の指導の仕方(1)指導計画に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(2)2次と3次の指導に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(3)指導計画の実際に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(4)1次の指導の実際に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(5)2次の指導の実際①に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(6)2次の指導の実際②に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(7)筆者の表現の工夫に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(8)3次・調べ学習に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(9)3次・書く時の指導に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(10)に進む内部リンク

⭐️   ⭐️

 他の説明文の教材分析も併せてお読みください。

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大切な人と深くつながるために 教材分析014に進む内部リンク

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